青学大・宇田川瞬矢は2部1500mで2位 連覇を逃した悔しさの中に「うれしさ」
第103回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部1500m
5月10日@国立競技場(東京)
優勝 青木龍翔(立教大2年)3分52秒93
2位 宇田川瞬矢(青山学院大3年)3分53秒41
3位 濱口直人(創価大4年)3分54秒04
4位 大塚直哉(立教大3年)3分54秒191
5位 松尾悠登(東京国際大2年)3分54秒194
6位 小柴裕士郎(東京国際大1年)3分54秒35
7位 尾熊迅斗(國學院大1年)3分54秒37
8位 工藤信太朗(駒澤大2年)3分54秒40
5月10日の関東インカレ2日目に行われた男子2部1500mで、昨年このレースを制した青山学院大学の宇田川瞬矢(3年、東農大三)は2位だった。惜しくも連覇を逃したが、レース後は「本当に悔しい気持ちがほとんどなんですけど、ちょっとうれしいなみたいな」。その心とは――。
ラスト1周、サングラスを外してスパート
「2番手につくということは考えてました」という言葉通り、スタート直後から宇田川は、積極的にレースを引っ張る大塚直哉(3年、豊川)の後ろについた。残り2周となったところで、東京国際大学の松尾悠登(2年、佐久長聖)も前をうかがい、ペースが上がってラスト1周へ。鐘が鳴ると、宇田川はそれまでかけていたサングラスを右手で外し、フィールドに向かって投げた。「自分は前に出られるのがすごく嫌いなので、1回前に出られたら、自分も前に行きたいという気持ちがありました」
2000年のシドニー・オリンピック女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さんの姿を思い起こさせるような動きだったが、本人は「今までサングラスをつけてあんまり走ったことがなくて……。ラストは外して走ろうかなと思いました」と特段意識していない様子だった。
先頭に立って残り400m。一気に引き離そうとしたが、バックストレートで立教大の青木龍翔(2年、大牟田)に抜かれた。最後の直線勝負となり、宇田川は「残り100mで抜けると思って、自分のことを信じて走りました」。だが、わずかに届かず2位でのゴールとなった。
モチベーションを維持できる目標ができた
大会新記録を打ち立てた年始の箱根駅伝で、宇田川は最終10区を任され、総合優勝のフィニッシュテープを切った。ただ入学してから、主戦場としてきたのは1500mだ。関東インカレにも1年目から出場し、2年前は2位、昨年は優勝。2学年上の山内健登(現・九電工)は2年前に優勝を果たし、昨年は2位。2年連続で青山学院大がワンツーフィニッシュを決めていた。
スピードに関しては今「自分が最強」だと誇りを持っている。ずっと1500mで切磋琢磨(せっさたくま)してきた先輩が卒業し、ライバルに飢えていた面もあった。だからレース後は、悔しい気持ちをにじませながらも、むしろすがすがしく「前に出られて、しかも1個下。やっとライバルができたということに関しては、うれしい気持ちもあります」と語った。「モチベーションを維持できるような目標ができたので、次は青木君に勝てるように頑張っていきたいなと思います」。これが、うれしさを感じた理由だった。
トラックシーズンは5000mのタイムにこだわり
自身は箱根駅伝の後、昨年11月から状態が思わしくなかった左ひざを完治させるため、いったん走ることをやめたという。「ずっと我慢していたんです。せっかく自分が目標にしていた箱根駅伝を任されて、走ることができるのに『けがで』というわけにはいかなかった。凡走だったんですけど(実際は区間2位)チームのために走れて良かったと思っています」。ジョグから再開し、4月末にはドイツのアディダス本社で開催される「ADIZERO: ROAD TO RECORDS」の5kmに出場。1500mに特化した調整はしてこなかった。
昨年シーズンはトラックで中距離種目に出場しながら、最終的には箱根駅伝で23kmを走った。両立の難しさについて問われた宇田川は、「本当に箱根を走らせてもらえるのかなって、最初は思っていました」と打ち明けた。ただ「監督から言われたメニューをやって、さらに各自で任されているときは、多く距離を踏んだことで、1500mを走っていても、ハーフ(マラソン)につなげていけるということが分かりました」。振り返れば、難しさは感じなかった。
今季のトラックシーズンでは5000mの記録にこだわりを見せる。原晋監督からも「もっといいタイムを出していかないと」と言われているそうで、自己ベスト(13分51秒35)を更新するだけでなく、13分30秒台を狙うという。スピードに自信がある宇田川なら、無理な目標ではないだろう。
上級生となり「山内さんはこう感じていたんだな」
秋以降の駅伝シーズンに向けては「出雲、全日本、箱根にしっかり絡めるようにしたい」と目標を語った。このうち昨シーズンに出走できたのは箱根だけで、加えて今年は折田壮太(1年、須磨学園)ら、すでに5000m13分台のタイムを持つ新入生が6人も入ってきた。
ルーキーたちの印象については「僕たちのときの1年目と、2年生たちの1年目と比べても、本当に桁外れで強い。練習も抜け目なく、試合にもうまく調整してくる。本当に油断ならないです」と語る。自身は下級生の頃、チャレンジャー精神で山内に挑んでいた。しかし上級生となった今は「山内さんはこう感じていたんだな」ということが、分かるようになってきたと言う。「先輩としての意地を見せられるように走っていきたいと思っています」
1500mのチャンピオンでも、箱根駅伝の優勝テープを切っても、次の駅伝で出走する機会が約束されているわけではない。改めて選手層の厚さを感じさせる、レース後の受け答えだった。