明治大ルーキー・荒井貴穂 出場機会増えても「まだまだ」、刺激にしている同級生たち
明治大学の荒井貴穂(ひで、1年、駿台学園)にとって最初の春季リーグは6位。5位の筑波大学とはセット率で差がつき、直接対決では勝った。荒井はルーキーながらアウトサイドヒッターとして11試合のほぼすべてに出場。十分に胸を張れる成績であるように思えるが、当の本人は謙遜ではなく、「まだまだ」とか「難しい」といった反省の言葉が出てきた。
大学で求められるスタイルが変化
「コンディションの持っていき方も難しいし、コンビもまだまだ合っていなくて。交代させられる場面も多いし、(代わって入る)前嶋さん(悠仁、3年、日本航空)に頼っているのが現状です。高校時代と比べて自己管理しなければならないことが多いので、ほんとに難しいです」
駿台学園高校でもアウトサイドヒッターとして活躍。選手層が厚いチームの中でも、荒井は攻守の要として欠かせない存在だった。
今年、昨年と春高バレーを連覇し、昨夏はインターハイも制覇。高校生の枠に収めるにはハイレベルすぎるほどの組織力や、その戦術を遂行する個々の技術の高さを武器としてきたが、明治大でのバレーボールキャリアはまだ始まったばかり。チームが変われば当然スタイルも異なり、求められるものも変わる。特に苦戦しているのが攻撃面だと明かす。
「サーブレシーブも求められる役割ではあると思うんですけど、それは自分の中でも大前提。そこから『どう攻撃を決められるか』というところまでやらなければならないのに、試合になるとコンビが合わない。高校時代はストレートに打つのが得意だったんですけど、今はストレート打ちがなかなかできなくて、クロスに偏ってしまうのでブロックされたり、ミスにつながったりすることも多い。試合が終わると見えるのは課題ばっかりだし、まだまだ自分はチームの中で信頼されていないので『もっと信頼される選手にならないと』と思うんですけど、今は全然できていない。やるべきことができれば、もっと(チームも)勝てていると思うので、反省しかないです」
今では「むしろやりたい」高校時代のきつい練習
攻守の安定感はあるが、崩れ出すと歯止めが利かないのも大きな課題だ。ブロックを利用したスパイクがアウトになったり、ミスにつながったりすることも多く、荒井は「もっと修正したい」と言う。
高校時代はポジションにとらわれず、さまざまなところから攻撃するのがチームとしての武器でもあった。大学でも継続して同じように攻めたい、という気持ちもあるが、まずは求められることに応えなければならない。「今まで以上に考えすぎているのかな、と自分でも感じます。なかなかうまくいかないですね」
もう一つ、荒井にとって「壁」となっているのが、すべて5セットマッチで毎週末に2試合行われるリーグ戦に耐えうるコンディションを整えられていないこと。1年の前期は授業数も多く、丸一日授業を受けた後、練習をして、寮に帰る。自炊のできる環境が整っているわけではなく、食べられる食材にも限りがある。高校時代は栄養指導を受け、食事も用意してもらえる環境だったが、大学では食生活をはじめとした日々の生活リズムも自分次第となる。
「自分が今までいかに恵まれていたかを実感しています。土日の連戦で5セットマッチなので、体の疲れもなかなか抜けない。『もっとトレーニングをして体力もつけなきゃ』と思うんですけど、今は全然追いついていなくて。『うわー、体、重いな』と感じながらプレーすることもあります」
ひたすら走り、トレーニングにも時間を割く。高校時代はその練習が「きつい」と思ってきたが、今では「むしろやりたい」と思うぐらいだと笑う。
「もう1回ちゃんと、体をつくったり、走ったりしなきゃって。(レシーブ練習で)飛ばされるのは嫌ですけどね(笑)」
中央大学戦で見せた着実な進化
同じ明治大には駿台学園の先輩も多く、同期にはともに春高を制した三宅雄大(1年)もいる。身近にいる同期の存在は心強い一方、大学で壁と直面する荒井にとって、刺激になるのはライバルとして戦う同級生たちの存在だ。
「(亀岡)聖成(せな、1年、駿台学園)もスタメンで出ているので、負けられないな、と思うし、あいつも頑張っているから自分も頑張らなきゃって。刺激になっているのは間違いないです」
できないことばかり……とうつむきがちだが、着実な進化も見せている。最終週の5月18日、春季リーグを制した中央大学との一戦では、レフトからスピードを生かした攻撃や、ブロックに当てて飛ばしたかと思えば、ブロックの後ろに落とすフェイント。荒井らしさを随所で見せた。
「少し切りすぎた」という前髪を触りながら、笑みを浮かべた。
「速さも求められていることの一つなので、ちゃんと対応できるようになりたい。ちょっとずつでも合わせていけるように、これからもっと頑張りたいです」
大学生活はまだまだ始まったばかり。成長も進化もこれからだ。