同好会から駆け上がった初の箱根路 被災の故郷に「少しでも元気を」
(3日 第100回箱根駅伝復路)
特別な思いを胸に、箱根路へ駆けだした。
復路を3位でスタートした城西大の久保出雄太(3年)は石川県加賀市の出身だ。
「地元が今、地震で大変になっている。少しでも元気が出るような走りをしたい」
地元は1日に起きた能登半島地震で震度5強を観測した。家族は応援のために関東へ来ていて無事。
現地にいる友人の安否が心配だった。
レース前に届いた連絡で安心するとともに、励まされた。
「『地元が大変』とかじゃなくて、『頑張れよ』って。やっぱり地元は温かいなと思って走ることができました」
久保出は自分のことを、こう言う。
「はい上がった選手。雑草魂です」
小松大谷高校ではサッカー部にいた。
陸上部の顧問に足の速さをかわれ、2年時に陸上部へ移った。
幼いころから箱根駅伝で見ていた城西大の赤のユニホームにあこがれていた。
3年になり、指定校推薦で城西大への入学が決まった。
だが、陸上部には入れなかった。
高校時代に目立つ実績がなかったからだ。
陸上の同好会に入り、足に磨きをかけた。
1年の秋には5000メートルのタイムが高校時代から30秒ほど速くなっていた。
陸上部の櫛部静二監督に言われた。
「良い走りをしている」
陸上部への入部が認められた。
練習で意識するのは「とにかく食らいつくこと」。
同好会時代は、陸上部に入るための基準タイムをめざして走った。
陸上部に入ってからは、箱根のメンバーに入るために主力選手たちの背中を追いかけた。
2023年の夏、櫛部監督から告げられた。
「下りを任せるつもり」
箱根の6区での起用が決まった。
沿道には、部活だけでなく、同好会でともに活動してきたメンバーも応援にかけつけてくれた。
「僕は応援が2倍でした」
区間順位は13番。
ゴールすると、倒れ込むようにして仲間に迎えられた。力は全て出し切った。
ゴール後にスマートフォンを確認すると、200件以上の連絡が来ていた。
「来年は区間賞を取って、石川県を盛り上げたい。そして、箱根を走らせてくれた監督に恩返しをできるよう頑張りたいです」
(加藤秀彬)=朝日新聞デジタル2024年01月03日掲載