陸上・駅伝

特集:2024日本学生個人選手権大会

立命館大・山本亜美 400mの自信を胸に、日本選手権400mハードルで55秒台を

女子400mに出場した立命館大の山本亜美(すべて撮影・井上翔太)

6月14日にあった2024日本学生陸上競技個人選手権で、本来は400mハードルを専門としている立命館大学の山本亜美(4年、京都橘)が400mに出場。予選と準決勝の2本を走った。約2週間後には、400mハードルでの4連覇がかかる日本選手権(新潟・デンカビッグスワンスタジアム)を控え、万全の状態で新潟に乗り込む。

練習では出せない刺激を入れるため400mに出場

自身では「分からない」というぐらい、全国大会で400mに出場するのは久しぶりだったという山本。5レーンに入った予選は緊張している様子だった。「どんな風に走ったらいいんやろうと思って、結構突っ込んでしまって……」と最初の100mで一つ外側を走る6レーンの選手をかわす飛ばしっぷり。ラスト数十メートルは流しているようにも見えたが「めっちゃしんどくて『あー、しんど……』って思いながらゴールしました」。組トップの56秒22で準決勝に進んだ。

400mへの出場は自分でも分からないぐらい久しぶりだった

出場するからには54秒84の自己ベストを狙っていたという準決勝、山本は3組目の6レーン。隣の7レーンには高校時代の同級生で、普段から仲のいい園田学園女子大学の安達茉鈴(まりん、4年、京都橘)が入った。

安達は出場選手の中で最も速い53秒83の資格記録を持ち、5月の関西学生陸上競技対校選手権(関西インカレ)を制した。自分より速い選手が前を走ってくれることは、山本にとって願ってもない展開だった。400mに出場した理由は「練習では出せないような刺激を入れたくて、自分より速い人に引っ張ってもらって、全力全快で走りたい」と思っていたからだ。

準決勝は園田学園女子大の安達(左)に続く組2着でゴール

予選より序盤を抑え、終盤もピッチの勢いは落ちなかった。安達には及ばなかったものの、組2着の55秒14でゴール。「400mをこれから走る機会はたぶんないので、ベストを出したかったですけど、内容としては最後まで追い込めて走れたので、良かったです」。決勝は「90%ぐらいは出ないです」と言っていた通り、欠場した。

木南記念より関西インカレを優先した理由

山本は自身の長所について「ポンポンポン」と軽く浮いているような走りと表現する。ところが、シーズンが始まった頃は「『ドシドシドシ』みたいな、デブい走りやなぁと思いながら、動画を見ていました」。その背景には、昨年の故障やその影響を受けた冬季トレーニングの内容がある。

昨シーズンは慢性的なアキレス腱(けん)の痛みに悩まされ、9月にあった日本インカレ女子400mハードル決勝は欠場を余儀なくされた。シーズンオフになり、冬季は「1週間休んでから練習」を4回ほど繰り返したこともあったと振り返る。「ちゃんと練習を積めていたのかというと、自分の中では不安もありました」。冬にスピード練習をしなくなったことで、痛みは引いた。ただ、今シーズンが始まり、負荷の高い走りをしていくうちに、また再発することもあるという。

持ち前の軽い走りが戻ってきた

今シーズンはグランプリシリーズの木南記念(5月12日、大阪・ヤンマースタジアム長居)より、5月下旬の関西インカレ(たけびしスタジアム京都)を優先した。「木南を走って関西インカレを走れなくなったら……。やっぱり学生だし、(チームの)主将だし、関カレをやめるわけにはいかへんと思って、優先順位的に木南をやめました」。国内を代表するハードラーとしてだけでなく、チームを引っ張る立場としての顔ものぞかせる。

アキレス腱の状態は「走っていたら大丈夫なんですけど、アップに向かう時が痛かったり、次の日が痛かったりという感じです。でも走ったら、走れてるので、みんなからは『ほんまに痛い?』みたいに見えるんですけど、痛いんです(笑)」と語る。一方「シーズンはみんな痛いところがどこかはあるので、仕方ない」とも。今後も体と相談しながら、日本選手権まで駆け抜ける。

「仕上がってきた」と感じられただけで十分

4連覇を目指す2週間後の「本番」に向けて、やり残したことはなさそうだ。「私は気持ちで変わるタイプなんで、前日に走りが悪くても『よし行ける』と思えたら、急に足が軽くなるんです。今回の400mで『仕上がってきたな』と感じられただけで、十分かなって。あとは今、体が張っているんで、全身の疲労をしっかり落として(日本選手権を)迎えられたらと思います」

日本選手権の女子400mハードルに向けて、やり残したことはない

その先にあるパリオリンピックも、今は現実を受け入れている。400mハードルの自己ベストが56秒06の山本にとって、参加標準記録54秒85の突破は現実的ではない。出場には世界陸連のランキングでターゲットナンバー(40)に入る必要があり、日本選手権はあくまで自己ベスト更新を狙う。「パリに行けても、行けなくても日本選手権でやることは変わらないし、パリがあろうが、なかろうが『55秒台を出したい』というのが自分の目標です。パリに行けたらラッキー、行けへんかったら休んで、日本インカレに向けて頑張ります」

持ち前の軽快な走りだけでなく、最も大事な自信までをも学生個人の場で取り戻し、再び400mハードル国内トップの座を奪いにいく。

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