陸上・駅伝

特集:2024日本学生個人選手権大会

立命館大・太田咲雪が女子5000mで2位に、尊敬のまなざしを向ける村松灯に先着

学生個人女子5000mで2位に入った立命館大の太田(すべて撮影・藤井みさ)

2024日本学生陸上競技個人選手権大会 女子5000m決勝

6月15日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

優勝 サラ・ワンジル(大東文化大2年)15分42秒8
2位 太田咲雪(立命館大2年)15分47秒1
3位 村山愛美沙(東北福祉大2年)15分51秒0
4位 野田真理耶(大東文化大2年)15分51秒2
5位 石松愛朱加(名城大3年)16分04秒4
6位 村松灯(立命館大4年)16分06秒9
7位 石川苺(城西大2年)16分13秒8
8位 永長里緒(大阪学院大4年)16分16秒0
※写真判定機不具合のため手動計時

6月15日にあった2024日本学生陸上競技個人選手権の女子5000mで、立命館大学の太田咲雪(2年、立命館宇治)が15分47秒1をマークし、日本選手トップとなる2位に入った。写真判定機不具合の影響で手動計時になったとは言え、16分台だった自己ベストを大幅に更新した。

ラスト1周で切れ味鋭いスパート

レースには21選手が出場。スタート直後は今年3月の日本学生女子ハーフマラソンを制した大東文化大学の野田真理耶(2年、北九州市立)が引っ張る形となり、太田は集団の真ん中付近についた。最初の1周を73秒で入るハイペースの中、2周目で大会記録を持つ大東文化大のサラ・ワンジル(2年、帝京長岡)が先頭に。2番手には立命館大の主将を務め、5月の関西学生陸上競技対校選手権(関西インカレ)で5000mと10000mの「二冠」を果たした村松灯(4年、立命館宇治)。最初の1000mを3分08で通過した。

名城大の原田紗希(14番)や立教大の小川陽香(11番)といった力のあるランナーがそろった

15分台をめざせるペースで進み、1300mあたりから先頭集団は13人に。その集団も徐々に縦長になった。2000mにかけての1000mを3分09秒で通過すると、太田は7人に絞られた先頭集団の7番手にいた。

3000m手前で、さらに集団がばらけた。ワンジルと野田の2人が抜け出し、この1000mは3分08秒。2、30mほど離れたところに村松や東北福祉大学の村山愛美沙(2年、十日町)、城西大学の石川苺(2年、旭川龍谷)、太田と続いた。「大東の選手が前に出たときは、最初見えなくて、結構離れていっちゃうかなと思いました」と太田。それでも村山の後ろにぴたりとつけ、懸命に前を追うと「思ったより差が開いていなくて、後半はだんだん近づいてきたので、『上の順位を狙おう』と思いながら走っていました」。実際に先頭のペースが4000mにかけて3分13秒に落ちると、残り1000mの時点で野田の背中が大きくなってきた。

残り2周手前で、2位集団が野田を吸収。太田はラスト1周の鐘が鳴ったところでスパートをかけた。「自分の中でも、すごくきついんですけど、ここで仕掛けたら周りの選手を引き離せると思いました。スパートはまだ得意と言えるか分からないんですけど……」。謙虚に振り返った太田だが、村山と野田の追随を許さず、ワンジルに続く全体2位でゴールした。

ラスト1周で切れ味鋭いスパートを披露した

トラック・ロードともにルーキーイヤーから実力を発揮

高校時代からの先輩にあたる村松の陰に隠れがちだが、太田も地力があり、確実に成長しているランナーだ。ルーキーイヤーの昨年は関西インカレ女子1500mで優勝、5000mでは4位に入った。どちらかというと1500mで力を発揮する印象もあったが、U20日本選手権では5000mで野田に続く2位で、当時の自己ベストだった16分06秒47をマーク。長い距離への適応能力も見せてきた。

駅伝でもチームの主力を担ってきた。デビュー戦となった全日本大学女子駅伝では2区を任され、村松からトップで襷(たすき)を受けて区間賞の走りを披露。昨年末の全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)は1区で、トップと4秒差の区間3位と好走した。トラックだけでなくロードでも強さを発揮し、今年2月に福岡で開催された日本選手権クロスカントリー競走の女子8kmでは大学生トップの5位に入った。

今年の日本選手権クロスカントリー女子8kmでは5位に

2年目のトラックシーズン、関西インカレ女子5000mでは村松に及ばなかったものの、今回の学生個人では先着した。「一緒の練習をすることも多くて、記録と勝負強さを持っておられる方なので、勝てたことは自信になります」と語る一方、2学年先輩の主将には尊敬のまなざしを向ける。「ずっと近くで見てきて、本当にお手本というか、ついていきたくなるキャプテンだなと思います。普段からチームにマイナスの雰囲気が漂わないように導いてくれますし、不安を払拭(ふっしょく)するような言葉がけもしてくれます。その言葉通りの行動を、自らやっておられます」

立命館大・村松灯主将 肌で感じた「世界」のレベル、チームに還元して駅伝王座奪還を

太田自身はまだ「チームを引っ張る」と言えるほどの自信を持ち合わせていないようだ。この日のレースも「中盤に出ようかな、と思ったんですけど『そしたら、ラスト持たへんかもしれない』という不安もあって……。そういうのをなくしていって、周りのことも見られるようにならないといけないです」。

駅伝は「ベストの状態で挑めたら、結果は出る」

駅伝シーズンでは、今季もチームに大きな力をもたらすだろう。全日本大学女子駅伝7連覇、富士山女子駅伝6連覇中の名城大学にどうしても注目は集まるが、太田は昨年以上に手応えがあると語る。「昨年は、一緒に走る他のチームの選手の方が早いタイムを持っていることが多くて不安なところもあったんですけど、今回ベストを出せたので、駅伝を走る時もこれを自信にできると思います」

今回の自己ベストを自信にして、残るトラックレースや駅伝シーズンに挑む

心強い仲間も加わった。立命館宇治高校からは昨年の全国高校駅伝で3位に入ったメンバーの池田悠音と山本釉未のほか、高校2年時にU20の世界クロスカントリー選手権日本代表に選ばれた古田島彩(1年、白鵬女子)も入部。「今年は特に1回生が強いんですけど、上回生も持ちタイムが速かったり、本番に強かったり。すべての学年に均等に力のある選手がいるので、質の高い練習ができています」

名城大が続けている連覇を止め、全日本は2015年、富士山は2017年以来となるとなる優勝へ。「今年はベストの状態でみんなが挑めたら、絶対に結果は出ると思います」と力強く語った。

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