箱根駅伝上位進出へ、中央大学がMARCH対抗戦で手応え 藤原正和監督「いい兆し」
MARCH対抗戦2024 10000m4組目
11月23日@町田GIONスタジアム(東京)
1位 鶴川正也(青山学院大4年)27分43秒33
2位 吉居駿恭(中央大3年)27分44秒48
3位 本間颯(中央大2年)27分46秒60
4位 黒田朝日(青山学院大3年)27分49秒60
5位 若林宏樹(青山学院大4年)27分59秒53
6位 岡田開成(中央大1年)28分08秒51
7位 白石光星(青山学院大4年)28分21秒57
8位 藤田大智(中央大2年) 28分29秒98
今年で4回目となったMARCH対抗戦が11月23日、東京都町田市の町田GIONスタジアムで行われ、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の選手たちが10000mで競った。最も速いペース設定で行われた最終4組目で中央大の吉居駿恭(3年、仙台育英)がトップと1秒15差の27分44秒48で2位に入り、中央大記録も更新。約1カ月後に控えた箱根駅伝でエースとしての働きが期待される中、「まだ(箱根に向けて)調整なしでやってきて、箱根の苦しいところをイメージしてしっかり粘ることを意識して走った。思ったより終盤まで余裕を持って走ることができた」と振り返った。上位10人の合計タイムで争われる総合優勝は中央大だった。
吉居駿恭と本間颯が27分台に突入
最終組には実力者がずらり。吉居のほか、青山学院大からは今季の出雲駅伝1区、全日本大学駅伝2区で連続区間賞の鶴川正也(4年、九州学院)、今年の箱根駅伝2区で区間賞を獲得した黒田朝日(3年、玉野光南)らがエントリーした。レース序盤はペースメーカー(PM)のアレックス・キプチルチル(コモディイイダ)が引っ張り、その後ろに黒田や青山学院大の若林宏樹(4年、洛南)、立教大の林虎大朗(4年、大牟田)、馬場賢人(3年、大牟田)らが続いた。
吉居は10番手前後につけ、1000m通過は2分44秒のハイペースに。その後、青山学院大5人、中央大4人、PM合わせて計10人の先頭集団となり、5000mの通過は14分1秒。PMが外れて中央大の本間颯(2年、埼玉栄)が抜け出したが、7000m付近で集団に吸収された。黒田が先頭を引っ張る中、残り2周で先頭争いは黒田、本間、吉居、鶴川の4人に絞られた。残り200mで吉居がスパートをかけるも、ついてきたのは鶴川。吉居は最後の直線で鶴川にかわされて2着だった。「本当は(早めに)仕掛けないといけなかった。タイムはいいんですけど、目的通りの走りはできなかった」。ただ、言葉とは裏腹に悲壮感は感じられず、レース直後は決意に満ちた表情が印象的だった。
意識が変わるきっかけとなった全日本での惨敗
チームの大黒柱だった2学年上の兄・大和(現・トヨタ自動車)が卒業し、今季は藤原正和監督からエースの走りを期待されていた。駅伝初戦となった11月の全日本大学駅伝には各校の「顔」が並ぶ7区へ配置。國學院大學の平林清澄(4年、美方)、駒澤大学の篠原倖太朗(4年、富里)、青山学院大の太田蒼生(4年、大牟田)らとも十分に渡り合える走力は持っているはずだった。しかし、結果は「調整を合わせることができなかった」と区間14位。襷(たすき)を受け取った時点ではシード圏内の8位だったが、順位を三つ落とした。最終的にチームは12位。シード権を逃した。
全日本での結果は吉居をはじめ、選手の意識を変えるきっかけになった。吉居は「(全日本後は)落ち込んだというのはなかったが、がっつりやられたレースだった。チームとしてトラックシーズンは目立つことはできたが、駅伝に対する気持ちや取り組みはまだまだということに気付けた」。全日本の2週間前にあった箱根駅伝予選会は主力が出走せず。伊勢路はほぼベストメンバーで臨んだが、力のある1区の溜池一太(3年、洛南)が区間20位、8区の阿部陽樹(4年、西京)が区間18位などと軒並み崩れた。藤原監督はこの現状に危機感を感じたといい、「全日本後に4年生中心に少し厳しい言葉をかけた。『4年生たちが甘いからこういう成績と現状になっている。奮起してくれないと良くならないぞ』と」
それは4年生だけではなく主力メンバーの吉居の心にも響いた。「強ければ冷静、スマートなチームとしてとらえられるが、少し冷めているというか。自分もそこに甘えていたのかなと思う」
気持ちを強く持って、泥臭く
全日本の惨敗を経て、足りないものが明確になった。それは「気持ちを強く持って、泥臭くやっていく」こと。その意識はMARCH対抗戦で吉居以外の選手からも見られた。28分43秒30で2組目トップになった阿部は「自分で仕掛けるところで前に立ってトップを取ろうと思っていた」。3組目はルーキーが躍動した。田原琥太郎(西条農業)が最後までもつれた接戦を勝ちきり、28分33秒54をマーク。箱根駅伝予選会と全日本でメンバー外だった田原は「他の1年生がレースでも練習でもすごい走りを示してくれているので、自分も追いつかないといけない。尊敬はしているけれども、これからは勝っていかないといけない」と力強い。総合成績でも第1回大会から3連覇中だった青山学院大をおさえ、初優勝を果たした。
藤原監督は手応えをつかんでいる。「ようやく選手がそろってきた。箱根に向けていい兆しかなと思う」とした上で、吉居に対しては「今年結果が出なかったのはエースが走れていなかったから。これくらい走ってくれたら心配ない」とねぎらった。吉居は箱根に向けて「背中で引っ張って、声もかけて、チームを盛り上げていけるような取り組みをしていきたい」。箱根路で逆襲へ。隠れがちだった熱い気持ちを前面に出して、上位進出を狙う。