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特集:第76回全日本大学バスケ選手権

筑波大・浅井英矢 4年生で唯一、コートに立った最終戦 壁ぶつかり考え続けた4年間

神奈川大戦、4年生で唯一試合に出場した筑波大の浅井英矢(すべて撮影・井上翔太)

第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 男子2回戦

12月5日@横浜武道館(神奈川)
神奈川大学 81-69 筑波大学

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12月5日にあった第76回全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)男子2回戦で、前回大会3位の筑波大学は69-81で神奈川大学に敗れた。チームを長年率いた吉田健司監督にとって最後のインカレ。花道を飾ることはできず、思うようにいかないことが多かった今シーズンを象徴しているようだった。

14点ビハインドで前半終了、第3Qに一時追いつく

ベスト8進出をかけた顔合わせの中で、秋の関東リーグ8位の筑波大と7位の神奈川大は屈指の好カードだった。秋季リーグでは神奈川大の2戦2勝。2戦目はわずか2点差での決着だった。

ただ、この日を迎えるにあたり、筑波大には不安要素が多かった。主将の浅井英矢(4年、北筑)がインカレ1週間前の練習試合で右足をひねり、捻挫と診断されて、骨にヒビが入っていることも判明した。前日の山梨学院大学戦は「前半後半5分ずつ」(吉田監督)というプレータイムの制限を設け、神奈川大戦は「クオーター(Q)ごと5分ずつで、最大20分」。同じく4年生の間山柊(福岡大大濠)もインカレ直前に離脱。スタンドにも姿はなく、タイムアウト中はベンチを外れたチームメートたちが間山の背番号「19」が書かれた紙を掲げて応援する一幕もあった。

タイムアウト中「19」を掲げて仲間を後押し

コートに立てる主力の4年生が浅井だけという苦境の中、試合は神奈川大ペースで進んだ。主将の保坂晃毅(4年、飛龍)の勢いが止まらず、リバウンドも長谷川比源(1年、横浜清風)や阿部千寛(4年、美原)が絡む。26-40で試合を折り返した。

筑波大が意地を見せたのは、第3Qだった。浅井はシュートブロックに遭うなど、本来のパフォーマンスを十分に出せていない様子だったが、入学直後からケガに泣いてきた星川開聖(2年、洛南)が攻めた。前半終了時点の14点差がみるみると縮まり、筑波大の3ポイントが決まって同点に。ただ、スコアをひっくり返すまでにはいたらず、ファウルで与えたフリースローから再びリードを許す展開となった。

吉田監督が「同点になって、あそこでフワッとなっちゃったかな。第4Qが始まって、また気持ちは付いてきていたけど、やっぱり向こうの方が地力は上。その中で選手たちは頑張ったと思います」と総括すれば、浅井は「後半になって自分たちのバスケットをする中で追いつけたけど、力の差が出て離されてしまった。そこは来年に向けて頑張ってほしい」と後輩たちへの期待を口にした。

果敢に3ポイントを狙う場面もあった浅井

ハドルでの声かけを今まで以上に意識

試合後の控室。インカレで最後の指揮を執り終えた吉田監督は、ミーティングで選手たちに「今年はいろいろあったなぁ」と語りかけたという。その上で「4年生だけの問題じゃないし、3年生以下もこの1年間にあったことに対して反省して、来年以降に生かしていこう」と告げた。チームにとっては、本当にいろいろあったシーズンだった。

大きな出来事として挙げられるのは、ポイントガード小川敦也のB1宇都宮ブレックス加入だろう。3位となった前回のインカレでは、3年生で優秀選手賞とアシスト王、そして最もインパクトを残した選手に贈られる「MIP賞」を受賞した。

チームとして快くプロに送り出した一方、今シーズンの筑波大をまとめるリーダーシップには課題を残した。「キャプテンシーやチームビルディングというところで、最初はすごく悩んだ。リーダーシップを取れるのって、一番はガードなんですよね。ボールを一番最初に持って指示したり、ディフェンスも最初にやったりするので」と吉田監督。主将の浅井はパワーフォワード。197cmの長身を生かし、スクリーンやリバウンドなどへの期待が高いポジションだ。「4番(パワーフォワード)や5番(センター)の選手がリーダーシップを取りたくても、ボールが来ない限りプレーできないから、『頑張ろう』とか単発的な言葉しか出てこなくなるので、そういう意味で難しい」と吉田監督は言う。

最後のインカレ指揮を終え、両手を挙げてスタンドにあいさつする吉田監督

浅井自身もその課題を感じていた。「シーズン序盤から、そこがうまくいってないことは浮き彫りになっていました。その分、3年生に頼る部分が多くなってしまって……」。試合をコントロールできない分、ハドルで積極的に声をかけた。「3年生まではコートでの声かけやコミュニケーションもあまりできていなかった」と浅井。主将になったことで意識できるようになったのは、成長の一つだろう。

今回の悔しさを忘れず、次なる舞台で

吉田監督のラストシーズンということ自体にはプレッシャーを感じていなかったが、秋季リーグを7勝15敗で終えるなど、勝てていないことに浅井は責任を感じていた。「吉田先生は、筑波大学をここまで引っ張り上げてくださった方。こういう最後になってしまったのは、本当に申し訳ないと思っています」

浅井は大学を卒業した後も、バスケ選手としてのキャリアが続く。今までのバスケ人生で、こんなに壁にぶつかって、乗り越えるためにここまで考えたことはなかったという。今回の悔しさを次なる舞台にぶつけてほしい。

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