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特集:第76回全日本大学バスケ選手権

早大・江頭璃梨 江村優有が不在で苦しい心境の中、支えてくれたのは頼もしい後輩たち

江村優有が不在の中、チームをまとめた早稲田大の江頭璃梨(すべて撮影・井上翔太)

第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 女子準々決勝

12月6日@国立代々木競技場第二体育館(東京)
東京医療保健大学 100-91 早稲田大学

【写真】女子は8日、男子は15日に決勝!大学日本一の座は? バスケインカレ特集

第3クオーター(Q)の連続得点で一時は逆転に成功し、前回の準優勝チームを追い詰めた。12月6日にあった第76回全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)の女子準々決勝。早稲田大学は東京医療保健大学と点を取り合い、最終的なスコアは91-100。今大会の主将を務めた江頭璃梨(りり、4年、小林)は「後輩たちは本当に最高の仲間」と感謝の言葉を口にした。

第3Qに怒濤の追い上げで、一時逆転に成功

序盤は東京医療保健大がリードを保った。身長187cmのセンター、ジュフ・ハディジャトゥ(1年、岐阜女子)にボールを集め、ゴール下から連続得点。時にバスケットカウントも獲得した。ただ、早稲田大も菊地実蘭(2年、桜花学園)が3ポイントを決めるなど、食い下がる。シックスマンの役割を担う江頭は、第1Qの途中でセンターと代わって登場。20-22で第1Qを終え、第2Q終了時点では53-61と8点差がついていた。

シックスマンとして第1Q途中から出場した

第3Qで早稲田が怒濤(どとう)の追い上げを見せた。最大10点差がついたところから、菊地や山宮好葉(2年、東京成徳大高)が3ポイントを成功させ、さらに山宮の個人技もさえた。71-72と1点差に迫ったところで、西ファトゥマ七南(3年、昭和学院)が3ポイントを沈める。ついにこの試合で初めてリードを奪った。

西は今年、3x3の世代別代表に選ばれ、国際舞台を経験した。江頭によると、そこから西のプレースタイルが劇的に変化したと言う。「そこで自信をつかんだのかは分からないんですけど、今まではもっと下を向いて、楽しくなさそうにプレーしていたんです。点数もあまり取りにいかないタイプだったけど、すごく変わった。あの子が試合の流れを変えてくれたし、ずっとつないでくれた。期待のプレーヤーです」

早稲田のオフェンスは戦術をガチガチに組まないことが、特徴の一つだ。相手のディフェンスと1対1で勝負し、抜き去った後は選手一人ひとりの特徴に合わせたオフェンスを展開する。関東1部の上位チームがシステマティックな動きをするのとは、対照的でもある。ただそれは「点は取れるけど、負けるときはそれ以上に取られる」という側面もある。76-75で最終第4Qを迎え、一時はリードを5点に広げた場面もあったが、最後は東京医療保健大の地力に屈した。

タイムアウト時、笑顔でチームメートを出迎える

新人インカレ優勝後、チームを引き締め

今季のチームは下級生が多い。この日のスタート5人は全員が3年生以下で、コートに立った4年生は江頭とセンターの中野雛菜(4年、東海大相模)のみ。チームの大黒柱で本来は主将の江村優有(4年、桜花学園)は5月、パリオリンピックをめざした3x3のオーストリア戦で左ひざを負傷。今季の復帰が難しいほどの大ケガで、秋の関東リーグ戦だけでなく、インカレもベンチから外れていた。

江村がいない中で、どうチームを作るのか。江頭は「プレーができない分、外からたくさん声をかけてくれた。練習中もわざわざ止めて伝えてくれたり、アジャストのときも積極的に発言してくれたりする。彼女が持つ知識を教えてくれて、それを聞いた自分や選手がコートで表現する。役割を明確に決めたわけではないんですけど、自然とそういうチームになった1年間でした」と話す。

チームは今夏、1、2年生で構成する第2回全日本大学バスケットボール新人戦(新人インカレ)で優勝を果たした。チームが勢いづく一方、1、2年生には「これで日本一になれるんだ」という雰囲気もあり、「このレベルでは最後のインカレで優勝できないよ」と引き締めたのも江村をはじめとした4年生だった。「新人インカレ優勝はすごいことだし、自信にもつながる。けど『日本一のレベルはもっと上』ということを伝えたかったんです」

数少ない4年生として、仲間に声をかけることも多い

「自分がやらなきゃ」と背負いすぎていた

江村が抜けてから、江頭個人としては悩みもあった。「たぶん『4年生の自分がやらなきゃ』と背負いすぎていたんだと思います」。誰よりもハードワークを怠らず、ルーズボールやリバウンドに飛び込んだり、ディフェンスを頑張ったりといった「誰でもできることを強気に」こそが江頭の信条。しかし、関東リーグ戦ではなりを潜め、当初こそスタートで起用されていたものの、リーグ中盤から途中スタートとなった。「スタートを外れたときも『やばい、やばい。試合で示さなきゃいけないのに』と。自分にプレッシャーをかけてしまって、逆に思い切りプレーできなくて……。自分の弱さです」

「誰でもできることを強気に」こそが江頭の信条だ

苦しい心境の中で支えになってくれたのは、後輩たちだった。落ち込んでる時期に「それでも頑張るリリさんを私は見ているから」と声をかけてくれたり、励ましのメッセージをLINEや手紙でくれたりした。「もう嫌だって投げ出しそうになったときでも、そういうことを言われると『いや、やらなきゃ』と。気持ちをつないでくれたのは後輩たちでした」

試合が終わると、後輩や同期一人ひとりと言葉をかわし、ハグをする姿も見られた。大西真由監督からねぎらわれたときだけは、目頭を押さえた。「苦しい時間の方が多かったけど、頑張ってきて良かったと思いました」。5分弱のプレータイムだったが、その分、全力で応援してチームをもり立てた江頭。自分たちが目指した〝日本一〟の夢は、頼もしい後輩たちに託す。

頼もしい後輩たちに日本一の夢を託す

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