陸上・駅伝

特集:第100回箱根駅伝

創立150周年の強化生で挑む立教大学 箱根駅伝メンバー、出走区間は自分たちで決定

箱根駅伝予選会で好走した関口(100番)と馬場(110番、撮影・藤井みさ)

創立150周年という記念の年に、立教大学は箱根駅伝予選会を6位で通過し、第100回箱根駅伝本戦への出場を決めた。この年の箱根に照準を合わせて大学として強化を進めてきた選手たちが、1962年の第38回大会以来62年ぶりのシード権獲得を狙う。12月17日に新座キャンパスで合同取材が行われ、原田昭夫総監督と宮澤徹主将(4年、國學院久我山)、そしてエントリーされた16人の選手が箱根に向けた意気込みを語った。

【特集】第100回箱根駅伝

記者会見の冒頭に述べられた「感謝」

箱根予選会の直前、それまでチームを率いてきた上野裕一郎前監督が不祥事で解任される、という大波乱があった。部内に走った衝撃は相当なものだったはず。尋常ではないショックを背負いながらも、予選会で選手たちは鍛え抜いた力を存分に発揮するタフさをみせた。

関口絢太(4年、國學院久我山)はハーフマラソン立教大学記録を更新する1時間2分15秒のタイムで日本人4番手、全体14位でフィニッシュ。続く9選手も次々と好記録でゴールし、2年連続29度目の本戦出場を決めた。

記者会見冒頭に「予選会ではたくさんの応援の言葉をかけていただき、選手たちにとっても私にとっても大きな励ましとなりました。温かいお言葉を、ありがとうございます」と述べた原田昭夫総監督。急きょ任せられた代理監督として、波乱を乗り越えられた安堵(あんど)感もにじんだ。

箱根駅伝予選会は監督不在の中で戦い抜いた(撮影・小川誠志)

2024年、立教大学は創立150周年という記念の年を迎える。その節目に第100回大会となる箱根駅伝出場を目指し、陸上競技部長距離チームの強化が2018年11月にスタートした。現4年生は強化事業の1期生になる。目標は1年早く達成され、昨秋の予選会を突破して第99回大会への出場を決めた。

ただ、1968年以来55年ぶりの出場となった前回は、10人全員が区間2桁順位、往路20位、復路16位の総合18位と、箱根駅伝の厳しさを思い知らされる大会になった。そして選手たちは第100回の今シーズンに向け、「シード権獲得」という次のステップを目標に掲げた。

前回1~4区を走った4人が今回も主軸に

前回のメンバーは当時、全員が3年生以下。「箱根を経験したメンバーが全員残った形なので、チーム力は上がっている」と、エースの関口も自信をみせる。新たに台頭した選手も加え、選手層も厚みを増している。10000mの上位10人の平均タイムは28分台。予選会では上位10人中9人がハーフマラソンの自己ベストをマークした。予選会後は監督不在の中、前年の練習メニューを参考にし、林英明コーチが選手たちの意見を取り入れながら作成した練習メニューに取り組んできた。

前回、1区~4区を走った林虎大朗(3年、大牟田)、國安広人(2年、須磨学園)、関口、馬場賢人(2年、大牟田)の4人がチームの軸として今回も1~4区を担うとみられる。前回3区を走った関口は「チームに貢献できるならどこの区間でも」と前置きしながら「希望は1区。自分の持ち味はラストスパートのキレ。それが一番生かせる区間を走りたい」と意気込む。前回“花の2区”を経験した國安は、今回も2区を走るつもりで準備しており「目標は67分台。最低でも1桁順位で走りたい」と言葉に力を込める。

前回の箱根路1区の林。今回も主要区間を担うとみられる(撮影・井上翔太)
前回の箱根で2区を走り、今回雪辱に燃える國安(撮影・井上翔太)

前回、5区、6区を経験した相澤拓摩(2年、専大松戸)、内田賢利(4年、駒大高)が故障などの影響で今季は本来の力を発揮できず、エントリーメンバーから外れた。上りの5区には岸本健太郎(4年、須磨学園)、下りの6区には中西洸貴(3年、國學院久我山)、安藤圭佑(3年、豊川)らが名乗りをあげている。

話し合いから外れた「ボーダーライン上の選手」

エントリー16人のメンバーは学生主導で決めることになった。当初は主将の宮澤を中心に、今季のレース結果やポイント練習での結果などから総合的に判断して決めようとした。しかし、簡単にはいかなかったという。

10~12人目まではすんなり決まったが、問題は当落線上にいる選手。誰を入れるのか、誰を外すのか。宮澤はこう振り返る。

「当然、みんな『走りたい、自分が入りたい』と思うわけですから、全員で話し合っていては決まらないんです。だから、ボーダーライン上の選手は選考の話し合いに入らないと決めました。前回の箱根を走って、今季最後まで結果を出し続けた8人を中心に話し合ってもらって16人が決まりました」

宮澤自身も「ボーダーライン上の選手」だったため、話し合いからは外れた。結果、エントリー16人の中に、宮澤の名前はなかった。

「全員が100%納得する選考というのはできないと思うんです。僕自身、葛藤もありましたし、最後の最後、メンバーに入れなくて今でも悔しい気持ちはあります。でも、それがチームの下した決断ですし、主力の選手たちのことを信頼していますから。これがベストの16人です」

記者会見で意気込みを語る主将の宮澤(後方左、撮影・小川誠志)

難しい挑戦「一歩踏み出せる声かけを」

1月2日、3日に誰がどの区間を走るのか。学生たちはこれから最も難しい決断をしていかなければならない。

10月の予選会は4位の日本体育大学から10位の東海大学まで、合計タイムが1分半の間に7校がひしめく接戦だった。23校が出場する今回の箱根駅伝、シード権を巡る争いは激戦必至と見てよいだろう。

「困難があった中、難しい挑戦になると思うけれど、立教らしい積極的な走りでシード権獲得へ向けて、最後までチーム一丸となって頑張っていきたいです。自分は競技者係として、全区間の中継所へ行くことになるので、選手に一歩を踏み出せるような声かけをしていきたい」

厳しい戦い、難しいチャレンジを前に、宮澤はそう言って前を向いた。

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