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特集:2024年 大学球界のドラフト候補たち

大商大・福島大輝が関西六大学リーグの最高打率を更新、打席ごとの「切り替え」が奏功

福島は関西六大学リーグで個人打率新記録を打ち立て表彰を受けた(撮影・沢井史)

関西六大学リーグの新記録となる個人打率5割7分1厘を残した強打者・大阪商業大学の福島大輝(4年、倉敷商業)は閉会式後、リーグ5連覇の表彰状を手にしても控えめだった。「たくさんの人に支えられて、サポートがあっての結果。成績で恩返しができて良かったです」。8試合に出場して21打数12安打。大商大の先輩でもある谷佳知さん(元・オリックスなど)が1993年にマークした5割6分5厘を更新した。

不安が入りまじった中でのシーズン

福島にとって今春は不安が入りまじったシーズンだった。昨秋、右太ももを痛め、シーズンオフは治療と経過を見ながらの日々が続いた。今年になってほぼ完治したとはいえ、再発の可能性が高い箇所だったため、春のオープン戦はフル出場できず、無理をしない範囲で出場していた。

いざ春季リーグ戦が始まると、大学入学後初めてという1番打者を務めることもあり、打線を引っ張った。開幕戦から快音を鳴らし、第2節の龍谷大学1回戦を除く7試合で安打をマーク。京都産業大学戦では左越え本塁打を放つなど、4月末の段階で打率は4割台後半に達した。

「1打席目がダメでも『次に頑張ろう』とすぐに切り替えができたことが良かったのかなと思います。ダメだった打席はもうあげる(返上する)というくらいの気持ちで、自分でもメリハリをつけて打席に立てていました」

打席毎に気持ちを切り替られたことが結果につながった(撮影・沢井史)

1年秋からスタメン出場し、今秋のドラフト候補と目される渡部聖弥(4年、広陵)とともにチームの中心的存在の福島。富山陽一監督からは普段の練習メニューを任され、全幅の信頼を置かれている。

「今まで、監督さんの目の前で結果を出すことが一番だと思ってやってきました。どれだけ練習しても、監督さんの前で打たないと意味がないというプレッシャーの中で結果を出せたことがうれしいです。この春は、自分で考えてやってきたことが正しかったと思える結果を残せました」と笑顔をこぼした。

刺激でしかなかった渡部聖弥の存在

同級生で、早くから頭角を現していた渡部の存在は福島にとって刺激でしかなかった。「自分は秋からですけれど渡部は1年生の春からすぐにリーグ戦に出ていて、ベストナインも取っていて……。監督さんから『渡部を超えないと(試合には出られない)』って言われてきました。渡部は自分のいい目標なんです」

大阪商業大・渡部聖弥 大学屈指の強打者を成長させる「仲間」からの刺激

倉敷商業出身の福島にとって、広陵で早くから名をはせていた渡部は、同じ中国地区の中でスターのような存在だった。高校時代は練習試合を含めて対戦することはなかったが、同じ大学に進むことになり、意識しないわけがなかった。

「自分は高校の時に4番を打っていたのですが、そこまで長打が打てるタイプではなかったんです。渡部はしっかり当たったら飛ばせるのでうらやましかったです」

倉敷高校時代の福島。この時から渡部を意識していたという(撮影・朝日新聞社)

大商大を選んだのは「先輩がいたことと、人間的に成長できると思った」から。関西の強い大学で野球をしたかったという思いもあった。厳しい環境で知られる大商大の雰囲気に、最初は戸惑うこともあったが、激しい競争の中からはい上がり、渡部と同じ位置に立てるようになった。負けたくない一心でレギュラーをつかみ続け、今ではチームの貴重なポイントゲッターとなっている。

渡部とはバッティングについてお互いの意見を交わすことも多く「渡部から聞いてくることもあるし、自分からも質問することもあります」と話す。お互いを高め合える存在であることは、最上級生になっても変わらない。「ミート力と広角に打てることは誰にも負けないと思っています。ミートポイントをしっかり決められる方で、三振をしない方だと思っています」と福島は胸を張る。言葉通り、今季は21打席に立ち、三振はわずか1個と少ない。

シーズン序盤は、渡部の調子がなかなか上がらなかった。開幕直後は安打が出ない試合もあり、チームにも暗雲が立ちこめていた。だからこそ、福島の一振りに力がこもった。

「今まで渡部には助けてもらった試合ばかりだったので、こういう時だからこそ助けられるようなバッターでいたいと思いました。そんな時こそ、自分がカバーするというくらいの気持ちでやっています。(調子が悪くても)チャンスで渡部に回そうという意識は変わらないですし、自分はそういう役割だと思っています」

チームの重い空気を払拭するようなバッティングを見せた(撮影・沢井史)

真鍋慧・中山優月ら、ルーキーの活躍も追い風に

何より、今春は新戦力の台頭も大きな刺激になっている。開幕戦からスタメンで出場しているルーキーの真鍋慧(1年、広陵)や真鍋と同じく期待が高い中山優月(1年、智弁学園)らが結果を残している。真鍋はベストナインの指名打者部門と新人賞にあたる平古場賞を受賞し、チームに新たな風を吹き込んだ。

「真鍋は体も大きいですし、見るからに打つ雰囲気があるので……。自分はそこまで体は大きくないですが、自分なりにできることというか、自分らしさを出していきたいです。これからはチームが勝つことが最優先なので、自分個人の結果というより、少しでもチームに貢献できるようにやっていきたいです」

個人の結果よりもチームとして勝つことが目標だ(撮影・沢井史)

長年破られなかった記録を更新し「すごくうれしいです」と喜びをかみ締めつつ、6月にある全日本大学野球選手権の話になると、表情が引き締まった。

「リーグ戦はとにかく『1戦必勝』という感じでやってきました。まだまだチームとしてやることはたくさんあるので、ひとつひとつを潰して全国で勝てるチームになりたいです」

春のシーズンはまだ終わっていない。全国の舞台でも持ち前のミート力を発揮し、快音を響かせる。

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