ラグビー

特集:縦と横のコントラスト 第100回早明戦

100回目の早明戦は早稲田大に軍配 服部亮太と萩井耀司の1年生司令塔対決第1章

早明戦で明治大学を破り、対抗戦で全勝優勝を飾った早稲田大学(すべて撮影・斉藤健仁)

12月1日、関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、早稲田大学対明治大学の「早明戦」が行われた。節目の100回目を迎えた今年は、早稲田大が開幕から6戦全勝、明治大が5勝1敗と優勝がかかった大一番となった。「早明戦」としては国立競技場が新しくなってから最多となる4万544人のファンが集った。

山中亮平vs. 田村優以来、17年ぶり

試合の序盤は明治大が優勢に進めたが、早稲田大が先制すると、その後はシーソーゲームに。後半39分に明治大がトライを挙げて3点差に迫ったが早稲田大が粘りのディフェンスを見せてノーサイド。早稲田大が27-24で勝利し、6年ぶり24度目の対抗戦優勝を飾った。なお、早稲田大は日本一に輝いた2007年以来17年ぶりの全勝優勝となった。両校の通算成績は56勝42敗2分となった。

100回目の「早明戦」で最もファンの耳目を集めたのは、〝1年生10番対決〟だった。両校ともにスタンドオフに1年生が先発するのは、早稲田大のSO山中亮平(現・コベルコ神戸スティーラーズ)と明治大のSO田村優(現・横浜キヤノンイーグルス)の2人以来、実に17年ぶりのことだった。

早明戦の試合前、校歌を歌う早稲田大・服部(左)と明治大・萩井

服部のロングキックに萩井のハイパントで対抗

アカクロジャージーの10番は、1年生ながら対抗戦2戦目から先発を続ける服部亮太(佐賀工業)で、ロングキックを武器に司令塔として出色の出来を見せていた。紫紺のジャージーの10番は、U20日本代表で活躍した2年生のSO伊藤龍之介(國學院栃木)ではなく、開幕戦以来の先発となった1年生のSO萩井耀司(桐蔭学園)が抜擢(ばってき)された。

萩井本人も「先発でビックリした!」と話していたが、明治大は先週のジュニア選手権の1位・2位を決める帝京大との試合(○29-26)で出来が良かったことと、早稲田大のロングキッカー服部に対して、萩井が得意なキックによるゲームコントロールに期待しての起用となった。

明治大のプランとしては、ハイパントキックを早稲田大のSO服部、そして日本代表FB矢崎由高(2年、桐蔭学園)にキャッチさせてプレッシャーをかけ、ロングキックを蹴らせない、カウンターアタックをさせないというものだった。

服部(上写真)と萩井(下写真)は高校日本代表でチームメートだった。先発対決が決まってからLINEでやりとりしたという

明治監督は及第点「萩井はゲームを作ってくれた」

試合開始早々、明治大はSO萩井のハイパントキックを起点にターンオーバーし、チャンスにつなげるなど入りも良かった。「前半、自分の思っているように運べた。ヘッドコーチから(後半の)早くに交代すると言われていたので、それまでゲームコントロールできればと思っていた。前半(10-12と)負けて折り返したが、流れ的には良かったかな」(萩井)

明治大の神鳥裕之監督は「(萩井は)よくやっていた。自分の役割をしっかり遂行して、求められる期待に応えてくれた。彼が出ている時間はゲームを作ってくれた」と及第点を与えた。

早稲田監督「服部はミスもあったが、伸びしろがある」

一方、2度目の80分フル出場を果たし、ロングキックでチームを勝利に導いた服部だが、「ハイパントキックを落とす位置や蹴るタイミングはあまり良くなかった。ゲームを組み立てることで僕自身、うまくいかなかったので、納得いかない部分があった。修正して大学選手権までに良い準備をしていきたい」と反省しきりだった。

高校、大学、そしてスタンドオフの先輩でもある早稲田大の大田尾竜彦監督は「(服部は)ダイレクトキックやペナルティーからのノータッチキックもあったが、それでも彼のキックが効いたと思う。試合が終わったとき複雑な表情をしていたが、どう自分の次のパフォーマンスにつなげるか。まだまだ伸びしろがある」とさらなる成長に期待を寄せた。

試合中にも笑顔を見せる服部

4万人の観衆の中、グラウンドで会話も

明治の萩井、早稲田の服部とともに初めての「早明戦」、そして初めての国立競技場でのプレーだった。

「最初は緊張していたが、終わったら楽しかった! 4万人の観客の前で試合ができたことはすごくプラスに捉えていますし、これ以上の経験ができるかと考えたら、それはわからないので、この緊張感は次の試合でも生かせるかな」(SO萩井)

「観客の多さなど『早慶戦』と違った雰囲気があり、もっと緊張感があって、自分が(本来)出せる力があまり出せなかったかな。(国立競技場は)他と違って、観客席とグラウンドが遠かったり、芝生の部分が長かったりとやりにくかったです」(服部)

高校日本代表でチームメートとなり、プライベートで親交のある2人は、互いに先発が決まってからLINEでやりとりしたという。

早稲田SO服部は、「(明治SO萩井が)裏のキックとハイパントを狙っていたので、『気を抜いたらやられる』と思って集中してやっていました」と言えば、明治SO萩井は「こんな大きな舞台で、仲良い(服部)亮太と対面で試合できたことは良かったし、(試合中に)『いいキック蹴るね』『次に何してくるの?』と、お互いに話をできたことも楽しかった!」と破顔した。

後半終了間際、服部らが明治の選手をボールと共に押しだし、ノーサイドを迎えた

勝ち進めば大学選手権決勝で2人の再対決も

萩井、服部ともに1年生であり、2人の大学ラグビーの物語は、まだ始まったばかりだ。大学2年、3年、そして4年生でもきっと「早明戦」で対戦するはずだ。両校が勝ち進めば、今年度の大学選手権の決勝で再び相対する可能性もある。

対抗戦1位となった早稲田大はシードとなり、大学選手権は12月21日の準々決勝からの参戦(近畿大と福岡工業大の勝者と対戦)となる。一方、対抗戦3位となった明治大は12月14日、3回戦で東海大(関東リーグ戦3位)と激突する。

明治SO萩井は「練習で精度を詰めたらもっとできたかな。まず次の試合に向けて準備して、10番として勝ちに導けるように頑張っていきたい」と言えば、早稲田SO服部は「課題を修正して、大学選手権に向けてしっかり準備していこうと思います」と意気込んだ。

服部、萩井ともに1年生ながら臙脂(えんじ)、紫紺の司令塔として、初の大学選手権でも10番として躍動しチームの勝利に貢献する。

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