箱根駅伝77年連続の日本体育大学 3年生「三本柱」と4年生の粘りでシード権獲得を
第101回箱根駅伝に77年連続で出場する日本体育大学が12月12日、横浜市内の健志台キャンパス内で共同記者会見を開催した。玉城良二監督をはじめ、キャプテンの分須尊紀(4年、東農大二)、主力の山崎丞(3年、中越)らが出席し、大会への意気込みを語った。
1区でリベンジ期す平島龍斗「自分の力をすべて出し切る」
今年度の目標は7年ぶりのシード権を獲得し、総合6位以内に入ることだ。4位で通過した10月の箱根予選会以降、チームは順調に仕上がっている。11月の全日本大学駅伝は後半までシード圏内でレースを進めて、10位でフィニッシュ。玉城監督は箱根駅伝を見据えて、「前半で流れをつくれば、戦えることが分かりました」と手応えを得ていた。そのカギを握る三本柱の平島龍斗(3年、相洋)、山崎、田島駿介(3年、旭野)は、12月1日の記録会でいずれも10000mの自己ベストを更新するなど、状態は上向いている。
「往路に選手を並べるとき、28分台前半の選手が3人いると、いないでは違います。他のメンバーたちの気持ちも変わってきますので。タイムを持っている3年生の3人で流れをつくり、力をつけてきた4年生が粘っていく展開になると思います」と玉城監督は語る。
11月の全日本大学駅伝で1区区間賞の平島は、箱根路でもスターターに名乗りを上げる。前回大会は、力みと緊張から、持っている実力を出し切れずに区間最下位。1年目の反省を踏まえて、2年目は気負わずに臨むことを誓う。
「まず自分の力をすべて出し切ることを考えたいです。全日本もそれで結果がついてきましたから。僕は力が入ってしまうとダメなタイプ」
箱根前に10000mで28分20秒32の自己記録をマークしたことも安心材料となる。上位陣の10km通過タイムを確認し、1年前のように焦る必要もない。
「今年度は気持ちを落ち着けて挑めそうです。前回の1区を見直しながら、ハイペースになっても、スローペースになっても、対応できるように準備してきました。個人目標は区間一桁ですが、まずは集団から遅れずに襷(たすき)をつなぎたいです」
山崎丞「状態を確認するレース」で好タイム
自信満々で「花の2区」に備えているのは、エースの自覚を強く持つ山崎。12月には28分19秒33を出したが、当然とばかりに笑みを浮かべていた。
「記録を狙いにいったわけではなく、状態を確認するレースで出たタイムです。27分台もいけるかな、と思いました。練習を積み重ねてきた結果だと思います」
大学3年目は充実したシーズンを過ごしている。前回大会は5区で準備しながらインフルエンザで欠場。今年度は生活面から心を入れ替えて、陸上競技に打ち込んできた。予選会ではチーム内トップで出場権の獲得に大きく貢献し、全日本大学駅伝の2区でも区間8位としっかりまとめた。箱根路では謙虚な気持ちを持ち、エースらしい働きを見せると誓う。
「区間タイムは1時間7分30秒以内を目指し、日本人3位以内を狙うつもりです」
すでにコースも把握。難所と言われる13km付近の権太坂も、そこまで問題にはならない。「8割くらいの力で上って、後半に足を残しておきたい。ただ、ラスト3kmに来る戸塚の急坂だけは地獄ですね。どれだけ、もがいて上れるかです」
田島駿介、初挑戦の往路を希望
3年生トリオの一角を担う田島は、3区、4区を想定して準備を進める。前回大会は7区で出走しており、希望する往路は初挑戦。経験者のOBからも話を聞き、直接アドバイスをもらったという。
「3区は漆畑徳輝さん(現・トーエネック)に『前半の10kmを28分台で入るのはマスト』と教えてもらい、4区は大森椋太さん(現・JFEスチール)が助言してくれました。『前半のアップダウンでリズムをつかみ、後半の上りは頑張るしかない』と」
10000mのタイムはチーム最速の28分11秒41。自らの課題に向き合い、スピード練習を積んできた成果が出ているという。正月の大舞台では区間一桁順位で走り、チーム目標の達成に尽力するつもりだ。「良い位置でくれば流れをつくり、後ろで襷を受けたときはゲームチェンジの役割を担えるようにしたいです」
石川龍芽「最後は絶対に6区を走りたい」
勢いのある3年生の活躍に刺激を受けている4年生たちは、静かに闘志を燃やしていた。予選会で激しい裂傷を負いながら気合で最後まで走り抜いた石川龍芽(4年、名経大高蔵)は、こだわりの区間を走るために1年間かけて取り組んできた一人。指揮官が重要区間に挙げる山下りの6区への思いは並々ならぬものがある。
「前回大会もメンバー入りして、6区の補欠で控えていました。最後は絶対に走りたいです。この1年で対策してきたのは最初の上り坂。ずっと苦手意識を持っていたのですが、流し(練習最後の走り)やトレッドミルで意識して走り続け、自信をつけました」
区間のイメージはほぼ完璧にできている。前半4.8kmまでの上り坂を攻略し、一気に得意の下り坂を駆け下りていく。最低限のタイムは59分台フラット。58分半を目指し、区間5位以内も視野に入れている。見せ場はスタミナが問われる残り3kmの平坦(へいたん)だという。
「僕がメンバーに入れたのもそこだと思っています。ラスト3kmでド根性を出せるのは、僕しかいないかな、と。6区は監督が乗る運営管理車も最後だけ合流します。そこでさらにパワーが注入されると思います」。4年目で初の箱根路出走を目指す石川は、想像を膨らませていた。「『お前なら行くしかない』『何のためにお前を選んだのか、分かるか』って、声をかけてもらいたいですね」
分須尊紀「走力のある選手たちがそろった」
それぞれが熱い思いを口にする中、誰よりも落ち着いていたのは、3年連続で箱根路に出走している主将の分須だった。本番までは約3週間。活気あふれるチーム全体を見渡し、ふと口元を緩めた。
「在籍した4年間の中でも、一番良い状態に仕上がっていると思います。持ちタイム、練習消化率を見ても、走力のある選手たちがそろいました。各自が他大学に勝つ意識を持って練習に取り組んでいます。全員が本来の実力を発揮できれば、シード権は獲得できると思っています」
4年生最後の箱根駅伝になるものの、主将の肩には力が入っていない。むしろ、あえてリラックスした表情を浮かべていた。「気負いすぎると力を発揮できないので。与えられた区間で役割をまっとうしたいと思っています」
イメージしているのは、復路の7区、8区。第100回大会では8区で区間2位と好走し、大きな期待を寄せられているが、本人は謙虚な姿勢を崩そうとはしない。「最低でも区間8位以内で走れれば、と思っています。目標があまりに高すぎると、プレッシャーを感じてしまうので。自分の力を出し切るようにしたいです」
新しい日体大の駅伝も見せていきたい
今季は学生主体で「捲土重来」のスローガンを掲げた。10回の総合優勝を誇る伝統校ならではのフレーズである。1969年から5連覇を成し遂げるなど偉業も達成してきた。第60回大会の箱根路を走ったOBの玉城監督はしみじみと話す。
「昔は強かった『古豪』と呼ばれて久しいですが、そう言われているうちは上位では戦えません。古き良き伝統は継承しますが、新しい日体大の駅伝も見せていきたい。うちはスター選手が集まる大学ではなく、今年度も総合力で戦うチーム。往路も大事ですが、『復路に強い日体大』のイメージがさらに強くなっていけばな、と思います」
新たな時代のスタートとなる101回目を、名門復活のきっかけにするつもりだ。