陸上・駅伝

特集:第103回関東学生陸上競技対校選手権

日体大・高村比呂飛が1部1500mを連覇 800mは「一区切り」で駅伝挑戦を表明

男子1部1500mを制した日体大の高村比呂飛(高校時代を除きすべて撮影・井上翔太)

第103回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子1部1500m決勝

5月10日@国立競技場(東京)

優勝 高村比呂飛(日本体育大4年)3分45秒65
2位 中野倫希(中央大4年)3分46秒30
3位 塩原匠(順天堂大3年)3分46秒49
4位 岩下和史(早稲田大2年)3分46秒80
5位 立迫大徳(早稲田大1年)3分47秒34
6位 髙田尚暉(山梨学院大4年)3分47秒55
7位 吉倉ヤナブ直希(早稲田大1年)3分48秒11
8位 𠮷田海渡(筑波大4年)3分48秒12

5月9日~12日に国立競技場で開催された陸上の関東インカレで、日本体育大学の高村比呂飛(4年、敦賀気比)が男子1部1500mで優勝し、昨年に続く連覇を果たした。「二冠」をめざして1500mの2日後にあった男子1部800mは、わずかに及ばず2位。レース後、今季は駅伝に挑戦することを表明した。

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後半型の持ち味を存分に発揮

高村は、いまの大学界を代表する中距離ランナーの一人だ。昨年4月にあった日本学生個人選手権の男子1500mで青山学院大学の宇田川瞬矢(3年、東農大三)らに勝って優勝すると、翌月の関東インカレでも男子1部1500mを制した。6月の日本選手権は決勝で8位。9月の日本インカレは2位と、主に1500mで結果を残してきた。

日本体育大・高村比呂飛が1部1500mV トップ選手との合宿で学んだ「メリハリ」
1500m決勝、残り1周に入ったところで高村は先頭に立った

連覇がかかった今年の関東インカレ決勝も、後半型の持ち味を存分に発揮した。早稲田大学の吉倉ナヤブ直希(1年、早稲田実業)や順天堂大学の大野聖登(2年、秋田工業)が引っ張る先頭は、最初の400mを58秒で通過する中、高村は集団の真ん中付近につけた。800mを過ぎたあたりから順天堂大の塩原匠(3年、東農大二)や中央大学の中野倫希(4年、豊川)とともに前をうかがい、ラスト1周へ。カーブで先頭に立つと、バックストレートで中野と塩原を引き離しにかかった。最後の直線に入っても加速は止まらず、左手を突き上げながらトップでゴールした。

昨年の関東インカレは800mで優勝できなかっただけに「今年は必ず二冠します」と宣言して臨んだ2日後。決勝はまたも2位だった。「二冠を狙ってはいたんですけど、『最低でも表彰台に上りたい』という邪念が出てしまいました。自分の得意なレースパターンだったにもかかわらず、取れなかったというのは、ちょっと力不足。(1500mの予選と決勝、800mの予選・準決勝・決勝を合わせた)5本を走る体力をつけておくべきだったと思います」

800mは日本大学の石元潤樹(右端)にわずかに及ばず、2位だった

「中距離界をもっと盛り上げたい」

そして800mについては、このレースを限りにいったん一区切りにする方針を明かした。もともとは1500mをメインにしており、そのスピードを磨くために800mの練習をしていたところ、思った以上に走れたことから出場してきたという経緯があった。「日本インカレはチームの状況によると思うんですけど、ここで一区切りできたら、流れとしては一番いいと思っています」。理由は秋以降、駅伝に挑戦するためだ。

敦賀気比高校時代は、青山学院大で今季の主将を務める田中悠登(4年)や昨年の全日本大学駅伝で4区区間賞の城西大学・斎藤将也(3年)らとともに、全国高校駅伝に出場。高村は2年の時にアンカーを任された。「高校時代は駅伝を中心にやっていて、箱根駅伝というのは自分の中で大きな目標でした」

敦賀気比時代は全国高校駅伝でアンカーを務めたことも(撮影・朝日新聞社)

日体大に進んでからは、中距離で勝つことに気持ちを切り替えていたつもりだった。だが、間近で駅伝部の奮闘を見たり、自分を指導してくれている石井隆士監督が第53回箱根駅伝の1区で区間賞を獲得したことを耳にしたり、2学年上で中距離ブロックの主将を務めていた廣澤優斗(現・コニカミノルタ)が4年生の時に8区を走ったりした姿に「やっぱり駅伝に挑戦したい」と思うようになった。

「中距離界をもっと盛り上げたい」という気持ちもある。「これまで800mや1500mが速かったのに、駅伝に挑戦してその長所を伸ばせず、引退してしまった先輩もいるし、今ちょっとくすぶっている後輩もいる。1500mや800mを中心にしながらでも、箱根駅伝に挑戦していい結果が出せるということを少しでも伝えられる一人になれたらいいなと思うんです。そういう選手が増えれば、もっと道が開かれていくと思うので」

中距離界を盛り上げるため、レース後に駅伝挑戦を表明した

好意的に受け止めてくれている駅伝部の仲間たち

これまではハーフマラソンのみならず、10000mも記録会を含めてレース経験はない。2、3年時は毎年12月上旬に行われる日体大記録会で10000mに出場するための準備をしてきたが、直前のけがやコンディションがうまく合わないことがあり、見送ってきた。夏以降はまず5000mで13分台をめざすことから始める。

「ここからは1500mに集中して、記録や日本選手権の上位を狙います。その後は駅伝部と一緒に夏合宿で、けがをしないように距離を踏んで、5000mや10000mに出場していって、練習の中でハーフも走れるという力を得ていきたいです。箱根駅伝予選会からでもチームに貢献できたらいいなと思っています」。思えば廣澤も、初めてのハーフマラソンは10月の箱根予選会だった。

まずは日本選手権男子1500mに集中する

駅伝部の仲間たちは、好意的に受け止めてくれている。「廣澤さんが挑戦した後ぐらいから『高村も来なよ』って。最初は一応言ってみるぐらいの感じだったんですけど、だんだん『ぜひ一緒に頑張ろう!』と現実的なものになってきました」。玉城良二監督からは「距離走、大丈夫なの?」と声をかけてもらうこともあるという。

自身と周囲の陸上キャリアのため、そして中距離界の未来のため。高村の決断を心から応援したい。

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