出雲駅伝のキーマンは? 「圭汰シフト」「3本の矢」主要大学の監督たちが意気込み
今年度の学生3大駅伝開幕となる、第35回出雲駅伝(6区間、45.1km)が10月9日、出雲大社正面鳥居前をスタートに開催される。昨年は駒澤大学が優勝し、最終的には11月の全日本大学駅伝と今年1月の箱根駅伝も制する「三冠」を達成した。今年4月から藤田敦史監督がチームを率いることとなった駒澤大が連覇を果たすか。それとも他の大学が止めるのか、注目される。
レース前日の8日には記者会見が行われ、駒澤大学、中央大学、青山学院大学、國學院大學、順天堂大学、早稲田大学、米国アイビーリーグ選抜の各監督が出席。今年のチームの特徴やレースのキーマンを挙げた。
駒澤大・鈴木芽吹が2年連続アンカーにエントリー
昨年度「三冠」を達成した駒澤大。新体制となった今季は「プライドを持ちつつ、昨年のチームに挑戦する」をテーマに掲げて強化に励んできた。
藤田監督はキーマンに、今年度の主将を務める鈴木芽吹(4年、佐久長聖)の名前を挙げた。「昨年度は田澤(廉、現・トヨタ自動車)という絶対的なエースがいましたけども、今年度は鈴木が田澤にどこまで近づけるか。どこまで精神的な支柱となれるかがポイントになると思います」。学生長距離界を代表する存在がいない分、今年度はチーム力を上げることをめざし、選手層に厚みが増した。その中でも「鈴木は故障もなく、継続して練習が積めた」と藤田監督。2年連続でアンカーを任せ、「楽しみにゴールで待ちたい」と期待を膨らませた。
その鈴木は開会式で、選手宣誓を行った。「何不自由なく練習をし、仲間と一緒に過ごせる日々に、感謝の気持ちが大きく芽生えました。『勝ちたい、強くなりたい』という真っすぐな思いで重ねてきた練習の成果を十分に発揮し、学生らしいすがすがしく堂々とした走りで、出雲市から日本中へ勇気や希望、感謝の気持ちを届ける」と誓った。
中央大「学生競技者のかがみ」、湯浅仁主将に最後を託す
王者・駒澤大に対するライバル意識を隠さなかったのが、前回大会は3位だった中央大の藤原正和監督だ。「駒澤さんを非常に意識したオーダー」を組み、キーマンに挙げたのは、年始の箱根駅伝3区区間賞の中野翔太(4年、世羅)。「(駒澤の)佐藤圭汰くんがおそらく2区だろうということで、『圭汰シフト』で中野をぶつけて、何とか競り勝ちたいなというもくろみです」
追い風が予想される4区に阿部陽樹(3年、西京)、5区に溜池一太(2年、洛南)を配置し、アンカーを務める主将の湯浅仁(4年、宮崎日大)に託す。「学生スポーツは4年生のカラーが出る。今年は4年生に吉居(大和)、中野とエースがいますけど、キャプテンの湯浅は『学生競技者のかがみ』という姿勢で練習、生活ともに過ごしています。ストイックな姿勢がチーム全体に波及しています」と、藤原監督は絶対的な信頼を寄せている。
青学大はフレッシュなメンバーで挑む
青山学院大のエントリーメンバーで駅伝経験が豊富なのは、3区に入った佐藤一世(4年、八千代松陰)だけ。3大駅伝初出走の選手が多くフレッシュな布陣で臨む。原晋監督は「多少不安はありますけども、高校時代の実績やトラックシーズンの主要大会での活躍、練習消化率を見ていれば、しっかり走ってくれると期待しております。手応えは十分にあります」。
キーマンには1区でエントリーされた野村昭夢(3年、鹿児島城西)と、アンカーの鶴川正也(3年、九州学院)の名前を挙げた。特に鶴川は5月の関東インカレ男子2部5000mで日本人トップ、全体3位となった実力の持ち主。新戦力の台頭があれば、5年ぶり5度目の優勝にも手が届くかもしれない。
國學院大、あえて2年生2人をキーマンに指名
前回大会で準優勝だった國學院大の前田康弘監督は、あえて1区の上原琉翔(北山)と2区の青木瑠郁(健大高崎)の2年生2人をキーマンに指名した。「練習もできてますので、大きな大会でいろんな選手に挑んで一皮むけてもらえれば、面白い展開になるんじゃないかと思います。大きく飛躍してもらいたい」
チームの「3本柱」、主将の伊地知賢造(4年、松山)は3区、山本歩夢(3年、自由ケ丘)は4区、平林清澄(3年、美方)はアンカーにエントリー。序盤で先頭争いに食い込めれば、2019年以来となる優勝も見えてくる。「学生たちは『自分を超える』をテーマにいい夏を過ごして、駅伝シーズンを迎えています。前回大会準優勝校としてのプライドを持って臨みたいと思いますし、4年ぶりの「てっぺん」をめざして戦っていきたい」と意欲を語った。
順天堂大「新たな歴史の第一歩」
「昨年度の3大駅伝は、ほとんど同じ顔ぶれで戦ってきました。彼らが卒業して、出雲駅伝も初めて出走する者が多い。チャレンジングな気持ちで臨んでいきたい」と語ったのは順天堂大学の長門俊介監督だ。キーマンに指名したのは9月の日本インカレ男子5000mで日本人トップとなった、スーパールーキーの吉岡大翔(1年、佐久長聖)。大学駅伝デビュー戦は、1区でエントリーされた。
「強力な世代が抜けましたので、『我慢の年になるのかな』と考えていました。しかし夏を終えて、それぞれがしっかりと自覚を持って力をつけてくれましたので、『我慢の年』というネガティブな表現ではなく、これからの順天堂大学の『新たな歴史の第一歩』となるようなチームになってきたと思っています」
早稲田大、1~3区にエース級「3本の矢」
2年ぶりの出場となった早稲田大学の花田勝彦監督は、自身から見て右に並んだ5大学の監督陣を見渡し「5強を崩して3位以内に入りたい」と意気込みを語った。「先頭争いに加わって、どれだけ前を走れるか」
エントリーメンバーは、1~3区にエース格の伊藤大志(3年、佐久長聖)、山口智規(2年、学法石川)、石塚陽士(3年、早稲田実業)を並べ、後半3区間はいずれも1、2年生を起用。主将の菖蒲敦司(4年、西京)や佐藤航希(4年、宮崎日大)は補員に回った。「4年生の調子が悪かったのではなく、エントリーしたメンバーの状態がよく、こちらが迷うぐらいでした。エース級の『3本の矢』で他大学の主力級といかに戦って、どれだけ順位を前に取れるか」と理想のレース展開を語った。