陸上・駅伝

特集:第93回日本学生陸上競技対校選手権大会

日体大・フロレスアリエが400mと200mで二冠「先にゴールして早く帰る」心持ち

日本インカレ女子400mと200mで二冠となった日体大のフロレスアリエ(すべて撮影・藤井みさ)

9月19~22日に開催された陸上の日本インカレで、日本体育大学のフロレスアリエ(2年、東海大静岡翔洋)が女子400mと200mの「二冠」を達成した。主眼に置いているのは400mだが、今季結果を残せなかったら200mや100mに専念する考えもあったという。覚悟を秘めた今シーズン、好結果を残し続けている背景とは。

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4日間で計10本のレースを走りきる

フロレスは4日間、大忙しだった。初日に400m予選を走ると、2日目は昼に4×100mリレーの予選でアンカーを務め、男子のリレーを挟んだ直後に、400mの準決勝。その約3時間半後に400mの決勝が行われた。3日目は女子200m予選と4×400mリレーの予選、4×100mリレーの決勝。最終日には200mの準決勝と決勝、そして4×400mリレーの決勝に出場。4日間で計10本のレースを走った。

まずハイライトを挙げるとするなら、2日目の女子400m決勝だろう。1レーン外側を走る園田学園女子大学の安達茉鈴(4年、京都橘)との一騎打ちが予想されたレースは、フロレスが300mまで安達にピタリとつけ、持ち味の後半勝負で勝ちきった。自己ベストと日体大記録を更新する53秒03。400mを2本、リレーを1本走った後の好記録に「素直にうれしいです」と喜んだ。

400m決勝は安達(570番)との競り合いを制し、自己ベストの53秒03

「まさか3本走った後に自己ベストが出るとは思っていなかったので、1本勝負のときは、それこそ52秒台を目標にしようと思います。300mまでは大きく走って、ラスト100mは気持ちで腕を振って、自分の持ってる実力を出し切るだけでした」

今季タイムを残せなかったら、400mをやめる可能性もあった

400mでは今シーズン、5月の関東インカレを当時の自己ベストとなる54秒07で制し、7月のオールスターナイト陸上では53秒28を出した。絶好調のようにも見えるが、本人の中ではやや感覚が異なる。「周りからはそう思われるんですけど、一緒に練習してくださっているみんなは、私が悩んでいることも、毎回練習で泣いていたことも分かってくれています」。練習ではいつも走っているタイムより少し遅いだけで、落ち込んでしまうこともあった。そのたび指導者陣から「練習のときは気にしなくて大丈夫。誤差とかもあるから」と諭されてきた。

メンタルがそこまで強くないと自覚している分、本番は「早く1周できたら、早く帰れる。『早く走ろう』というよりは『先にゴールして早く帰ろう』」という心持ちで臨んでいる。それは日本インカレ最初のレースだった400m予選から、そうだった。「予選の前も『走りたくない』と思って、先生に『帰ろう、帰ろう』と言ってました。先生も『分かった、分かった、とりあえずゴールしたらいいから』と。プレッシャーをかけずに、いま自分が持っている力を信じてくれているので、その言葉で頑張れます」

今シーズン絶好調にも見えるが、本人なりの悩みは尽きないと語る

今シーズンでタイムを残せなかったら、400m自体をやめる可能性もあったと明かす。高校2年のときの自己ベストをなかなか破れず、もがき苦しみ続けてきたからだ。「高3からタイムが出なくなって、大学1年生のときも1分台とかで走っていました。体重が増えて肉離れも多くなって、距離に対しても『走りきれるかな』という不安があるから、最初から全力で行けない。自分の走りと思いが、かみ合っていませんでした」

復調のきっかけとなった先輩たちの存在

大学1年目の冬にインフルエンザにかかり、食生活を見直したことで体重が落ち、少しずつ走りの感覚が戻ってきた。加えて復調につながった大きなきっかけは、須藤美桜や森山奈菜絵といった昨年の4年生たちの姿だ。「昨年の日本インカレで付き添いをさせてもらって、そのときに近くで見られたことが、いい経験だったと思っています」

2人の先輩は昨年の関東インカレ女子1部400mでワンツーフィニッシュを飾った実力者だが、須藤は日本インカレ準々決勝で敗退。「自分だけ自己ベスト更新できなかったんだよね」という言葉がフロレスの心に刺さった。「そのとき、私も頑張らなきゃって思ったんです」。あれから1年。400mの決勝前は「先輩たちはどんなアップをしてたっけ?」と考えながら体を動かした。ただ「ずっと動いてて、自分にはそんなメンタルないと思って、私は最後にダッシュを入れるぐらいでした」と笑う。

1年前は付き添いだった日本インカレで、今年は主役の一人となった

400mあっての200m

今大会の2日目で個人種目の400mを走り終え、3日目から200mが始まったときは「400mの走り方が抜けなくて悩んでいた」と振り返る。ただ「400mあっての200mなので、400mのストライドを生かす走りに変えました」。200mは今年の関東インカレも、6月の学生個人選手権も2位。「1位になれると思ってなかったので、実感はあまり湧いてないです」と23秒95のタイム以上に、結果に対して驚いているようだった。

今後は100mで11秒6台を狙って加速力を磨き、400mや200mのタイム向上に努めるという。これからもメインとなる400mで52秒台をめざして。フロレスの挑戦は続く。

200mを制した後、笑顔で報道陣に向けて「二冠」のVサイン

フロレスアリエの日本インカレ、レース内容

▽9月19日
400m予選 56秒02

▽9月20日
4×100mリレー予選 4走
400m準決勝 54秒32
400m決勝 53秒03(優勝)

▽9月21日
200m予選 23秒99
4×400mリレー予選 4走
4×100mリレー決勝 4走

▽9月21日
女子200m準決勝 24秒70
女子200m決勝 23秒95(優勝)
女子4×400mリレー決勝 2走

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