神戸学院大・森川凌 2年秋で主将就任、最上級生となりチームをまとめるための心がけ
マスク越しに見える鋭いまなざしと凜(りん)とした表情。キャプテンらしく常に周囲を見渡しながら、司令塔としてチームの中心に立つ神戸学院大学の森川凌(4年、神戸国際大付)は、4番打者も務める攻守の要だ。
春は自身初のベストナインに選出
1年春からマスクをかぶり続け、中軸も担ってきた。今春の関西六大学リーグ戦は全試合出場。13試合で46打数17安打、打率3割7分の成績を残し、捕手部門のベストナインに初選出された。
「春は逆方向に大きな当たりが結構多かったことが良かったです。自分の(調子の)起点は、逆方向への当たりがどれだけ出るか。秋はもっと増えればと、春のリーグ戦後は筋力トレーニングをかなりやってきました」
高校の時は68kgしかなかった体重が、今は92kgにまで増えた。打席の立ち姿を見るだけで、体の分厚さが分かるほどだが、筋力が備わったことで春までの打撃フォームではしっくり来ず、秋は試行錯誤を繰り返している。「バットを立てたり、トップの位置を工夫したりして、探りながらやっているんですけれど、まだ自分のものにできていないんです」と森川は言う。
春に結果を残したことで厳しいコースを攻められるようになったことも一因のようだ。「春よりミート率は下がっていると思いますし、少なくとも春のようにはいっていないですね」と苦悩の表情を浮かべた。
頼もしく見つめる、いとこの後輩
8月末のオープン戦で右太もも裏に死球を受けたことも、少なからず影響しているという。「当たった部分をどうしてもかばってしまって、体の開きが早くなってしまったのもあります。(死球を受けた)時期がリーグ戦の直前だったので、通院して治療して、何とかリーグ戦に間に合わせたんですけれど、治療の間はオープン戦にも出なかったので、(リーグ戦に)合わせる難しさはありました。自分の調整不足もあると思います」
9月27日に行われた京都産業大学との1回戦では2打数無安打。「きっちりインコースに投げられて打てなかったです」と振り返ったが、続く2回戦では1打席目で中越え本塁打を放つなど5打数3安打。調子が悪いと言いながらも、何とか食らいつく姿勢を見せつけた。
チームとしては、まだまだ乗り切れていない部分はあるが「春はミスで負ける試合が多かったんですけど、秋はミスから崩れる場面が少なくなったと思います」と胸を張る。
昨春の選抜高校野球大会で準優勝した報徳学園(兵庫)出身の竹内颯平(1年)が、遊撃手のレギュラーに定着したことも大きい。竹内は堅守だけでなく、大きな声を出してチームメートを鼓舞する盛り上げ役としても存在感を示し、森川とはいとこの関係だ。お互いに幼いころから野球を続ける弟のような存在を「あれだけ声を出してくれる選手は今までチームにいなかったので、すごくありがたい」と頼もしく見つめている。
何でも言い合えるチームにするために
森川は2年秋からチームの主将を任されている。高校時代も1年春からベンチ入りし、常に先頭に立ってきた。「先輩がいる中でのキャプテンは未経験。先輩に言いにくいことは多かったですね」と苦笑いする。言いたいことがあっても、最初は遠慮してなかなか勇気が出なかった。それでも「チームのために言わないといけない」と心を鬼にして、何とか言葉にしてきた。
「いくら先輩でも『野球のことはちゃんと言おう』と腹をくくるようになりました。大学でも1年生から試合に出て、誰よりも経験させてもらっていたので」と経験値を武器に、先輩たちと同じ目線になることを心掛けてきた。
最上級生になった今は、同級生や下級生で意見を出し合う際、徹底していることがある。「とにかくコミュニケーションを大事にしています。キャプテンだからといって偉そうにするのは嫌なので、練習から冗談も言うし、後輩から冗談を言ってもらってもいいので、お互いに話しかけやすい空気を作るようにしています」
時には一人暮らしをしている後輩の家に行くこともある。そこまでして気を使わない関係を築き、何でも言い合えるチームにしたい。そう願いながらチームの中心に立ち続けてきた。キャプテンになって5季目となる今秋は、集大成のシーズンだ。「最後はとにかく完全燃焼したいです。そのためにもチームとして、一つでも多く勝っていけたらと思います」
卒業後は社会人野球でプレーを続けることが決まっている。「本当はプロへ行きたいという思いはあるのですが、社会人でさらに結果を残せるように頑張りたいです」。キャプテンとして、中心打者として、最後の大学野球を納得のいくシーズンにするため、駆け抜ける。