明治大・高橋周平 チームの将来を背負う若きRB「スピードと思い切りのよさ」で勝負
関東学生アメリカンフットボール春季オープン戦
6月4日@アミノバイタルフィールド(東京)
明治大学 27-7 早稲田大学
アメリカンフットボールの関東学生TOP8に所属する明治大学と早稲田大学が、6月4日に春季オープン戦で対戦した。昨季の先発卒業と主力の離脱により苦戦を強いられている早稲田に対し、経験豊富で強力な守備フロントと、若いバックス陣が充実する明治の試合は、地上・空中戦ともに明治が早稲田を上回った。明治がランプレーで3本のタッチダウン(TD)とフィールドゴール(FG)2本を決め、早稲田の攻撃をTD1本におさえて27-7で勝った。
明治が強力な守備フロントで早稲田に勝利
前年関東覇者の早稲田は、エースQBの國元孝凱(4年、早大学院)が立教大学戦に続き欠場。立教戦を率いた八木義仁(3年、早大学院)に代わり、2年生の船橋怜(2年、早大学院)を起用した。船橋は開始1プレー目で投げたパスをインターセプトされる試練。明治はランプレーを続けてRB廣長晃太郎(3年、箕面自由学園)が先制TDを決めた。早稲田は次のシリーズでもパスをインターセプトされる。失点にはつながらなかったが、以降はランを中心に攻撃を展開。しかし敵陣で仕掛けたギャンブルを止められて勢いを作れずにいた。
明治は廣長と今季主力ローテーション入りしたRB高橋周平(2年、足立学園)が好走し、第2クオーター(Q)にTDを追加。その後もK近藤倫(3年、桐光学園)のFGに結びつけ、17-0とリードして前半を折り返した。
後半に入り、明治は近藤が38ydのFG決めて3点を追加。早稲田も明治陣に攻め込むがFGに失敗して得点を奪えない。明治はQB新楽圭冬(2年、都立戸山)がロングシチュエーションでパスを投げるが決めきれず、第4Qに入った。早稲田はRB安藤慶太郎(2年、早大学院)のランで攻撃をドライブ。ゴール前のギャンブルに失敗したが、直後の守備で明治のパスをインターセプトしてRB安村充生(4年、早稲田実)がTDラン。7点を返した。
明治も若干の手詰まり感があったが、新楽からWR山口翔(4年、箕面自由学園)へのパスとスクランブルに加え、廣長と高橋のランがかみ合った。8分すぎに高橋がこの日2本目のTDランを決め、27-7で明治が勝った。
点差では明治が早稲田を圧倒したが、内容は少し印象が異なった。早稲田は攻撃で距離を稼ぎながらも、ターンオーバーと3度のギャンブル失敗が響いて得点できずに苦しんだ。一方の明治も早稲田のミスに助けられた面があり、攻撃で押し切る内容ではなかった。一方で早稲田の攻撃を力で上回った明治の守備フロントの強力さはリーグ随一。下級生時から活躍し、最上級生になった今熊力丸(佼成学園)を中心にしたDL陣は、今季も明治らしさの象徴と言えそうだ。
視座の高さと真面目な取り組みをコーチ陣も評価
若い攻撃陣の中で目を引いたのは、2年生になったRB高橋の活躍だ。昨年までの明治のラン攻撃は、今春に卒業した森川竜偉と廣長のダブルエースが看板だった。今年は、高橋がその一翼を担う。昨年は格下チーム相手や点差が開いたあとの出場が主だったが、この春初戦の国士舘大学戦で三つのTDを決め、着実に経験を積んでいる。
小柄ながら思い切りの良い走りを見せ、臆せず守備に当たりにいく姿勢は、小泉亜斗夢(20年卒、今春東京ガスを引退)を思わせる。実際に高橋は、高校と大学の先輩にあたる小泉への憧れも、明治を志望した理由だったと明かす。
「明治の自由な雰囲気と選手主体でやってるところが良いなと思っていて、高校に入ってから憧れてました。自分の中では、ずっと明治一択でしたね。実際に入ってみて、思い描いていた通りのチームだったのでとても楽しいです」。足立学園では、3年時に主将も務め、関東大会ベスト4まで進んだ。まだ2年生だが、視座の高さと真面目な取り組みはコーチ陣からの評価も高い。今季、監督に就任した櫻井亮監督は言う。
「ここまで高橋にはKも兼任させてて無理はさせられなかったんですが、今日は近藤がけがから戻ってきたので、RBに専念させることができました。しっかり活躍してくれたと思います。足立学園出身の選手らしく真面目で、RBの小形コーチ(亮介、14年卒、元オール三菱)の指導も素直に聞きよく吸収しています。自分のやるべきこともしっかりわかっていて、廣長がポジションリーダーで頑張っている分、高橋の成長はとても頼もしいですね」
高橋が明治を志望していた一方で、明治も早くから高橋に注目していた。「間違いなくほかの大学も声を掛けてる。うちを選んで来てくれて本当に良かったです」と櫻井監督。RBとしてはもちろん、彼のリーダーシップに対する期待もとても大きいという。
先輩の廣長晃太郎と切磋琢磨、ラン攻撃を引っ張る
「早稲田はもちろん目標として意識するチームで、DBのランに対する反応は早かったです。まだまだ自分には課題がたくさんありますが、やれたこともありました」。活躍とは裏腹に、高橋は慎重に言葉を選ぶ。昨年出場した、秋の立教戦や慶應義塾大学戦では、高校と大学のプレースピードの違いに驚いたが、森川や廣長らRBの先輩から指導を受けて学んできた。廣長からは今もマメにアドバイスをもらうが、「抜かさなきゃいけない存在」と素直な負けん気を口にする。
高橋は2年になり、考え方がガラッと変わったという。「自分のことばかりじゃなく、チームのことも考えなきゃと。責任感は、1年生の頃とは全然違うなって思います」。下級生とは思えない立派な答えが返ってきた。こういう面でも高橋には、将来の明治を背負って立つ大きな資質を感じる。
「早稲田戦に向け、自分の中で『こういう走りをしよう』と事前に決めていて、思っていた通りの走りはある程度できたかなと」。去年の試合をみていて早稲田守備は上がりが早く、余りやすいと分析していた。イメージ通り、キーマンを見ながら走ることができたのは収穫だったという。
「RBとして、思い切りの良さとスピードはもっと伸ばしたい」と高橋。この部分はローテーションを組む先輩の廣長も高く評価していて、「考えすぎずにアグレッシブに走ってくれるので、信頼はあります。この春でだいぶ成長してますね」という。一方で昨年は出場が限られた分、経験値や上位校相手のアジャストをはじめ、メンタルの部分はまだまだ伸ばす必要があると話す。この春の経験を糧に、更に突き抜けられるか。高橋にかかる期待は大きい。
普段はプライベートでも仲が良いと口をそろえる二人。切磋琢磨(せっさたくま)しランプレーを支える彼らの活躍は、若い明治攻撃の浮沈を握っている。