陸上・駅伝

久保凛と落合晃 ともに800mの日本記録保持者で、東京世界陸上を狙う高校生コンビ

800mの日本記録を持つ久保凛(左)と落合晃(すべて撮影・井上翔太)

Yogibo Athletics Challenge Cup 2024

9月29日@デンカビッグスワンスタジアム(新潟)

▽女子800m(タイムレース)
1位 久保凛(東大阪大敬愛高2年)2分01秒25
2位 川田朱夏(ニコニコのり)2分04秒80
3位 北村夢(エディオン)2分05秒09

▽男子800m(タイムレース)
1位 落合晃(滋賀学園高3年)1分46秒88
2位 松本純弥(株式会社FAJ)1分47秒15
3位 東秀太(広島経済大3年)1分47秒69

9月29日に新潟市のデンカビッグスワンスタジアムであった「Yogibo Athletics Challenge Cup 2024」の800mに、日本記録を持つ2人の高校生が出場した。女子の久保凛(東大阪大敬愛高2年)と男子の落合晃(こう、滋賀学園高3年)。ともに今年8月のU20世界選手権(ペルー・リマ)で好走し、来年に東京で開催される世界選手権への出場をめざしている。

久保凛「まだ世界に通用する力じゃない」と痛感

7月の記録会で1分59秒93をマークし、19年ぶりに日本記録を更新した久保。新潟では、1分59秒00に設定された世界選手権の参加標準記録更新を目的に出場した。

塩見綾乃(岩谷産業)や占部蘭(積水化学)、北村夢(エディオン)といった有力ランナーが集まる中「調子も上がっていて、足も動いていた」と1周目を59秒で通過。同じペースで2周目を走り切れれば、標準記録突破も見えたが「ラスト200mで『切れるかもしれない』と思ってしまって、少し力んで走っちゃったかな」とスピードが落ち、2分01秒25でフィニッシュした。

1分台は記録できなかったものの、2分1秒台の好記録に「自分を褒めたい」

「今回は狙えるかもしれないと思って、400mから600mのところで落ちないことを意識しました。その課題はクリアできたんですけど、もう少し持久力をつけて、焦らずに走らないといけないと思いました」

今年は8月にU20世界選手権を経験したことで、「まだ自分は世界に通用する力じゃない」ということを痛感したという。結果は6位入賞だったが「自分が先頭を走っても、ラストまでついてこられてしまう。今のままではダメで、もう少しレベルを上げなければならないと感じました。ラストで足が動かない状態では、話にならない」と久保。2分を切ったことが、まだ1度しかないことを引き合いに「満足はしていないですけど、次につなげることが大事なので、これからも努力したい」と前を向いた。

持久力をつけ、さらなるレベルアップを誓う

落合晃「パリに出ている選手とも戦っていかないと」

「1本狙ってみよう」と出走した男子800m日本記録保持者の落合は、山梨学院大学の米田拓海(3年、富山商業)にペースメイクを依頼。後ろについていく形で「すごくいい入りができた」と最初の1周を50~51秒で入った。

「まだいける」という感覚を持ち合わせて2周目に臨んだが、1分46秒88でフィニッシュ。自身が全国高校総体(インターハイ)でたたき出した1分44秒80には及ばず、世界選手権の標準記録(1分44秒50)にも届かなかった。こちらも久保と同様に、「ラストに伸びきれなかった」と残り200mでの力みを反省点に挙げた。余計な力を使わずに腕を振るため、両手首にテーピングを巻いて固定した状態で走ったが、「タイム的にも落ちているので、やっぱり力んでしまったのかな」。

1分46秒88でフィニッシュし「ラストで伸びきれなかった」と悔やんだ

落合は今夏のパリオリンピック出場を狙っていた。参加標準記録の1分44秒70は決して遠い目標ではなく、6月末の日本選手権での突破を狙っていた。日本選手権では優勝を果たしたものの、1分46秒56というタイムに、ゴール後は雨でぬれたタータンをたたいて悔しがった。

パリオリンピックは悔しい思いを抱えながらも、自分に足りないところを冷静に分析しながら見ていたという。「これから世界で戦うとなったら、パリに出ている選手たちとも戦っていかないといけない。決勝は世界記録(1分40秒91)まであと0.3秒ほどのスピードで走っていて、『やっぱりすごい』と感じたし、色々勉強になりました」と語る。

パリオリンピックのレースを見て、自分に足りないところを知った

自らに厳しく、常に世界を見ている2人

2人とも日本記録を持っている現在の国内チャンピオンにもかかわらず、自らに厳しく、さらなる成長を誓って、常に世界を見ている点で共通している。

「日本記録を出すことができて、グランプリにも出させていただいて、大きく成長したシーズンだと思いますけど、次のシーズンはより高い目標をめざしていきたい」と久保が言えば、U20世界選手権で3位に入った落合は「もちろんメダルを取れたことに関してはうれしい気持ちもありました。ただ、それ以上に世界で勝てなかったということが、すごく心残りで……。次は『絶対に世界で勝ちきるぞ』っていう気持ちが湧いてきました」と語った。

今シーズンのトラックレースも少なくなってきた。国内の中距離界を牽引(けんいん)する若い力が、ここから来年の世界選手権までにどこまで飛躍し、タイムを伸ばしてくるか。注目していきたい。

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