筑波大・鵜澤飛羽が1レーンから200m優勝「インカレでしか得られない栄養」がある
第93回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子200m決勝(+0.6m)
9月22日@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(神奈川)
優勝 鵜澤飛羽(筑波大4年)20秒64
2位 重谷大樹(東洋大4年)20秒71
3位 鈴木大河(日本大4年)20秒81
4位 エケジュニア瑠音(中央大2年)20秒91
5位 松井健斗(関西大4年)20秒98
6位 小池真生(順天堂大2年)21秒03
7位 海老澤蓮(順天堂大4年)21秒15
8位 井澤真(筑波大4年)21秒36
9月19~22日に開催された陸上の日本インカレに、今夏のパリオリンピックで男子200mに出場した筑波大学の鵜澤飛羽(4年、築館)が200mと100m、リレー種目に出場した。200mは地力を発揮して優勝を飾った一方、他の種目では悔しさも。最後のインカレを終え、感慨に浸った。
100mにも出場した理由
6月の日本選手権で200mを制し、パリオリンピックでは日本選手で唯一となる準決勝に進出した鵜澤。日本インカレでの出番は早かった。初日の100m予選に出場し、組1着の10秒25(+0.1m)で自己ベストを更新。まずは準決勝進出を決めた。100mにも出場した理由を聞かれると、「できるなら、100mでも足が速くなりたい。気持ちよく走れてるんで、もうちょい上げられると思う」と話し、状態は良さそうだった。
翌日の準決勝も10秒27(-0.5m)をマークし、決勝へ。頂上決戦にはパリオリンピック4×100mリレー日本代表の東洋大学・柳田大輝(3年、東農大二)のほか、5月にバハマで開催された世界リレー日本代表の広島大学・山本匠真(4年、広島国泰寺)や慶應義塾大学の三輪颯太(4年、西武学園文理)といった錚々(そうそう)たるメンバーがそろった。
「優勝を狙って、タイムも出せるだけ出す」。予選の後にこう意気込んでいたが、頂点をつかんだのは柳田。鵜澤は10秒28で5位だった。「予選の感じだと(10秒)1台は出るかなぁと思ったんですけど、みんな速い」と本気で悔しがった。
100m出場は、対校戦としてチームに得点を持ち帰る以外にも、理由があった。「パリオリンピックのリレーメンバーに選ばれなくて、自分の中で思うことがありました。ずっと納得できなかったんで」。ただ、日本インカレの結果を受けて「こういう実力だったということは、やっぱり選ばれなかったのかなと。ギータ(柳田)が勝って納得しました」。今回に限っては受け入れた。
来年、東京で開催される世界選手権でリレーメンバーに選ばれるために必要なことは、という質問には「ギータを倒さないと無理ですね」ときっぱり。「それぐらいのタイムを出せて、常に拮抗(きっこう)する形になって、やっと初めて選ばれるんじゃないかと思います」
さすがに負けられなかった200m
3日目からは鵜澤が国内の第一人者となっている200mが始まった。「個人種目は残り200mだけなんで、さすがに負けられないです」と予選を通過し、この日の夕方は4×100mリレーに出走。最終日の午前中には男子200mの準決勝があった。このレースで鵜澤は左の太ももにテーピングを巻いていた。「ケガじゃなくて、疲労でだいぶパンパンになっていたので、気持ちだけテーピングを巻いた。本当なら、やらなくてもいいぐらいです」。20秒97(-1.5m)で組3着となり、着順で決勝に進めず、タイムで拾われた形となった。「寿命が縮みましたね。よかった、まだ走れて」
決勝は、最も内側の1レーンに入った。他のレーンよりカーブが急なため、序盤から大きな動きで入ることができない。「ちっちゃく、ちっちゃく入って、後半頑張る。いつものパターンなんですけど、よく大きい動きになって後半に持たず、スピードが上がらないところを先生に修正されるんで。色々考えながら、アップの最後の1本でちょっとうまくいって『これだったらいけるかも』と」
5レーンに入った東洋大の重谷大樹(4年、九産大九産)らとの勝負に競り勝ち、1着でゴール。直後は自分が優勝したことに気付いていない様子だった。「スクリーンに出るまで祈ってました」。周囲に「俺?」と尋ねつつ、着順がアナウンスされると両拳を握りしめ、一緒に決勝を走ったチームメートの井澤真(4年、立命館慶祥)と抱き合った。
「『4年間が終わっちゃったんだな』っていうことをすごく感じて、本当に色んなことがあったので、色んな感情がこみ上げてきて『うわー』となりました」。本来なら最終種目の4×400mリレーも走る予定だったが、チームは予選を通過できず、これが鵜澤にとって日本インカレ最終レースだった。
世界で戦っていくために
グランプリシリーズや日本選手権といった国内大会のみならず、世界選手権、オリンピックという国際経験が豊富な鵜澤でも、日本インカレは特別なようだ。舞台の違いについて尋ねると、こう答えてくれた。「色んな人にチームとして応援してもらえるのはインカレしかないので、インカレでしか味わえない、得られないような栄養がありますね」。4年間で最も印象に残っているレースには、2年時の日本インカレで優勝したリレーを挙げた。
今後は、来年に東京で開催される世界選手権を見据えた取り組みが始まる。「世界の選手は100mも200mもリレーもやっている選手が多いので、自分もそうならないと世界では戦えない。今回を『当たり前にする』というところを肝に銘じて、頑張っていきたい」。筑波のユニホームで有終の美を飾ったインカレでの経験を、今後の競技人生に生かしていく。