陸上・駅伝

特集:第100回箱根駅伝

佐藤圭汰・黒田朝日の出走区間は? 駒澤にどう勝つ? 箱根駅伝恒例「トークバトル」

11月の全日本大学駅伝でともに区間記録を更新した駒澤大の佐藤(左)と青山学院大の黒田(撮影・佐伯航平)

第100回箱根駅伝のチームエントリーが発表された12月11日、「箱根駅伝トークバトル」が東京都内で行われた。前回大会で5位以内に入った駒澤大学、中央大学、青山学院大学、國學院大學、順天堂大学の5監督が参加。レースでの目標や出雲駅伝・全日本大学駅伝に続く「2季連続の三冠」をめざす駒澤大学に「どう勝つか」について語り合った。

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駒澤と青学が、往路・復路・総合すべてで「優勝」

トークバトルでは、毎年恒例となっている「目標順位」が各監督に尋ねられた。フリップに往路、復路、総合の3項目を書く方式で、駒澤大の藤田敦史監督と青山学院大の原晋監督はすべて「優勝」と記入した。

藤田監督は今年度のチームが「三冠」を達成した前年度のチームへの挑戦を掲げていることに触れ「前年度も往路・復路・総合優勝という形でしたので、昨年度すべて優勝しているからには同じように優勝をめざします」と語ると、コーディネーターを務めた上田誠仁・元山梨学院大学陸上競技部監督が「字は人の思いを表す。字に迷いがないですね」と背中を押した。原監督は「先頭に立ってレースをしたいという思いで書きました。先ほど上田先生が『字には心が宿る』という話をされましたが、私の場合ちょっと、ぼやけているかな(笑)」

すべて「優勝」と書き切った駒澤大の藤田監督(以下すべて撮影・井上翔太)
青山学院大の原監督も負けじと「優勝」と書いた

中央大学の藤原正和監督は往路・復路ともに「1~2位」とした上で総合優勝を狙うと明言。「往路はおそらくプラスの1分かマイナスの1分で終わるんじゃないか。上ぶれした場合は1位で戦っていきたいし、復路が2位でも総合で勝っていきたいという思いがあります。今年は絶対にもつれると思っています」。司会者から「もつれさせる自信は?」と問われると、「現時点では、あります」と力強く答えた。

國學院大の前田康弘監督は「盛り下がっちゃったかな」と控えめに、3項目とも「3位以内」と記入。「以内、というのがポイントです。國學院大學の過去最高は総合3位。それを超えたいというのもありますし、今大会を足がかりに来季、その次に『もっと上を』という部分もあります。上位3校をかき乱して、私どもが頂点に立つという気持ちも選手とともに持ってます」。混戦が予想される往路を終えた時点での順位とタイム差が、総合順位を決めると踏んだ。

順天堂大学の長門俊介監督は、掲げる前に「すみません、盛り下げます」と会場の笑いを誘った。書き込んだのは往路「7~8位」、復路が空欄で総合は「5位」。「まず往路で出遅れないぐらいの布陣は組めると思う。そこで勝ちきるというより、総合5位を目標にしているので、そこに届くところで収まりたい。復路は『何位』というより5位に届くような走りをしていきたい」。復路の順大と言われる通り、往路で食らいつき、復路で順位を上げたいと意気込む。

もつれさせる自信が「現時点では、ある」と語った中央大の藤原監督

黒田朝日は2区? 佐藤圭汰は3区?

各大学のエントリーメンバーを表示しながら行われた「トークバトル」では、監督同士の掛け合いも見られた。青山学院大のメンバーが映し出されると、上田氏が出雲で2区区間賞、全日本で2区区間新記録を出した黒田朝日(2年、玉野光南)の名前の隣に二重丸を記入。原監督は「駅伝男ですね。きちっと(前との)距離感を保ちながら、いざというときに追いかけていく。駅伝走りができるランナーですね」と評価した。

上田氏が「山登りで使ったらすごく強いんじゃないかなと思っています」と5区での起用を希望すると、「箱根駅伝は5区も大切ですけど、彼は世界でも戦ってほしい。黒田は3000m障害が得意な選手ですが、それで終わってほしくないし、箱根の山登りだけで終わってほしくない」と原監督。12月10日に元・順天堂大の塩尻和也(現・富士通)が男子10000mの日本記録を更新(27分09秒80)したことにも触れ、「往路のいい区間で走ってほしいですね」と話した。これには長門監督が反応。「塩尻は4年連続で2区を走ってきたので、黒田君がそこをめざすというのであれば、間違いなく2区じゃないですかね」

青学大の黒田は「2区じゃないですかね」と予想した順天堂大の長門監督

「他大学で気になる選手」というテーマでは、前田監督が駒澤大の佐藤圭汰(2年、洛南)の名前を挙げ、大学の先輩にあたる藤田監督に「3区ですか?」と直撃。藤田監督は「(大八木弘明)総監督に聞いていただければ」とけむに巻いた。「出雲・全日本を見ていると佐藤君がチェンジャーなんですね。そこで逃げるのが駒澤大学の一つの形で、私は3区ではないかと。ちょっと(藤田監督が)目をそらしましたね」と前田監督が言えば、藤田監督は「前回は3区で準備してましたので、今年はどうなるかというところですね」と応じた。

藤田敦史監督「我々に弱みがあるとすれば……」

「駒澤にどうやって勝つ?」というストレートなテーマも設定され、藤田監督を除く4人が「要因」と「対策」を答えた。

藤原監督は駒澤大の強さの要因に「佐藤選手」と書き、対策は「箱根の距離」。「20kmの区間が10区間あって、そのうち一つを佐藤君が走る。残りの山も含めた180km以上の距離をいかに戦うかで対策するしかない」。原監督は「(駒澤大は)27分台のランナーが3名で、すべてのランナーが区間上位で走れている。山もばっちり当たっているので、隙がないですね」とため息まじり。「30秒以内で常にプレッシャーをかけながらレースを進めていきたい。ポジティブ思考で言えば、前でレースをしていくのが優勝するための条件かなと思います」

前田監督は強さの要因に「エース力」、対策は「追う心理」と書いた。「学生トップではなく、日本のトップを育成できているのが、駒澤大学の強さのど真ん中にある。それに勝つには、心理戦に持っていかないといけないと思います。非常にレベルが高い選手がそろっていますので、心理から崩壊させる方向に誘導しないと、なかなか糸口は見当たらない」。長門監督は「核となる選手の男さ」を要因に挙げ、対策は「混戦」。「駅伝に対しての男っぷりが駒澤の選手たちには根付いている」と話した。

駒澤大に勝つには「心理戦に持っていかないと」と語った國學院大の前田監督

駒澤大は今年の出雲・全日本と1度も先頭を譲らずに完全優勝を果たした。他大学の対策を見た藤田監督は「出雲も全日本も、相手の背中を見ていないので、我々に弱みがあるとすれば、『後手に回った場合に少し慌ててしまう』というところが出てくるのではないか。他チームは『駒澤にいかに背中を見せるか』をポイントにしてくる。そういった意味でも、往路はかなり混戦になるのではないか。いろんなことを想定しながら、選手を信じて送り出したい」。

強すぎる駒澤大の前を行くチームは現れるか。第100回の節目を迎えるレースは、1月2日にスタートする。

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