箱根駅伝総合優勝目指す駒澤大学 けがから復帰の佐藤圭汰「故障前よりパワーアップ」
12月13日に第101回箱根駅伝を前にした駒澤大学のオンライン会見があり、藤田敦史監督、大八木弘明総監督とエントリーメンバーに入った選手10人が出席した。選手たちは総合優勝の目標に向けて意気込みを語った。
藤田敦史監督「ぜひ箱根だけはとりたい」
会見には主将の篠原倖太朗(4年、富里)や吉本真啓(4年、世羅)、帰山侑大(3年、樹徳)ら6名は授業の関係で欠席。出席者のうち伊藤蒼唯(3年、出雲工業)、佐藤圭汰(3年、洛南)、山川拓馬(3年、上伊那農業)の3年生の主力3人のほかは、全員が箱根駅伝未出走のメンバーとなった。
まず藤田監督が「昨年は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制して三冠がかかった状態でしたが、青山学院大に負けて準優勝でした。今回は出雲、全日本で2位で、ぜひ箱根だけは取りたいという気持ちです。100回大会準優勝の悔しさを持ち続けて、さまざまな準備を整えてきました。総合優勝を目標に掲げ、チーム一丸となって戦っていきます」とあいさつした。
昨年は就任1年目で、いきなり2季連続三冠を目指すという難しい状況の中で指揮を執った。緊張感のある中で毎日を過ごし、「選手たちよりも肩に力が入っていた」と藤田監督は振り返る。「いろんなことを工夫するように心がけましたが、試合当日の運営管理車からの声がけや区間配置などは、優勝した青山学院大の原晋監督との差が出てしまったところを感じました」と認める。
「1年間戦ってくる中で経験値が備わりました。その経験を生かしながら去年よりも工夫ができた1年だと思います」。昨年度チームを牽引(けんいん)した鈴木芽吹(現・トヨタ自動車)の代が卒業し、選手層が薄くなったのはまぎれもない事実。しかしその中でもエース・佐藤圭汰を欠きながらも出雲・全日本と2位となった。
優勝を目指した中での2位なので、満足はしていないとしつつも手応えは感じられた。「肩の力が抜けた状態で、チャレンジャーとして迎える箱根駅伝です。チームとしてのびのびとした雰囲気で戦える中で、総合優勝を達成していきたいです」
佐藤圭汰「インパクトのある走りをしたい」
総合優勝のための大きなピースは、やはり佐藤圭汰だ。今年は箱根駅伝直後に単身アメリカに渡り、クラブチームの合宿に参加。ボストンの競技会で5000m13分09秒45秒をマークし、室内日本記録を更新した。前回の3区で後ろから来た青山学院大の太田蒼生(4年、大牟田)に追いつかれ、突き放されたことが「今までにないぐらい悔しかった」と語り、悔しさが好記録の原動力になっていたと明かす。
今シーズンは夏前に恥骨の疲労骨折が見つかり、6月の日本選手権を欠場。出雲駅伝と全日本大学駅伝にも出走できなかった。10月の中旬ぐらいから練習を再開し、11月からは本格的にポイント練習にも復帰。従来のフォームは体に負担がかかり、けがにつながったため、体の使い方やフォーム改善に力を注いでいるという。
「故障前よりもパワーアップしていると感じています。このまま体調不良やけががなければ、昨年と同じパフォーマンスを発揮できると思います」と手応えを語る。
佐藤の大きな目標は、1500m、3000m、5000mで日本記録を更新し、オリンピックでメダルを取ること。そのためには「日本人が誰も追いつけないようなレベル」になる必要がある。トラックでの活躍を目指す上で、箱根駅伝がどうつながっているかと聞かれると「チームのために走りたい思いがあります。インパクトのある走りをしたいです。箱根駅伝への取り組みはトラックでも生きてくると思います」とさらなる活躍を誓った。
昨年負けた太田を「ライバル」として挙げ、「同じ区間を走るのなら今度は勝ちたい」とリベンジを誓う佐藤。昨年は初の20km以上の距離ということもあり、抑えめで入ってしまったと反省点を挙げた。「今年はたれてしまうことを考えずにハイペースで突っ込んで、絶対中盤にも追いつかせないようなペースで入りたいです。ラスト3kmはまたきついイメージがあるので、ラストにまた動かせるようにある程度コントロールしながら走っていければと思います」。前回の経験をもとに、勝つイメージをすでに描けているようだ。
伊藤蒼唯「攻めの走りを前面に押し出したい」
1年時は6区で区間賞を獲得したが、前回はインフルエンザの影響があり出走はならなかった伊藤。この1年で主力の一角に成長し、出雲駅伝4区で区間3位、全日本大学駅伝では3区で8人抜きの区間2位と存在感を示した。
駅伝シーズン前は6区への思いを語っていたが、今回口にした希望区間は9区。その理由をたずねると「9区は下り基調で、裏のエース区間とも言われていて強い選手が来るので、そこでしっかり勝負したいです。9区を走ることになればなるべく10区の選手が楽に走れるように、自分のところで順位を決められるように走りたいです」と語る。
昨年は全日本大学駅伝の帰路に発熱し、練習を継続できなかったことでメンバー外となった。「その悔しさを1日も忘れたことはないです」と言い、悔しい経験があったからこそけが、体調不良がなく練習を継続できていると話す。調子は上がっている。「前回よりも箱根駅伝への思い入れは強くなっています。当日は絶好調で迎えられると思います」
ライバルを聞かれると「他大学の同級生全員」だといい、「同じ区間なら勝つのは当然です。他の区間を走る選手たちにも、区間順位では絶対に負けたくないです」と意気込む。ここまで2つの駅伝では攻めの走りができている伊藤。その姿勢をストロングポイントに、2回目の箱根路ヘ挑む。
山川拓馬「上りで勝負して引き離したい」
1年時は5区区間4位と活躍した山川だったが、前回は4区を走ったものの本来の走りができず区間6位となり、青山学院大に1分半近い差をつけられてしまった。全日本大学駅伝後に右の恥骨筋の肉離れを起こし、走る前に不安はあったが「いけるだろう」と考えていた。しかしまったく自分の思い描いたような走りができなかった。
「チームに迷惑をかけた走りでした。今年はそういうことがないように、しっかりと意識してやっていきたいです」。今年の全日本のアンカーでは、襷(たすき)をもらった時点で優勝した國學院大學と2分33秒あった差を28秒まで縮める激走。その後もけがや不安はなくここまで来られているといい、「前回より確実に調子はいいです」と自信をにじませる。
「上りで勝負したい」といい、希望する区間は「2区か5区」と主要区間だ。2区は権太坂やラストの急坂があるのが理由。5区は1年時に走った際、上りで差をつけられて下りで後続を離す結果となったが、「前半の上りで引き離したいです」と具体的にイメージができているようだ。
今回は箱根駅伝未出走の選手も多く走ることになる。実際今シーズンは駅伝デビューした選手が多数いる。出雲駅伝で桑田駿介(1年、倉敷)が1区区間6位、島子公佑(2年、伊賀白鵬)が5区区間2位。全日本大学駅伝では谷中晴(1年、帝京安積)が区4区区間3位、村上響(2年、世羅)が5区区間5位、安原海晴(2年、滋賀学園)が6区区間3位と、初駅伝に臨んだ選手たちがしっかりと結果を残してきている。
大八木総監督も下級生、特に1年の桑田・谷中、2年の村上・安原らの名前を挙げて期待を語ったが、合わせて「自信」の大切さについても言及した。「三冠を達成した時のような自信を選手たちが持っていかないと、勝つのは難しい。自信が結果に出てくるので、自信をしっかりつけてほしいと思います」と心の面での成長も促した。
負けたままでは終われない。箱根路で「令和の常勝軍団」駒澤大の逆襲はなるだろうか。