4月から青山学院大学に進む須磨学園高・折田壮太「佐藤圭汰さんのような強い選手に」
第39回 U20⽇本陸上競技選⼿権⼤会クロスカントリー競走 U20男子8km
2月25日@海の中道海浜公園(福岡)
優勝 濱口大和(佐久長聖高校2年)23分35秒
2位 井上朋哉(洛南高校2年) 23分37秒
3位 佐々木哲(佐久長聖高校2年) 23分52秒
4位 折田壮太(須磨学園高校3年) 23分54秒
5位 七枝直(関大北陽高校3年) 23分54秒
6位 松井海斗(埼玉栄高校3年) 23分58秒
7位 菅谷希弥(駒澤大学高校3年) 24分01秒
8位 宮崎優(東洋大牛久高校3年) 24分04秒
5000m高校歴代2位の記録を持つ須磨学園高校(兵庫)の折田壮太は、2月25日に開催されたU20日本選手権クロスカントリー男子8kmに出場し4位だった。勝ちきれなかった悔しさをあらわにし、新たなステージでの成長を誓った。
優勝を目指すも離され4位「悔しい」
この試合が須磨学園のユニホームを着て臨む最後のレースとなった折田。陸上部顧問の山口哲先生と「インターハイ、国体、都大路、都道府県、福岡クロカンの5冠を目標にしよう」とこの1年間取り組んできて迎えた大会だった。
レースは1周2kmのコースを4周する。折田はスタートすると序盤から前方に位置を取り、2周目では1人飛び出した青木丈侑(東農大二高3年)の後ろの大集団の先頭を引っ張るかたちになった。3周目では積極的に先頭に立ち逃げ切りを試みるがうまくいかず、逆にラスト1周になったところの坂で濱口大和、佐々木哲(ともに佐久長聖高2年)、井上朋哉(洛南高2年)の3人に置いていかれてしまう。濱口、井上が最後までトップ争いを演じ、濱口が優勝。折田はトップから19秒遅れての4位でゴールした。
3周目の途中で仕掛け、そこで一気に突き放すつもりだったとレースプランを語った折田。だが前週に左の足首を痛めてしまい、4〜5日走れなかった影響もあったのか、思うようにペースを上げられず勝負を決めきれなかった。
「調子としては問題なかったですし、自分としても負ける気はなかったです。でもやっぱり実力不足だと実感しましたし、それ以上に2年生の3人が本当に強かったなと思います。自分も本当に負けてられないと思いましたし、本当に悔しいんですけど、いや、やっぱりそうですね……悔しいです」。何度も「悔しい」と口にした。
インターハイ男子5000m、国体少年男子A5000mでは優勝、都大路ではエースの集まる1区で日本人最高タイのタイムで区間賞。だが都道府県駅伝では1区区間5位とライバルの後塵(こうじん)を拝し、そして今回は2年生に勝てなかった。「最後に先生に優勝をプレゼントできたらと思ってたんですが、それができなくて本当に悔しいです」。とはいえこの結果でU20世界クロカンの代表に選ばれることが濃厚となり、世界への挑戦権を得た。
誰にも負けないようなレースができるようにしたい
折田は2年時には腰の疲労骨折、気管支の病気での入院、さらに貧血に悩まされ、ほとんど走れなかった。その経験からしっかりと「速く走るため、強くなるためには何が必要なのか」を普段の生活から意識するようになったと話す。食生活の見直し、規則正しい生活をして睡眠時間をしっかりとることなどを心がけたことが、高校ラストイヤーでの飛躍につながった。インターハイ優勝や、9月の日体大記録会5000mで13分28秒78の高校歴代2位のタイムを出したことなどで、一躍注目度が高まったのを本人も感じている。
「今日も『折田頑張れ』って声をかけたりしていただいていたので、本当に力になります。でもこうやって負けているので、全然自分が一番だとは思ってないですし、実際一番ではないです。なのでまた誰にも負けないようなレースができるようにしたいです。今度(3月30日)世界クロカンがあるので、世界の選手たちに挑める舞台で自分もチャレンジャーとして練習に取り組んで、そこでいい結果が残せるように頑張りたいなと思っています」
4月からは青山学院大学に進むことが決まっている。大学を選んだ決め手を聞いてみると、「駅伝も強いですし、単純にあこがれていて、あのユニホームが着たいなと思ったからです」と答えてくれた。箱根駅伝で圧勝し、存在感を改めて示した青山学院。気になる先輩は? とたずねると太田蒼生や黒田朝日の名前をあげ、「本当に強い選手がいるので、1年目はすごい方々にちょっとでも近づけるようにチャレンジしていきたいですし、その中で自分も成長できたらいいなって思います」とこの先について語った。
入寮は3月7日とまもなく。大学に入ったらまずは6月の日本選手権5000mに照準を合わせて取り組んでいくつもりだ。5000mでオリンピックを本気で狙う大人の選手たちがどのようなレースをするのかを、出場することで身近に感じて、自分の成長の糧にしたいと考えている。
あこがれは佐藤圭汰「ちょっとでも近づけるように」
折田の一番のあこがれは駒澤大学の佐藤圭汰(2年、洛南)だ。高校生には珍しくOnのスパイクを履いていたが、これは佐藤が履いているのを見て取り入れてみたそうだ。あこがれが先行したが、実際にレスポンスもかみ合い、自分に合ったスパイクだと話す。「(佐藤は)本当に雲の上の存在、あこがれの存在なので、一緒に走るのが夢ですし、ちょっとでも近づけるように、これからの練習も頑張っていきたいなと思っています」
もちろん青学のメンバーとして、箱根駅伝に出て優勝したいという思いもある。スピードと距離の両立はなかなか難しいが、折田が目標とする佐藤は今年度、それをやってのけた。出雲駅伝と全日本大学駅伝で区間賞(全日本は区間新)、11月の八王子ロングディスタンスを27分28秒50で走り10000mのU20日本記録を大幅に更新。今年に入ってからは箱根駅伝で両足をつりながらも3区区間歴代3位の1時間0分13秒(区間2位)、そして1月にはボストンの競技会で5000m13分9秒45をマークし日本室内最高記録を更新。折田も佐藤のように速さも長い距離も両立できるような強い選手になりたいと、目標を高く持っている。
では、折田の考える「強い選手」とは? 「自分の思い通りにいかなかったときでも勝てるような選手がやっぱり強いと思ってますし、どんな展開だったとしても最後に勝ち切れる、1秒でも前でゴールテープを切れるような選手が強いと思います。(自分は)タイムを持っていたんですけど勝てなかったのは、やっぱりその強さがなかったんだと思っています」
最後に悔しい思いをしたからこそ、「成長したい」思いがより強くなった折田。強い選手を目指し、レベルが上がった大学生のフィールドでどんな走りを見せてくれるのか、今から期待したい。