陸上・駅伝

特集:第100回箱根駅伝

箱根駅伝「てっぺん」狙う國學院大 「3本柱」と2年生「4人組」軸に過去最高の戦力

チームが誇る3本柱、左から伊地知(撮影・長島一浩)、山本(代表撮影)、平林(撮影・長島一浩)

冬の冷たい雨が落ちる中、國學院大學の渋谷キャンパスは熱気であふれていた。12月15日、第100回箱根駅伝の壮行会が行われ、前田康弘監督は悲願達成への意欲を改めて口にした。

「今回は5000m、10000mのタイムを見ても、過去最高の戦力がそろっています。國學院史上最高の総合3位以上を目標にする中、選手たちは『駒澤を倒す』という思いを持っているので、総合優勝をにらみながら戦略を立てていきたいです」

【特集】第100回箱根駅伝

カギとなる1、2年生の区間エントリー

言葉には力がこもる。2季連続の学生3大駅伝「三冠」達成に王手をかける駒澤大は、最も意識するライバル。前田監督にとっては母校であり、越えそうで越えられない「高い壁」である。絶対王者の力を認めつつも、箱根ではやすやすと負けるつもりはない。

「先手を取らないといけない。往路と復路の割合は5:5ではないです。箱根は後手に回ってしまうと、簡単に順位を上げられない。往路のオーダーはすごく大事になります。1区から出し惜しみしてしまうと、駒澤を逃してしまう。ぎりぎりまで見極めて、区間配置は決めたいです。ここからのコンディション調整が大事になってきます」

1、2年生が計10人エントリーされており、下級生たちの区間配置は一つのカギとなる。2年生の上原琉翔、嘉数純平(ともに北山)、青木瑠郁(健大高崎)、高山豪起(高川学園)の4人組は、全日本大学駅伝でいずれも区間5位以内と好走しており、前田監督も注目選手に挙げていた。

全日本大学駅伝で区間3位と好走した上原(撮影・吉田耕一郎)

伊地知賢造主将「前田さんを胴上げしたい」

ただ、駅伝の流れをつくるのは、重要区間での起用が予想される「3本柱」だ。全日本大学駅伝の最終8区で区間2位と力走した主将の伊地知賢造(4年、松山)は、自身4度目の箱根路に向け、いずれの区間でも勝負する準備を進めているという。コンディションは過去最高。上り、下りの対応、ラスト勝負、単独走など、あらゆるパターンを想定し、練習を積んでいる。

「どの区間であっても、区間賞は欲しいです。箱根ではまだ取ったことがないので、最後は取りたい。ただ、一番は手にしたいのは総合優勝です。何よりも優先するのは、任された区間で順位を上げること」

打倒、駒澤大への思いは強い。前年度の出雲駅伝から藤色のジャージーを着た選手たちが歓喜し、監督を胴上げする場面を何度も見てきた。思い返すだけで、悔しさが湧き上がってくる。

「負けっぱなしですからね。最後の最後は勝ちたい。駒澤を倒さないと優勝はないと思っています。箱根では、前田さんを胴上げしたいです」

壮行会ではマイクを握り、キッパリと言った。

「箱根では『てっぺん』を取って、有終の美を飾りたい」

あえてスローガンに掲げた言葉を繰り返し使うことでチームの士気が高まり、思いが強くなっていくという。「今季は100回以上、言ってきたかもしれません」

前田監督(前方中央)は母校の駒澤大に対抗意識を燃やす(撮影・杉園昌之)

副将の山本歩夢「すべてをぶつけるだけ」

3本柱の一角を担う副将の山本歩夢(3年、自由ケ丘)も箱根での頂点を視野に入れ、自らの果たすべき役割を全うしようとしている。98回大会から2年連続で区間5位の好成績を残す3区を志願し、走るイメージを膨らませていた。

「3大駅伝で一度も取っていない区間賞を取って、チームに貢献したいです。攻めながらも冷静な走りができれば、絶対に手にできると思っています」

今季、出雲は4区で区間6位、全日本は2区で区間11位。故障の影響で思うように走れなかったが、全日本の後は調子を取り戻している。コンスタントに練習を積んでおり、すでに痛みもなく、不安要素はない。故障したことでフォームの改善にも取り組み、足の接地面から見直した。一緒にジョグをこなす同期の平林清澄(3年、美方)にも後ろからチェックしてもらい、微調整してきたという。

「ようやく走り方も良くなってきました。あとは箱根駅伝ですべてをぶつけるだけです」

壮行会には現役國學院生の歌手・相川七瀬さんが登場し、エールを送った(撮影・杉園昌之)

全日本7区区間賞の平林清澄「何も成し遂げていない」

山本と切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長し、今夏からエースの自覚が芽生えた平林も闘志を燃やしている。伊勢路の7区で自身初の区間賞を獲得したが、もどかしさも覚えた。先頭を走る駒澤大の背中がまったく見えず、チームとしては完敗。目標にしていた表彰台に上がっても、心は晴れなかった。

「出雲で4位、全日本で3位になりましたが、誰も満足していない。僕らはまだ何も成し遂げていません。『てっぺん』を取るために貢献したい」

前回同様、箱根路では2区の起用が予想されており、本人も準備を整えているようだ。コースのポイントとして挙げるのは、15km手前の権太坂、残り3kmから迎える「戸塚の壁」。難所と言われるラストの上りについては、前向きにとらえていた。

「僕はラストスパートがないので、最後に坂がある方がいいかな」

前回大会の2区では駒澤大の田澤廉(現・トヨタ自動車)、青山学院大学の近藤幸太郎(現・SGホールディングス)、中央大学の吉居大和(現・4年)に歯が立たなかったものの、今季は相手が誰であっても勝ちにいくという。

「他大学のエースと戦うことが、チーム目標の達成につながると思っています。打倒、駒澤に燃えています。僕が勝てないと、優勝には近づけないので。自分の区間で駒澤に勝ちたい」

高みを目指すだけではない。3本柱で勝負をかけ、本気で「てっぺん」を狙いにいく。

箱根駅伝では総合優勝を見据えつつ、戦略を立てる(撮影・杉園昌之)

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