優勝決定戦を制した早稲田大学 連敗を喫した早慶戦から〝初心〟に帰る練習で立て直し
東京六大学野球2024秋季リーグ戦 優勝決定戦
11月13日@明治神宮野球場(東京)
早稲田大学 4-0 明治大学
(早稲田大は2季連続48回目の優勝)
東京六大学野球秋季リーグ戦は、勝ち点(4)と勝率(7割2分7厘)で並んでいた早稲田大学と明治大学による優勝決定戦が12日に行われ、早稲田大が4-0で明治大を下し、2季連続48回目の優勝を果たした。早稲田大は9、10日の早慶戦で1勝すれば優勝が決まったが、連敗。印出太一主将(4年、中京大中京)は、11日に初心に帰るような練習を積めたことが、連覇につながった面もあると振り返った。
伊藤樹が3安打完封、早慶戦から切り替え
大一番で「投」の主役は、エースの伊藤樹(3年、仙台育英)だった。リーグ通算で118安打を積み上げ、10月のプロ野球ドラフト会議で東北楽天ゴールデンイーグルスから1位指名を受けた宗山塁(4年、広陵)との注目対決。一回2死走者なしで訪れた1度目、初球は111キロのカーブだった。宗山のバットは動かず、見逃し。2球で追い込み、最後は沈む変化球で二ゴロに仕留めた。
「打席から離れて立ったり、詰めたりという工夫をしていたので、そういった狙いをこちらがなるべく外していこうというところと、強いボールを投げることが大事かなと思っていたので、真っすぐとカーブの緩急をつけながら投げることを大事にしていました」と伊藤樹。持ち前の観察眼がさえ、宗山を3打数無安打に抑え込んだ。三回までは相手走者を一人も許さないパーフェクト投球。四回に、この試合を通じて初めてとなる先頭打者の出塁を許したが、印出が盗塁を阻止して、3人で攻撃を終わらせた。伊藤樹は最後まで投げきり、被安打3、115球で完封した。
早慶戦では9日の1回戦に先発し、相手の4番打者・清原正吾(4年、慶應)にソロ本塁打を浴びるなど、7回5失点。「ここまで6勝を挙げて、いいピッチングが続いた中で、ここでこういうピッチングを出しちゃうんだな……」という悔しさが募った。ただ優勝の可能性が消えたわけではなく、雪辱を果たす機会はまだあったから「その日の夜には『もう1回チャンスがあるから、そこで投げきろう』と切り替えられました」。大一番では、気持ちを入れすぎず、冷静なメンタルを保てたことが好投につながった。
「最初と最後ぐらいは、いい練習しようぜ」
連敗を喫して勝ち点を落とした早慶戦では、伊藤樹が本来の持ち味を発揮できなかっただけでなく、野手陣にもミスが出たり、不運な内野安打があったりと、チームとして流れを引き寄せられなかった。中1日で優勝決定戦を迎えるにあたって、印出主将は「月曜日(11日)に4年生を中心にすごくいい練習ができた。体を動かしながら、気持ちをリセットして向かっていった結果が、こういった試合につながったと思う」と語った。
この1年間、早稲田大は選手だけでなく、スタッフを含めた全員が「優勝する資格があるチーム」を目指して「グラウンド内での全力疾走や掛け声に対するアンサーといった、誰でもできること」(印出)を大事にしてきた。くしくも、ちょうど1年前の2023年11月11日は、現チームが発足した日。「新チームでそういうスタートを切って、土台を築いて、実戦に入ったことで春は優勝できた。秋はだんだん目の前に優勝がちらついてきた中で、どこか浮足立っているというか、一番大事にしてきたことが、あやふやになっていた部分もあったと思います。自分も指摘しきれていないというか、流してしまった部分もあったと思う」と印出。副将を務める吉納翼(4年、東邦)は「新チームスタートのときは、日本一になれるチームの練習をしてた。最初と最後ぐらいは、いい練習しようぜ」という声かけがあったと明かす。
優勝決定戦で攻撃の口火を切ったのは、この二人だった。二回無死、印出がチーム初安打となる右前打で出塁すると、1死二、三塁から中村敢晴(4年、筑陽学園)の左前適時打で先制のホームを踏んだ。吉納は五回1死、右越え二塁打を放ってチャンスを作り、連続四球で満塁となった後、小澤周平(3年、健大高崎)の左中間を破る2点二塁打を呼び込んだ。
小宮山悟監督「彼らのことを誇りに思います」
投打がかみ合っての快勝に小宮山悟監督は「印出の言葉を借りれば、土日のみっともない試合から反省して、『どうすれば勝てるだろう』と選手がいろいろと知恵を絞ってくれた。満点をあげていいぐらいの試合ができましたので、彼らのことを誇りに思います」と最大の賛辞を贈った。優勝する資格があるチームという目標については、「本当に資格があるかどうかは、神宮大会で優勝できるかどうか。『最後の試合が完成形』と言い続けてますので、神宮大会での最後の試合が完成形になります」。
6月の全日本大学野球選手権では青山学院大学に決勝で敗れただけに、20日に開幕する明治神宮大会は、リベンジの舞台でもある。早稲田大の登場は23日で、優勝までの道のりは3連戦。青山学院大とともに勝ち進めば、決勝で再び相まみえることとなる。