関学大・加藤圭裕 高校サッカー名門から転向しレギュラー「1対1では負けたくない」
アメリカンフットボールの関西学生1部リーグは、9月29日に第4節で関西学院大学と近畿大学が対戦した。近大が先制得点を奪い、第2クオーター(Q)序盤は14-14の同点だったが、このQと第4Qに得点を重ねた関学が44-14で勝った。関学は、DBの加藤圭裕(3年、國學院久我山)がスターターで試合に出場し、奮闘した。
近大に勝利「やられてもやり返した」
最終的には関学がスコア上は圧倒したものの、簡単な試合ではなかった。近大は前々節で関西大学を倒し、その後立命館大学には敗れたが、近年随一の戦力を持つ相手。QB勝見朋征(4年、近大附属)の鋭いパスとラン、RB島田隼輔(4年、近大附属)の力強い走りなどで攻め込まれて先制点を許した。
前半が終わった時点で21-14で関学がリード。後半は関学が得点を重ねたが、自陣でパスをインターセプトされるなど苦しい流れもあった。しかし、守備陣は勝負どころをしっかり守り切り、近大に得点させなかった。
DB(SF)の加藤は、3年目のこの試合で初めて先発メンバーに抜擢(ばってき)された。第2Q中盤には近大のロングパスをカバーしきれず、あわや一発タッチダウン(TD)のピンチもあったが、粘り強く踏ん張ってボールキャリアにタックル。第4Qの7分すぎにはパスをインターセプトし、やり返した。
加藤が試合を振り返る。「前半は相手の攻撃陣が強くて、マンツーマンで自分も抜かれてしまって。やられてしまったのはありましたが、先輩たちから『やり返せ!』って声をもらって、自分にできることを精いっぱいやろうって気持ちで臨みました。インターセプトできたプレーも、自分のミスが流れを左右する場面だったんですが、先輩のフォローもあって落ち着いてやれました」
母の紹介で入部、初心者からの挑戦
國學院大学久我山高校。加藤は、アメフト部ではなかなかお目にかからないサッカー名門校の出身。部員が200人いるサッカー部で、MF、センターフォワードのスタメンで試合に出ていた。チームメートの同期には、横浜F・マリノスを経て現在オランダ1部のNECに所属する塩貝健人らがいて、高校サッカー界トップクラスの環境でプレーしていた。
高校3年秋の全国高校サッカー選手権東京予選は、決勝で堀越に負けて全国大会への出場を逃した。「選手権に出るのが一番の目標でしたが、負けてからサッカーを続けるか悩みました」と加藤は当時の気持ちを振り返る。
そんな時に、浮かんだのがファイターズの存在だった。「元々、母親が関西出身で、関学でチアリーダー部だったんです。だから以前からテレビで甲子園ボウルを見る機会もあって、ファイターズのことは知っていました」。母の万紀子さんが大村和輝監督と旧知の仲で、加藤の話を聞き、声を掛けてくれたという。
サッカーとは違うスポーツに挑戦したいと考えていた加藤は、関学への進学を選んだ。
WRからDBへ転向「ビビらずタックル」
ファイターズに入り、最初はWR志望だった。しかし、WRは高校時代から鳴らした選手たちに加えて、未経験でも同学年の五十嵐太郎(関西学院)など選手層が分厚かった。大村監督から「DBの方が早く試合に出られる」とアドバイスされてDBに転向した。
DBに移ってからも、試練はあった。「初めて出た試合で、タックルを仕掛けたら相手に思いっきりかまされてしまって。そのときはタックルすることへの恐怖心もありました」。サッカーとは全く性質の異なるアメフトに、すんなりとなじんだわけではないという。
「ファイターズに入って感じるのは、レベルが高くてとても熱い組織だなってことです。刺激になってます。僕は久我山サッカー部の中でも淡々とやってるタイプで、それでもサッカーには自信がありました。今は、とにかく成長しないといけないんで。苦労してますね」と苦笑い。
去年の春は試合に出る機会があったが、秋には途中から出ることもできなくなった。3回生になったが、まだまだもまれている。
今、DBとして得意なことを聞くと、「これといって、正直ないんですが。今はタックルはビビらずいくことを意識しています」。東京ヴェルディジュニアユース、久我山とレベルの高い環境で育ったためか、あまり大きなことは言わない性分のようだ。
パスカバーの精度高め、関西リーグの山場へ
次節は京大戦。その後、関大、立命といった「3強」との戦いに入っていく。全国選手権出場を見据えると、まだまだ道のりは長いが、一つの佳境を迎える。
「もう一度初心に帰り、ファンダメンタルを向上させて、1対1で絶対に負けない状態をつくって試合に臨みたいです。関学は今、パスディフェンスが課題と言われてると思うので。パスカバーの細かい部分をしっかり詰めて精度を高めていきたいです」
加藤の成長が、守備、ひいてはファイターズ全体の、もう一段のレベルアップにつながる。