陸上・駅伝

特集:第56回全日本大学駅伝

立命館大が5秒差で24大会連続の伊勢路へ 箱根駅伝予選会の悔しさが生んだ意識変化

最後の1周、見事なラストスパートを見せた大森。各選手のラストスパートが伊勢路をたぐり寄せた(撮影・西田哲)

第56回全日本大学駅伝対校選手権大会 関西地区選考会

6月23日@ヤンマーフィールド長居(大阪)
1位 関西大学    4時間09分06秒88 
2位 京都産業大学  4時間09分08秒47
3位 大阪経済大学  4時間10分30秒08
4位 立命館大学   4時間11分17秒20
----------ここまで本戦出場------------
5位 関西学院大学  4時間11分23秒04
6位 龍谷大学    4時間19分24秒03
7位 同志社大学   4時間21分49秒73
8位 びわこ学院大学 4時間23分41秒80
9位 摂南大学    4時間25分40秒66
10位 神戸大学    4時間28分56秒33
11位 大阪大学    4時間29分27秒96
12位 佛教大学    4時間31分20秒52

6月23日に開催された全日本大学駅伝の関西地区選考会で、立命館大学が4位となり、24大会連続36回目の本戦出場を決めた。三本柱と言われる4年生3人のうち2人を欠く苦しいメンバーとなり、3組終了時点では出場圏外の5位。だが、最終4組出場の3選手がそれぞれのゴール間際で怒濤(どとう)のラストスパートを見せるなど、上位8選手がコツコツとタイムを稼ぎ、5位とわずか5秒84という薄氷の差で伊勢路切符をもぎ取った。

【写真】土砂降りの中、秒差の大激戦で4校が出場権 全日本大学駅伝関西地区選考会

2組目終了で5位に低迷 出場圏内まで1分差

関西地区選考会には12大学が出場。各大学10人が4組に分かれて出走し、上位8人の合計タイムで本戦切符4枚を争う。結果的には「上位8人のタイム」というレギュレーションが、最終結果で劇的な逆転劇もたらす「あや」となった。

昨年の箱根駅伝予選会に挑戦した倉橋。関東の壁を痛感したことがチーム全体に危機感を生んだと話した(撮影・西田哲)

1組は、関西インカレ1部10000m9位の倉橋慶(3年、智辯学園奈良カレッジ)と、10000m29分台の記録を持つ清水隼人(3年、西京)が出走した。1000m3分ペースで進む中、清水が2000mで徐々に遅れ始めたが、倉橋はそのまま5~6人の先頭集団に残った。

5000m以降、先頭集団はばらけたが、倉橋は粘りの走りを展開し5着となった。清水は19着。倉橋は「後半へばってしまったというか、自分の弱さが出た感じです。(点をつけるなら)65点から70点くらいかなと思います。(ほかの選手が)前に出られたときに落ち着いて対応できれば、もうちょっと行けたかなと感じています」と振り返った。

2組は榎本隆之介(4年、智辯学園奈良カレッジ)、茶木涼介(3年、立命館守山)の30分0秒台の記録を持つ2人に、ルーキー末永倫輝(1年、大分東明)の組み合わせ。3人まとまったままゴールまで走り切る作戦でスタートラインに立った。

レースは5000mまで15人程度の先頭集団で進んだ。立命館大はもくろみ通り3人とも集団の中にいたが、京都産業大学の2選手が抜け出す動きを見せると、集団が縦長に。ここで茶木と末永が遅れたが、4年生にして選考会初出場の榎本は先頭についていき、8人程度の新しい先頭集団を形成した。

「最初で最後、胸を張ってこの舞台に立っている」と話した榎本は、言葉の通り必死に食らいついた(撮影・西田哲)

「後ろを振り返ったときに立命館が自分しかいなくて。すごくきつかったんですが、4年生として最初で最後で胸張ってこの舞台に立っているので、絶対に離れるわけにはいかないので必死に食らいつきました」と榎本。レースは関西大学の3人が8000mで抜け出し、そのまま1~3着でゴール。榎本は1着から約20秒遅れの5着、茶木は10着、末永は最後に大きく遅れて17着だった。

2組目までを終え、立命館大は5人合計で2時間42分25秒72の5位。本戦出場圏内の4位関西学院大学とは1分08秒差をつけられた。

強まる雨 3組目でも差を縮められず

3組のスタート前に雨が激しくなり、レースは非常にスローペースで進んだ(撮影・西田哲)

3組目のスタートを前に雨が強まり、トラックは水で光るような状態になった。立命館からは児玉航洋(水口東)と藪田虎志朗(豊川)の2年生コンビがスタートした。レースは雨の中、3000m通過が9分50秒と、各選手が様子見する超スローペースとなり、5000m地点も20人近い集団のまま通過した。

6000mを過ぎたところで藪田が遅れ始める。児玉は先頭集団でついていったが、残り1000mで大阪経済大学・岩坂蓮太と関西学院大学・大井廉という報徳学園同期の1年生2人が抜け出した。その後ろで児玉も懸命にスパートをかけ、7秒遅れの5着でフィニッシュ。藪田は14着と苦しんだ。

3組目を終えた段階の合計タイムで、立命館大は5位のまま。逆に4位の関西学院大学との差は広がり、7人合計で1分28秒あまりとなった。

4組目の3人が猛然とラストスパート

4組は、三本柱の1人で昨年の選考会全体トップだった大森駿斗(4年、智辯学園奈良カレッジ)と、関西インカレ1部5000m5位の尾上陽人(3年、旭野)、5000m14分07秒14の記録を持つ期待の1年生・柏木優希(智辯学園奈良カレッジ)が出場した。土砂降りの雨に加え風もかなり強くなり、トラックは水浸しとなった。

3組目までとはうって変わって、1000m3分を切るようなペースで進んだ。京都産業大の小嶋郁依斗(4年、滋賀学園)らが引っ張る展開に、先頭集団十数人はかなり縦長になった。4000m付近で尾上が遅れ始める一方、出場権を争うライバル関西学院大学は3人とも集団に残っており、立命館にとっては苦しい展開になった。

雨が激しくなる中、大森はいったん遅れながらも盛り返し、最終的には2着となった(撮影・西田哲)

小嶋が独走態勢に入る中、集団は二つに分かれてサバイバルレースに。大森は6000m過ぎで2位集団4人からいったん遅れたが、8000m地点で再び追いつき、さらに残り半周となったところで猛然とスパート。独走した小嶋には約30秒遅れたものの、2着でゴールした。9・14着となった柏木・尾上も、ゴール前では最後の力を振り絞ってスパートを見せた。

ただ、関西学院大の3人も5・8・12着でゴール。しかも最終4組3人の合計タイムで関西学院大は立命館大を約16秒上回った。

「10人中上位8人」の合計タイムでは

3組目までリードしていた関西学院大が4組目でも上回った結果に、立命館大の連続出場が途切れたのでは、というムードも流れた。

ただ、閉会式で発表された確定順位は、4位立命館大、5位関西学院大だった。

この逆転劇はなぜ生まれたのか。その要因は、走るのは10人だが、合計するタイムは上位8人のみ、というルールだった。

3組目までの合計タイムを詳しく見ると、7人全員だと確かに関西学院大が約1分28秒リードしていた。だが、下位2人は算入されないことを踏まえて、7人のうち上位5人の合計タイムだけを比べると、実は3組終了時点で立命館大が約22秒リードしていたのだ。

この22秒から、4組で関西学院大が上回った16秒を差し引いた結果が、最終的な両校の差「5.84秒」となった。1人あたり1秒にも満たないわずかの差。4組の大森の圧巻のラストスパートや、ほかの多くの選手の必死のスパートがなければ、結果は入れ替わっていたかもしれない。

立命館応援団の前を走る。このあと雨の中でも応援団はずぶぬれになりながら応援を続けた(撮影・浅野有美)

箱根挑戦で感じた危機感、生まれたチーム内競争

昨秋、立命館大は全国に開放された第100回箱根駅伝の予選会に挑戦した。結果は出場ラインから約25分離された34位。出場した倉橋は「やっぱり関東との差っていうものを改めてすごく実感しました」と、関東勢の分厚い壁を痛感した。

ただ、この経験がチーム内に変化を起こしたという。

「全員が『このままではいけない』っていう危機感を持ちながら練習を積み、そのおかげで(チーム内の)中堅層、メンバーに入るか入らないかぐらいの選手のレベルが上がり、チーム内での争いもすごく激しくなりました」

4組の大森をはじめ各選手が見せたラストスパートが、チーム内競争の激しさを表しているように感じた。箱根駅伝予選会の悔しさがチーム全体を底上げし、主力2人が欠けても全日本の選考会を通過する原動力になったといえる。

4組の大森だけでなく、立命館は多くの選手が見事なラストスパートを見せた(撮影・西田哲)

この日欠場した4年生三本柱の山﨑皓太主将(洛南)と中田千太郎(智辯学園奈良カレッジ)らが本戦までに回復すれば、底上げされたチーム力に彼らの力の上乗せも期待できる。

山﨑主将は、本戦に向けた決意を語った。

「(きょうは)本当は自分が走ってチームに貢献するべきでしたけれども、そうはいかず本当に申し訳ない気持ちですが、なんとかこの悔しさを本戦の全日本大学駅伝で晴らしたいと思っています。本戦でいい走りができるように、しっかりと練習を積んで復活したいと思います」

in Additionあわせて読みたい