駒澤大・佐藤圭汰は箱根駅伝1区を希望 自信を持って前人未到の「2年連続三冠」へ
箱根駅伝を前に、12月15日に駒澤大学の合同会見がオンラインで行われ、エントリーメンバーの選手たちと藤田敦史監督、大八木弘明総監督が意気込みを語った。
藤田敦史監督「4年生にいい思いをして卒業してもらいたい」
昨年度に大学史上初の学生駅伝三冠を達成し、今年度は「2年連続三冠」を目標に始動したチーム。10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝と隙のない戦いを披露し、圧倒的な強さと速さで二冠を勝ち取った。
藤田監督はまず「100回大会に臨むにあたり、昨年度三冠を達成し、今年度も2年連続の三冠を達成するべく、ここまでさまざまな準備をしてきました。その中で出雲、全日本と非常にいい形で勝つことができました。この100回の箱根駅伝に向けても、出雲・全日本がそうだったように、また1つ、箱根を全力で取りにいきたい気持ちに変わりはありません。なんとか勝ち切って2年連続の三冠を達成したいと思います」と力強く意気込みを語った。全日本大学駅伝の前も「三冠ではなく、1つずつ勝っていく」ことを強調していたが、あらためてその意識を強く感じさせる言葉だった。
昨年は箱根駅伝の直前になって体調不良者が複数名出てしまい、走るべき選手がスタートラインに立つことができなかったという反省がある。選手の体調管理や故障の予防については、去年にも増して気をつけてきた。選手の表情やしぐさ、普段の生活に関してもよく観察し、ちょっとした変化も見逃さないように気をつけてここまでやってきたのだという。
「4年生に本当に最後にいい思いをして卒業してほしいなという思いがあるので、私にできることを引き続き一生懸命やっていこうと思います」と選手たちと細やかにコミュニケーションを取る藤田監督らしい言葉もあった。
箱根初出走の佐藤圭汰「1区を走りたい」
前回の箱根を走ったメンバーが6人残っている今回のエントリー16人の中で、特に注目されるのが主将の鈴木芽吹(4年、佐久長聖)、篠原倖太朗(3年、富里)、佐藤圭汰(2年、洛南)の3人のエースだ。3人は大八木総監督とOBの田澤廉(現・トヨタ自動車)とともに「Sチーム」で世界を目指すレベルの高い練習に取り組んでいる。
鈴木は前回4区を走り区間3位。篠原は3区区間2位で、ともに優勝に貢献した。鈴木は「2区か4区を走りたい」、篠原は「希望区間は特にないので、与えられた役割をまっとうして自分の走りで2年連続三冠に近づけるよう頑張りたい」とそれぞれ話した。
一方、佐藤は前回大会は直前に体調不良となり欠場。今回が満を持しての箱根駅伝初出走となる。今年は駅伝シーズンの直前、10月4日に中国・杭州でのアジア大会5000mに出場して6位入賞。そこから中4日となる9日に出雲駅伝で2区を走り、区間賞を獲得。全日本大学駅伝でも2区を走り区間新記録で区間賞を獲得し、いずれも他大学を突き放すゲームチェンジャーの役割を果たした。
さらに11月25日の八王子ロングディスタンスでは、初の10000mながら従来のU20日本記録を30秒近く更新する27分28秒50をマーク。日本歴代5位(当時)の超好記録をたたき出した。その時には箱根で走りたい区間を問われると「特にないです」と答えていたが、今回「1区を走りたい」とはっきりと口にした。
佐藤が目指すのは98回大会で中央大学の吉居大和(4年、仙台育英)が樹立した1時間0分40秒の区間記録の更新。「5km14分00秒のペースでいきたいと思っているので、(区間記録に)少しでも近づきたいなとは思っています」とすでにレースプランも頭の中にあるようだ。
八王子ロングディスタンスの後は多少疲労感があったものの、自らの出したタイムが自信となりモチベーション高く練習に臨めているという。20kmという長い距離に対する不安も「ないということはないですが、去年よりは自信を持っています」と話す。12月の上旬の選抜合宿での距離走で余裕を持って終われたこと、スタミナがしっかりついてきていると自分でも感じられていることが自信のもととなっている。
明るくまとまったチームになった
大八木総監督も佐藤について問われると「本人が言ったとおり、区間新記録を狙っていきたいという思いはあると思います」と話す。5km14分ちょうどは難しいかもしれないが、14分10秒ほどで通して最後まで行ければいいのではという。
今年、大八木総監督は佐藤をスイス・サンモリッツの合宿に連れていき、世界を目指して取り組む海外のクラブチームの練習を肌で感じさせた。「そういう機会によって、本人の意識が高くなって、向上心が芽生えてきています。ものすごく力のある選手になってきています」と評価する。出雲、全日本では佐藤が抜け出し独走、その後駒澤に追いつけるチームはいなかった。もし今回1区で佐藤が爆走を見せ、後続との差を広げれば、その後トップを走り続けて完全優勝もありえるのでは……と思わせる強さが今の駒澤大学にはある。
「昨年も強いチームでしたが、今年は『去年を越えよう』と明るくまとまったチームになったと思います。一人ひとりが自覚を持って取り組んでいることで、リラックスした雰囲気にも見えます。自信を持ったチームに変わりつつありますね」と大八木総監督は言う。
不安要素としては出雲、全日本と他校の背中を見ていないこと。「後手に回った場合に精神的にどうかというところもありますが、たくましい選手たちを信じています」と藤田監督。はたして盤石に見える駒澤をおびやかすチームは出てくるのか、それともこのまま大学駅伝史上初の2年連続三冠を達成するのか。決戦の時は刻一刻と迫っている。