陸上・駅伝

特集:第36回出雲駅伝

出雲駅伝、主要大学の監督たちが意気込み「誰を外そうか迷う」ほど戦力充実のチームも

学生3大駅伝の幕開けとなる出雲駅伝がいよいよスタートする(すべて撮影・藤井みさ)

今年度の学生3大駅伝幕開けとなる、第36回出雲駅伝(6区間、45.1km)が10月14日、出雲大社正面鳥居前をスタートに開催される。昨年は駒澤大学が連覇を達成。今年は年始の第100回箱根駅伝で総合優勝を果たした青山学院大学やトラックシーズンから勢いがある國學院大學などが、駒澤大学のライバルとなる。

レース前日の13日には記者会見が行われ、青山学院大学、駒澤大学、城西大学、國學院大學、早稲田大学、創価大学、大東文化大学、米国アイビーリーグ選抜の各監督が出席。キーマンとなる選手や区間配置の意図などを語った。

出雲駅伝出場校の平均タイムは? 10000mトップは國學院大、5000mは青学大

青山学院大学「かっ飛ばせ大作戦」

駅伝のたびに恒例になっている青山学院大学・原晋監督による作戦発表。今回は「かっ飛ばせ大作戦」と名付けた。「メジャーリーグも日本のプロ野球も非常に盛り上がっています。本来なら野球語録ですけど、陸上界も盛り上げていきたいと思います。1区から『かっ飛ばせ、かっ飛ばせ、鶴川! かっ飛ばせ、かっ飛ばせ、野村!』。ゴールまでかっ飛ばして、優勝めざして頑張ります」と元気良かった。

1区の鶴川正也(4年、九州学院)と2区の野村昭夢(4年、鹿児島城西)は昨年のキーマンに挙がった2人でもある。特に「チームで5000m最速ランナー」の鶴川には期待をかける。「出雲は短い駅伝ですので、前半の遅れが致命的になる。前半から勝負していきたい」。10000m27分台のタイムを持つ黒田朝日(3年、玉野光南)が配置された3区で先頭に立ち、独走態勢を築くことが青山学院大にとっては理想の展開だ。

「かっとばせ大作戦!」で優勝を目指すと語った原監督

駒澤大学「佐藤圭汰抜きで勝てば、弾みに」

3連覇がかかる駒澤大学は、過去2大会連続で2区を走り優勝に貢献した佐藤圭汰(3年、洛南)が、ケガでエントリーされず。藤田敦史監督は「チームとしては非常に痛手」と口にしつつ、こうも語った。「圭汰なしでも戦えるチームを作ろうと、篠原(倖太朗、4年、富里)キャプテン以下、選手たちは一生懸命ここまで頑張ってきた。佐藤圭汰抜きで勝つことができれば、全日本と箱根に向けて大きな弾みになる」

重要となる区間には、1区と3区を挙げた。1区はルーキーながら、大八木弘明総監督のもとで篠原や佐藤らとも練習を積んだこともある桑田駿介(1年、倉敷)を抜擢(ばってき)。藤田監督も「試合で外さない強さを持った選手」と評価する。3区には青山学院大が黒田を起用すると予想して、主力の山川拓馬(3年、上伊那農業)をぶつけた。「1区と3区で好走することができれば、6区に絶対的なエースの篠原を置いていますので、勝つ確率が高くなるだろうと考えています」と意図を明かした。

3区に青山学院大の黒田が来ると見越し、山川をぶつけて勝負したいと語った藤田監督

城西大学、目標を「2位」に上方修正

城西大学の櫛部静二監督は、新年度に入ったときに「7位」だった目標を、トラックシーズンや夏合宿などの充実ぶりを踏まえて「2位」に上方修正した。「夏前から非常に調子も良くなって、直前になってケガ人もいなく、選手もさらに成長しています」。昨年の順位は2位だが、チームは3番でフィニッシュした後、2番だった創価大学にドーピング違反が発覚し、繰り上がった経緯がある。「昨年のチームを超える」という思いも秘める。

昨年は1区の斎藤将也(3年、敦賀気比)が転倒し、トップから約1分離された後、巻き返した。斎藤は今年も1区。「今年はそこ(転倒)が帳消しになれば、いい滑り出しで3区のヴィクター・キムタイ(3年、マウ)に渡せるのかなと思っています」。1区と3区に10000m27分台ランナーを置いているだけに、カギを握るのは2区を務める山中達貴(3年、西脇工業)。櫛部監督は「スピード力に期待していただければ」と話した。

7位、5位と目標を上方修正し、チーム状態を見て2位を目標にしたと語った櫛部監督

國學院大學「今年は勝負の年」

5年前の第31回大会で初優勝を飾った國學院大學。前田康弘監督は当時について「正直、勝つ確率は自分の中でそんなに高くないな、と思う中で『勝ってしまった』というところもあった」と振り返る。一方、今回は「勝負しにきました」と力強い。「今年は勝負の年。新チームの発足時から『3大駅伝は一戦必勝、全部取りにいこう』ということを目標に掲げてきました。ここまで大きな故障もなく、誰を外すかを考えるぐらいチームの状態はいいです」と手応えを感じている。

1区に3月の学生ハーフマラソン優勝の青木瑠郁(3年、健大高崎)、2区にスピードランナーの山本歩夢(4年、自由ケ丘)、最終6区には主将で絶対的エースの平林清澄(4年、美方)という充実な布陣。「上級生が走るのは当たり前」という考えから、前田監督はキーマンに3区の辻原輝(2年、藤沢翔陵)と4区の野中恒亨(2年、浜松工業)を挙げた。「特に辻原に関しては平林、青木と同等か、それ以上にできているので、そこがしっかり機能すればかなり面白い駅伝ができるんじゃないか。2年生2人が力を発揮できれば、非常にいい流れになる」

2019年は「勝ってしまった」が、今回は「勝ちに来た」と語った前田監督

早稲田大学、初駅伝の2人がキーマンに

早稲田大学の花田勝彦監督も「今回連れてきた8人は、8人とも非常に良くて、『誰を外そうか』というところで迷った」と語り、チームの好調具合をうかがわせた。10000m27分台のタイムを持つ石塚陽士(4年、早稲田実業)はエントリーされなかったが、1区に山口智規(3年、学法石川)、2区に主将の伊藤大志(4年、佐久長聖)とエース格を投入。「将来的には優勝争いをするチームなので、先頭を走る経験をさせたい」という思いを込めた。

キーマンには、3区を任されるルーキーの山口竣平(1年、佐久長聖)と4区の藤本進次郎(3年、清風)の名前が挙がった。「2人は早稲田の臙脂(えんじ)を背負って初のレースなので、しっかり練習したことを出してくれればと思っています」と花田監督。就任後の駅伝は5位や6位あたりが定位置となっているだけに「トップスリーやチャンスがあれば先頭争いに加わって、優勝をめざしていきたい」と意気込んだ。

チャンスがあれば先頭争いに加わり、優勝を目指したいと語った花田監督

創価大学・吉田響は2区を志願

創価大学の榎木和貴監督は冒頭、前回大会後にドーピング問題が発覚したことに触れた。「大会運営に携わる関係者の皆様方に、改めてお詫び申し上げたいと思います。また(今)大会への出場を認めてくださった主催者の方に感謝申し上げます」

チームとしては夏合宿を順調にクリアし、ベストメンバーで臨むことができていると言う。ポイントに挙げたのは、駅伝経験が豊富な2区の吉田響(4年、東海大静岡翔洋)と駅伝初出走となるアンカーの小暮栄輝(4年、樹徳)の対照的な2人だ。「吉田響に関しては、前々回は佐藤圭汰君、前回は佐藤君と黒田朝日君というエース格が走った2区で、『戦って勝ちたい』と志願してきました。そういう思いもありますので、彼の走りに期待してほしい」と力を込めた。

1区から3区でしっかりとトップを取っていきたいと語った榎木監督

大東文化大学「全員駅伝」で5位めざす

9年ぶりの出場となった大東文化大学。真名子圭監督は「補員に回ったメンバーが(悔し)涙を流すぐらい、チームは誰を使ってもいい状態」と選手層の厚さをうかがわせた。年度初めの目標に掲げた「5位」を積極的に狙うオーダーで、「前半から流れに乗っていかないと、まったく駅伝ができなくなる」という思いから、10000mでチームトップのタイムを持つ入濵輝大(3年、瓊浦)を1区に、5000mチームトップの大濱逞真(1年、仙台育英)を2区に配置。最終6区で待ち受けるエースの西川千青(4年、九州国際大付)まで「全員駅伝」で5位をめざす。

5位を目指し、怖いもの知らずでチャレンジしていきたいと語った真名子監督

in Additionあわせて読みたい