陸上・駅伝

特集:第103回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・鶴川正也が2部5000mで初優勝 出雲駅伝後、眠れない日々からの復活

ラストスパートを制して優勝を決めた青山学院大の鶴川(撮影・松﨑敏朗)

第103回 関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部5000m決勝

5月12日@国立競技場(東京)

優勝 鶴川正也(青山学院大4年)13分36秒41
2位 ダンカン・マイナ(専修大1年)13分37秒45
3位 デニス・キプルト(日本薬科大2年)13分40秒50
4位 片山祐大(亜細亜大4年)13分48秒11
5位 桑田駿介(駒澤大1年)13分49秒69
6位 ネルソン・マンデランビティ(桜美林大3年)13分53秒15
7位 小池莉希(創価大2年)13分55秒48
8位 吉田礼志(中央学院4年)13分55秒94

5月14日の関東インカレ男子2部5000m決勝で、青山学院大学の鶴川正也(4年、九州学院)が13分36秒41で初優勝を飾った。世代のトップランナーと目されてきたが、昨年の出雲駅伝の後に負傷して、念願の箱根駅伝出場を逃し、一度は競技をやめることも考えた。今回の優勝で来年の箱根駅伝に向けて大きな足がかりをつかんだ。

【特集】陸上・第103回関東インカレ

「思い描いたものを実現できた」

レースは、留学生が引っ張る形で進んだ。スタート直後、桜美林大学のネルソン・マンデランビティ(3年)がトップに立ち、麗澤大学のブライアン・キプトゥー・ブシューアキットゥ(1年)、専修大学のダンカン・マイナ(1年)が続く。その後ろから、青山学院大の野村昭夢(4年、鹿児島城西)や亜細亜大学の片川祐大(4年、報徳学園)が追いかけ、鶴川は、10番目前後につける。

最初の1000mをトップが2分45秒で通過。1600m周辺で集団が徐々に縦長になり、1000mから2000mのタイムは2分41秒をマーク。3000mを8分16秒で通過すると、鶴川は順位をあげて留学生4人の後ろに位置取った。駒澤大学の桑田駿介(1年、倉敷)と片川らも追いかける。

3800mで、鶴川はネルソンを抜かして4位に。4000mを11分3秒で通過し、ラスト1周でブライアン、ダンカン、鶴川、日本薬科大学のデニス・キプルト(2年)の4人に優勝争いが絞られた。

残り1周を切って、前を走る留学生の後ろでスパートのタイミングをうかがった(撮影・松﨑敏朗)

残り300m手前でダンカンがスパートしたが、鶴川とブライアンも食らいつく。残り100mで、アウトレーンから鶴川が追い上げてトップに立ち、そのままゴールした。レース後、鶴川は「はっきりとしたレースプランは考えていなかったが、3000m以降は、留学生の真後ろで進めることができた。完璧ではないが、思い描いたものを実現できた」と振り返った。

「1人になったところからでも、粘って走ることができたのは良かったです。関東インカレという舞台で優勝することができたのは、自信になりました。(5000mを)2本走って、両方とも13分台でベストを出して走りきることができたのは、うれしかったです」

「やめようかな」周りの励ましで思いとどまる

両腕を広げ、満面の笑みで鶴川はゴールした。

スタート前、スタンドに向かって、人さし指を立てるポーズを見せたが、内心は「絶対に勝たないといけないと思い、緊張で泣きそう」だったと、レース後に明かした。

昨年10月の出雲駅伝で最終区間を任されたが、区間7位と思い描いた結果を残せず、チームも4位にとどまった。満足のいかない走りしかできなかったことで、その後の全日本大学駅伝と箱根駅伝に向け、キャパシティーを超えたトレーニングを積んでしまった。その結果、大腿骨(だいたいこつ)を疲労骨折し、残り二つの駅伝には出場すらできなかった。「駒澤大学優勢」の下馬評を覆し、箱根駅伝でチームが優勝しても「素直に応援できなかった。そんな自分が嫌だった」と振り返る。

2023年の出雲駅伝でアンカーを務め、4位でフィニッシュした(撮影・朝日新聞社)

自分の走りから遠ざかる現状に、「やめようかな」という気持ちが頭から離れなくなり、眠れない日が続いた。しかし、家族や友人から「来年こそがんばってほしい」と声をかけられたことで思いとどまった。最上級生になったことで「後輩に自分の姿を見てもらって引っ張っていかないといけない」という意識も芽生えたという。

箱根を走るため、喜ぶのは「今日だけ」

今回の5000mで予選は7割の力で通過。その際、「決勝は攻めたレースで留学生に食らいついて優勝したい。いけるところまでついていく」と語っていた。その言葉通り、決勝では終盤まで留学生に食らいつき、ラストスパートで優勝をたぐり寄せた。

「うれしいと言うよりも、ホッとしている」。優勝後のインタビューで、鶴川は安堵(あんど)の表情を浮かべた。「やっと、チームの戦力になれるぐらいに持ってきた。やっと、自分の走りに戻った」と手応えを語った。

表彰式で専修大のダンカン・マイナと笑顔を見せた(撮影・松﨑敏朗)

鶴川が目指すのは、来年1月の箱根駅伝だ。ただ、距離は、この日のレースの約4倍。区間賞に手が届く自信も、今は持ち合わせていない。笑顔を浮かべつつも「喜ぶのは今日だけ。調子に乗らないで、明日からまた練習します」と語った。

今回の関東インカレでは、青山学院大の他の選手も活躍した。黒田朝日(3年、玉野光南)が初日の男子2部10000mで27分52秒02の自己ベストを出して3位に入ったのを皮切りに、宇田川瞬矢(3年、東農大三)が1500mで2位、ハーフマラソンでも太田蒼生(4年、大牟田)が日本人トップの2位となった。

ライバルが互いに刺激し合って、チームの力を高めていく。その相乗効果が、駅伝シーズンにどんな結果を生み出すのか。今年も、緑色のユニホームが注目を集める。

in Additionあわせて読みたい