青山学院大ルーキー・安島莉玖が世田谷ハーフ優勝「箱根駅伝は8区を走り2連覇を」
第19回世田谷246ハーフマラソン
11月10日@駒沢オリンピック公園陸上競技場を発着とする21.0975km
優勝 安島莉玖(青山学院大1年) 1時間02分55秒
2位 平松享祐(青山学院大2年) 1時間02分57秒
3位 中村海斗(青山学院大2年) 1時間02分58秒
4位 佐藤愛斗(青山学院大1年) 1時間03分07秒
5位 本間創(青山学院大2年) 1時間03分11秒
6位 安澤駿空(法政大4年) 1時間03分17秒
7位 小河原陽琉(青山学院大1年)1時間03分21秒
8位 清水郁杜(法政大3年) 1時間03分21秒
11月10日にあった第19回世田谷246ハーフマラソンで、青山学院大のルーキー・安島(あんじま)莉玖(1年、大垣日大)が優勝した。全日本大学駅伝にエントリーされながらも、けがで回避した安島。箱根駅伝での快走を誓った。
ラスト勝負に競り勝ち「練習の成果が出た」
このレースは例年、青山学院大にとって箱根駅伝メンバー選考にもかかわる重要なレースとなっている。エントリーにはキャプテンの田中悠登(4年、敦賀気比)の名前もあったが、この日出走したのは、1・2年の下級生たちだった。安島は自身初のハーフマラソンながら、終始先頭付近でレースをすすめ、ラストのトラックで平松享祐(2年、中部大一)と中村海斗(2年、世羅)を振り切り、優勝を飾った。
安島は高校2年時に全国高校駅伝に出場し、エース区間の1区で区間10位。都道府県対抗男子駅伝でも岐阜県代表として高2、3年時に出走し、前回は1区区間3位と好成績を残している。
11月の全日本大学駅伝ではエントリーメンバーに入っていたが、出走はかなわず。実は5区を走る予定だったが、大会の5日前に右のハムストリングスに張りを感じた。「ここで走ったらチームに迷惑がかかる」と考え、自ら申し出てメンバーから外れた。「チームの勝利のためには、自分の走りたい気持ちを抑えなければと思いました」。そこからは少し休み、このレースに合わせてきた。
安島にとって初めてのハーフマラソン。高校でロードを走ったのは10kmまでだ。5km以上になると乳酸がたまってくるタイミングがあり、その時に無理に粘ろうとして動きを速くしたり、ペースを維持したりするのではなく、あえて楽をして乳酸を処理して次につなげる……ということを高校時代から心がけて走ってきたといい、今回も高校時代の経験を生かしてハーフを走りきった。
常に先頭付近でレースを進めていたが、「心臓破りの坂」でトップに出て、後ろを引き離した。しかしその後佐藤愛斗(1年、小林)に前に出られ、30mほど差をつけられてしまった。「そこでもう無理かなと思ったんですけど、そこからもう一度坂があったので切り替えて、差を詰めることができました」
ラスト勝負に競り勝ったことについてたずねると「大学に入ってジョギングのあとに流しをやるようになりました。自分はスピードが出ないんですけど、しっかりきつい中で動かすことを意識してやってきたので、その練習の成果が出たかなと思います」と手応えを語る。ハーフの距離は「苦しかったけど、意外とあっという間でした」といい、「これで5000m、10000mが楽に感じるのかなというのもあります」と大物ぶりものぞかせる。
「つらさ100%」だったここまで、同期と切磋琢磨して
大学に入ってここまで半年間を振り返ってどうでしたか。そう聞かれると安島は「つらいことが100%ぐらいでした」と驚きの答えを返した。5000mの自己ベストを更新しているが、「高校の延長で出したタイム」だといい、自分の走りを見失っていたと話す。高校まで実家暮らしで、学校も近く、「楽をして強くなってきた」と言う。
大学に入って初めての寮生活となり、1年生の仕事もあり、ずっと張り詰めた空気の中で過ごす状態が「すごく大変でした」。「楽をして強くなってきた分、すごくいろんなことを徹底している環境に入って、そのギャップが大きかったです」。そんな中でも同期で切磋琢磨(せっさたくま)し合い、夏合宿などのきつい練習を乗り越えてきた。
安島が走れなかった全日本大学駅伝では、同期の折田壮太(1年、須磨学園)が主要区間の3区で駅伝デビューし、区間5位の好走。「重圧もあったと思いますけど、そこに打ち勝ってスタートラインに立ったところが、同期として尊敬できると思います」と同期の健闘をたたえつつ、「次は自分が」という思いはしっかりと持っている。「直前にけがして自信がない中で、しっかり今回はまとめられて、(つらいが100%だったけど)うれしいが2ぐらいはできたかなと思います」と今回の結果で少し自信も持てたと話す。
下田さんのように、優勝を決定づける独走を
安島が箱根駅伝で走りたい区間は復路の8区だという。思わず、往路ではない理由についてたずねると「湘南の広くて長い道路を、富士山をバックにして走ってみたいと思います」というのが、まず1つ目の理由。そして「自分が初めて箱根駅伝を見たのが、(2018年の第94回大会で)青学が4連覇した年なんです。下田(裕太、現・GMOアスリーツ)さんの走りで優勝を決定づけたというのが本当に印象に残っているので、自分も8区を走りたいなという思いがあります」と2つ目の理由を明かした。
このあとは23日にMARCH対抗戦も控える。「そこでしっかり外さないようにして、絶対に合宿メンバーに入って、(箱根のメンバー争いに)絡んでいきたいと思っています。そして箱根駅伝では復路で独走して、しっかり2連覇を決められる走りができるように頑張ります」
箱根駅伝で無類の強さを誇る青山学院大に、また新たな戦力が名乗りを上げた形になった。1月3日、湘南の海を背に走る安島の姿が見られるだろうか。