ラグビー

特集:New Leaders2024

京都産業大・辻野隼大共同主将 走れるBK陣をまとめ、関西4連覇と大学初の日本一へ

昨年度の大学選手権準決勝で。左から三木・前主将、フナキ、辻野(すべて撮影・斉藤健仁)

いよいよ開幕した関西大学ラグビーAリーグ。今年も優勝候補筆頭は昨年の王者・京都産業大学で、同校初の関西4連覇&初の大学日本一を目標に掲げている。昨年度の大学選手権準決勝を経験している選手や日本代表、U20日本代表にも選出された選手も多く、戦力は充実。そんな赤紺ジャージーの共同キャプテンに任命されたのはFWを熱きプレーで引っ張るLOソロモネ・フナキ(4年、目黒学院)、そして冷静沈着なCTB/FBの辻野隼大(4年、京都成章)の2人だった。

開幕戦で同志社から15トライ97点

9月22日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で行われた同志社大学との開幕戦、京都産業大は強力FWで相手を圧倒し15トライを重ねて97-24と大勝した。慣れ親しんだFBではなく、「チームから任されたポジションでプレーします。早くこのチームでプレーがしたかった」とインサイドCTBで先発した辻野キャプテンは、時折、10番の位置に入りつつ、得意のキックでFWを前に出して勝利に貢献した。

辻野主将は「初戦が伝統ある同志社大さんだったので、相手をリスペクトしながらも自分たちにフォーカスしようと取り組んできた。その結果が、要所でセットプレーにつながったかな。まだまだ課題はありますが、次戦に向けてしっかり取り組んでいきたい」と冷静に振り返った。

京都産業大は続く29日の摂南大学戦にも67-28で大勝し、開幕連勝スタートを切って今年も調子の良さを見せた。

冷静な辻野と熱いフナキが共同主将に

チームを率いて4年目となる、元日本代表で同校OBの廣瀬佳司監督は「2人ともキャプテンシーがあり、ちょっと決めかねていて、ポジションもFWとBKだったので、2人でいいんじゃないかな、と。ラグビーのキャプテンはすごく負荷が高く、ケガのリスクもある。幸い今年は(リーダーシップのある候補が)2人いたので、お互い役割分担して、負荷を分散させることができる」と、2人を共同キャプテンに指名した経緯を説明した。

熱いプレーで引っ張るフナキ(左)と、冷静沈着にまとめる辻野が今年度の共同主将だ

中学、高校時代もキャプテンを経験していた辻野は、「大学でもキャプテンを任される予感はあった」と言い、廣瀬監督から「共同キャプテンをやってほしい」と言われて、即答した。辻野は「2人でやる方が楽ですし、おのおの、FWとBKをまとめるのもそうですが、フナキは気持ちのこもったプレーや言葉でチームを引っ張り、僕は戦術面や冷静さでチームをまとめていく。徐々に、おのおのが良いリーダーシップを発揮できるようになってきている」と目を細めた。

新チームが始まると4年生で話し合い、今シーズンのスローガンとして「BEST」を掲げた。「全員がベストを尽くして、最高なチームとなって、(大学の)1番を取りに行こうという気持ちを込めました」(辻野)。

昨シーズンは関西リーグは全勝で優勝したが、大学選手権では明治大学に準決勝で敗れてシーズンを終えた。それを踏まえて辻野は、「すごく自信はあったし、モールは通用していたが、準決勝で明治大学にコテンパンにやられた(30-52)悔しさがあった。今シーズンはFWのモールを磨きつつ、どうやったら関東勢に勝てるのかと考えてラグビーするようになった」と話す。

昨年度の大学選手権は、準決勝で明治大に敗戦。「どうやったら関東勢に勝てるのか考えてラグビーをするようになった」

夏合宿から関西開幕まで、辻野とフナキの2人は4年生としっかり話し合って、方向性や役割分担を確認したという。また辻野は「高校と比べて大学は自由がある中で、ラグビーに対する思いが少し違ってくるのかなと思っています。いろんな人とコミュニケーションを取って、仲を深めて、最終的に同じ目標に向かっていけるように努力をしています」と話した。

辻野が敬愛するのが、昨年度、京都産業大でキャプテンを務めたFL三木皓正(現・トヨタヴェルブリッツ)だ。辻野にとっては高校(京都成章)の先輩にもあたり、辻野は三木の存在が京都産業大に進学した一番の理由だった。今でもLINEなどで相談する仲だという。

「偉大な先輩である(三木)皓正が作ったチームで、(高校に続き)またキャプテンをやることになり荷が重い部分もありますが、自分は自分なので、自分らしくやっています。皓正は人間として超えられないかもしれませんが、チームとして(昨年度の)結果を超えることで最大のリスペクトを送れるかな」(辻野)

京都産業大・三木皓正主将は「タックルの鬼」 ディフェンス強化で10度目の壁に挑む

京都成章でも共同主将を経験 花園で準優勝

辻野は中学1年の時に大阪・長吉西中学から競技を始めた。中学3年時には大阪府中学校代表として、全国ジュニアラグビーで優勝を経験。当時のチームでキャプテンを務めていたのがSO/FBの小村真也(帝京大学4年、ハミルトンボーイズ)で、「中学時代から対戦していました。いい友だちですがライバル視しています。帝京大も含めて関東勢には負けたくないですね!」と語気を強めた。

高校は、中学2年時に花園で見た姿に憧れて京都成章に進学した。高校1年生から試合に出て、花園に3回出場を果たした。3年の時はSH宮尾昌典(早稲田大学4年)とともに共同主将を務め、決勝で桐蔭学園(神奈川)に敗れて惜しくも準優勝だった。高校時代、宮尾以外にも、LO本橋拓馬(帝京大)、CTB山田歩季(明治大)、WTB中川湧眞(東海大学)らと同級生だった。

京都産業大では2年時から公式戦に絡むようになり、大学選手権では15番をつけて準々決勝、準決勝とフル出場してベスト4に貢献した。

さらに昨季は10番や15番として、リーグ戦の最終戦では3連覇を決めるゴールキックを成功させ、大学選手権も全試合に先発出場。FBとして関西大学Aリーグの「ベスト15」にも選出されるなど、飛躍のシーズンを過ごした。

昨年度は大学選手権全試合に先発出場し、FBとして関西の「ベスト15」にも選出され、飛躍のシーズンになった

オフには、7人制ラグビー日本代表の林大成らにタックルやボールキャリーの個人指導を受けて、「よりフィジカルで強くなりたい」と体重も3kgほどアップ。また夏合宿のオフの間もグラウンドで一人走り込みをするなど、個の強化にも余念はない。「(リーグワンでプレーする予定の)将来を見据えてもそうですけど、まずは自分が率先して個人として成長しようというところで、体作りを意識して取り組んでいた」(辻野)

趣味は、高校、大学と生活して7年目となる京都にある銭湯めぐりで、時間があれば一人でお風呂に入ってリラックスしているという。座右の銘は中学時代の先生に教えてもらったという「タフチョイス」だ。「しんどいことを自分から選んでやれば何かがあります。また『意志あるところに道は開ける』という言葉も好きで、自分が信じなかったら何もできないので信じてやっています」(辻野)

チームを救うプレーを心がけ、走り切る

京都産業大学は、関東勢と対戦した夏の練習試合こそあまり調子は出なかったが、春は関西大学春季トーナメントを制した。元日本代表で同校OBの田倉政憲FWコーチも、今年から週末のスポットコーチからフルタイムのコーチとなり、スクラム、モールを強化している。

辻野は「京産のプライドとしてFWには頑張ってもらわないといけないですが、今シーズンはバックスリーを中心に走れるBKもたくさんいるので、例年より違ったアタックができるかな。ただ日本一に向けてはまだまだ足りない部分は多いので、関西リーグの一戦一戦に集中することで、それが日本一に結びついて、最後は笑って終われたらいいな」と、まずは目の前の試合に集中している。

プレースキックをはじめとするキックは武器の一つだ

ファンに、個人のどこに注目してほしいかとたずねると、辻野は「プレースキックは与えられた仕事なので、長所としてやっていきたい。また自分としては味方をサポートしつつ、しんどいとき、ピンチのときにチームを救うプレーを心がけつつ、最後まで走り切るという京産ラグビーを体現したい」と語気を強めた。

大学選手権で準決勝に進出した過去10大会で、すべてベスト4に終わっている京都産業大。今年こそ、関西で4連覇を達成したうえで、準決勝の壁を破って初の日本一まで駆け上がれるか。

共同キャプテンの辻野は、BKをまとめつつ、ひたむきにタックルし続ける京産ラグビーを先頭に立って体現し続ける。

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