筑波大・亀岡聖成 駿台学園を春高連覇に導いたルーキー、大学でも臆せずチームへ意見
コートでの振る舞いを見ていると、亀岡聖成(せな、1年、駿台学園)は1年生らしくない。もちろん、いい意味で。
この攻撃は何としても止めてやる、と立ち並ぶ相手ブロックに当てて再度チャンスに展開するリバウンドや、指先を狙ってコート後方に飛ばすスパイクの巧みさ。守備範囲も広く、強打と軟打、どちらも涼しい顔で拾い、サーブレシーブも崩れない。落ち着いたプレーもさることながら、チームのピンチや劣勢時には両手をたたいて声をかけ、コート内を鼓舞する。
コートに立つ以上は責任がある
ルーキーであるのを忘れる、堂々とした振る舞いだ。5月18日、自らのスパイクがアウトになり、フルセットで敗れた日本大学戦後に発する言葉も的確で、悔しさばかりではなく、現状をしっかり把握できているところが印象的だった。
「まだまだチームがまとまっていないな、というのはすごく感じます。一つの声かけが足りないから、本来ならば落ちないボールが落ちてしまう、ありえないミスが多かったり、相手にリードされると下を向いてしまったりすることも多い。自分は1年生ですけど、コートに立つ以上は責任もあるし、これまで経験してきたこともあるので、生かせることは生かさないといけない。特に『声』に関しては、その時必要なことや考えをちゃんと発して伝えるようにしています」
必要性を感じた「何をするか」の確認
小学1年からバレーボールを始め、中学、高校で全国制覇。単純なバレー歴だけでなく、経験値も豊富な選手だ。幼い頃からバレーボール選手だった父に、「筑波大へ行けるような人間になれ」と言われ、「頭のどこかで、その言葉をずっと意識していた」。主将として連覇を達成した今年1月の春高を終え、卒業後はその通りに筑波大へ。バレーボールに集中できる環境と、人間性を高められる場所で「もっと強くなりたい」と望んだ。
2月から練習に参加し始めると、想像通り日々の練習は厳しかった。だが、単に「大変だ」と感じるのではなく、亀岡は別の印象を抱いた、と振り返る。
「筑波はすごく声を出すチームなんですけど、必要じゃない声も多いように思えたんです。リードされて『次一本』と声を張り上げるよりも、この場面でどうやって1点を取るか。次のプレーはどうするか。自分が自分が、とやるばかりじゃなくて、何をするか、という確認の声が必要なんじゃないかと思ったんです」
入学直後の春季リーグからスタメンで出場し続けた。昨年まで主軸だった4年生が抜け、チームとしての形も定まらず、負けが続くとそれぞれが不満をあらわにし、表情や態度にも出ていた。亀岡は「それではチームにならない」と臆することなく意見を出した。
「誰か1人が決めればいいとかではなく、チームが勝つためにどうするか。そのために必要なことはちゃんと共有しなきゃいけないと思ったので、学年関係なく『ダメなものはダメ』と言ってきました。自分自身も『まずはレシーブ』という意識がありますけど、攻撃にも力を入れているので、『プレーでも貢献しなきゃ』という意識は強いです」
劣勢でも諦めずに、打開策を見いだし、伝える。敗れた日大戦は、2セットを連取された後、3セット目も19-24まで追い込まれた。ここから交代したセッターの迫優成(1年、興国)がエースの牧大晃(3年、高松工芸)の高さを生かし、コート内でブロックやレシーブのウィークポイントを伝え、亀岡も空いた場所と効果的な攻撃を伝え続けて3セット目を26-24で奪い返した。ただ、試合には敗れ「もったいないプレーが多かったし、決められなかったのも悔しい。なかなかうまくいかないですね」と振り返った。
ハードな生活を嘆くのではなく……
朝は5時半から体育館に行き、6時からの朝練に向けて準備する。授業を終え、午後5時ごろから始まる練習を終えるのは、午後9時過ぎ。片付けや、翌日の準備をして帰宅すると、午後10時を過ぎることも珍しくない。亀岡は少しでも疲労を残さないように、食事の栄養バランスを考え、睡眠もできるだけ十分にとれるように意識している。
「毎日が規則正しいと言えば規則正しいので、そんなに苦ではないです。食事も自分でつくる時間はなかなかないですけど、コンビニで買う時もパンじゃなくておにぎりにするとか、プロテインで補充するとか、できることはできる範囲でやるようにしています」
ハードな生活を嘆くのではなく、自分を管理できるようになると考えればプラスで、何より、筑波での暮らしは快適だと笑う。
「今はほとんど大学内にいる生活ですけど、自転車でちょっと走ればショッピングモールもあるし、コストコもある。筑波、暮らしやすいですよ」
初めての春季リーグは6勝5敗の5位だった。成績には満足していないが、通用すると感じられるプレーも多くあり、もっとチームとしてまとまっていけば十分に戦えるという手応えも得た。「将来はリベロとして、日本代表でも活躍できるようになりたい」という亀岡は守備面はもちろん、攻撃でも存在感を発揮した。
「人数が少ない分、一人ひとりがやらなければいけないことがたくさんある。学年関係なく責任を持って、チームのためにやるべきことをちゃんとやっていきたいです」
高校から大学へ。ステージが変わっても、亀岡はブレずに進み続ける。