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関学が星野兄弟なら関大には般谷(はんや)兄弟がいる LB般谷飛向と星名、いざ関関戦

近大戦でQBサックを決めた般谷飛向(左)と一緒に笑顔でサイドラインへ戻る般谷星名(6枚目以外はすべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は10月26日、東大阪市花園ラグビー場で3強対決第2弾の関関戦がある。ここまで5戦全勝の関西学院大学ファイターズには星野秀太(3年)と太吾(だいご、1年、ともに足立学園)の星野兄弟がQB(クオーターバック)の1、2番手を担って注目されている。一方、4勝1敗ながら前節で立命館大学との3強対決を制した関西大学カイザーズには、LB(ラインバッカー)の般谷(はんや)兄弟がいる。

立命戦、負傷退場の弟に兄が「あとは任せろ」

関学との戦いを前にした記者会見で、兄の般谷飛向(ひなた、4年、関大一)は「立命さんには勝利できたんですけど、次勝たないとトーナメント進出が運任せになってしまうので、リーグ1位で抜けられるように関学にも勝ちたい。個人的には高校のときに関学高等部に負けて(16-17)引退させられたので、勝利をもぎ取る気持ちでいきます」と、言葉は強くてもおだやかな表情で話した。

10月14日、背水の陣で臨んだ立命館大戦は般谷兄弟がLBのスターターに名を連ねた。弟の星名(せな、3年、関大一)が2年生の夏にDB(ディフェンスバック)からLBに転向して以降、これが最初の兄弟そろってのスタメンだった。共通の目標がかなった喜びもつかの間、相手オフェンスの3プレー目でタックルにいった弟が相手と正面衝突。その場に倒れ、しばらく動けなかった。兄はすぐに駆け寄り、ずっとそばにいた。弟は担架に乗せられて退場し、その後フィールドには戻れなかった。

立命館大戦の最初のディフェンスで、兄(奥の33番)がタックルできなかった相手を弟(43番)がタックルにいって負傷退場

弟はチームエリア内のけが人用のテントに入っていた。兄はサイドラインに戻るとそこへ行って、「あとは任せろ」と伝えた。弟は当時の記憶があいまいだが、兄のその言葉ははっきりと覚えている。兄は身長167cm、体重81kgの小さな体で必死にボールキャリアーへ食らいついた。そして第2クオーター、自陣に攻め込まれたところで相手のランプレーに対して素早く上がり、RB(ランニングバック)に低く鋭いタックルを見舞った。相手の腕からボールがこぼれ、関大の仲間がリカバー。目の覚めるようなターンオーバーを起こしてみせた。

立命館戦で弟が退場したあと、兄が低いタックルでボールをファンブルさせ(上)、関大のLB橋本(46番)が押さえた

兄が思い出す。「ボールが飛び出したのは気づいてなくて、後ろを見たら弟に代わって入った橋本が押さえてました。僕は身長が低いし体重も重くないので、低く入って鋭く刺すようなタックルをすれば自分のよさが生きると思って、ずっと意識してやってきました。しっかり刺し込むタックルができたと思います」。サイドラインで椅子に座ってフィールドを見つめていた弟は「めちゃくちゃうれしかったですし、敵をとってくれたんだなと思いました」と、笑顔で振り返った。

二人とも「底なしにいいヤツ」

小中学校のころはサッカー、高校からアメフトと、年子の二人はずっと同じ道を歩んできた。大学の経済学部も同じで、ついにアメフトのポジションまで同じになった。弟は「兄と別のことをやろうっていうのは、あんまり考えなかったです」と語る。般谷の姓は現在、全国に20人ほどしかいないそうだ。そんな珍しい名字の下に、飛向、星名とインパクトの強い名前。兄は名付けのコンセプトについて、「親しみを持って呼ばれるように、というのは親から聞いたことあります」と言った。

「同じ名字の人には会ったことがない」と兄

関大のLBといえば近年、続けて名選手を出してきた。昨年でいえば鈴木怜央(れお)と曽山天斗(たかと)だ。二人の4年生LBは関学戦でランを止めまくった。鈴木が7.5タックル、曽山は7タックルを記録し、勝利の立役者となった。兄は言う。「あの二人に届くようにと思ってやってきました。曽山さんの泥臭く、不格好でもしがみついて止めにいく姿が印象的で、憧れて尊敬してきました。僕も次の関学戦では、ボールキャリアーのどこかしらをつかんで止めたいです」

関西大LB曽山天斗 高校生にボコボコにされた未経験者が、関学戦勝利を支える存在に

その曽山さんはいま「5年生」となり、カイザーズの学生コーチをしている。曽山さんによると、般谷兄弟は二人とも「底なしにいいヤツ」なのだという。

「兄の飛向は面倒見がよくて、後輩はもちろん同期も何かと相談したくなるみたいです。僕が現役のときはプレーのことからアメフトに全然関係ないプライベートのことまで語り合う仲でした。アイツと同じポジションを争ったのは、ほんとにいい思い出です」

関学戦こそ泥臭く食らいついていく(撮影・廣田光昭)

「弟の星名は一見クールに見られがちですが、誰よりも負けず嫌いなところがあるんです。普段の練習でもうまくいかないプレーがあると、誰よりも悔しがります。筋力トレーニングのマックス測定で、前回の記録を更新できなくて泣いたって話も聞いたことがあるぐらいで。持ち味の鋭いタックルも、彼の負けん気の強さからくるプレーなんだと感じています」

「あの兄弟に共通して言えるのは、底なしにいいヤツってことです。あの二人が悪く言われてるのは、誰も聞いたことないんじゃないですか。誰からも愛され、信頼される。また兄弟で仲がいい。見ててほほえましい関係やなと思ってます」

弟は関学戦に出場可能なところまでコンディションを戻してきた

星野兄にプレッシャーをかけ続ける

名前だけでなく、人としても親しみやすい。それが般谷兄弟なのだ。そんな二人もフィールドの上では目の色を変えて戦う。関学との決戦を前に兄は「しっかりOL(オフェンスライン)のブロックをさばいて、RBまで到達したいです。QBの星野兄にはディフェンス全体としてプレッシャーをかけ続けて勝負します」と語る。弟は「今年は最後まで勝って兄を送り出したいです」と言った。

33番の兄、43番の弟。小さな般谷兄弟が、やられてもやられても関学オフェンスに立ち向かっていく。その先にこそ2年連続の関学撃破があると信じて。

ほほえましいほど仲のいい般谷兄弟がカイザーズディフェンスを支える

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