箱根駅伝では3強に「食ってかかりたい」 早稲田大学は往路から攻めた布陣を敷く
第101回箱根駅伝を前に早稲田大学が12月14日、埼玉県の所沢キャンパスで記者会見を開いた。花田勝彦監督のほか、駅伝主将の伊藤大志(4年、佐久長聖)、エースの山口智規(3年、学法石川)らが出席。駅伝シーズンを通して目標に掲げてきた"打倒3強"を箱根路で果たすため、いずれの選手も挑戦者としての意気込みを語った。
チームは全日本大学駅伝の後も成長を続ける
3強に食ってかかりたい――。駅伝主将の伊藤は、あいさつでこう述べた。今シーズンの3大駅伝に臨むのにあたり、早稲田大は、青山学院大学、駒澤大学、國學院大學の一角を崩すことを目標に掲げてきた。しかし、出雲駅伝は6位、全日本大学駅伝は5位に終わり、目標の3位には届かなかった。それでも、これまでに見つかった課題を乗り越えるため、11月中旬から練習を積んでおり、箱根駅伝に向けて悲壮感は漂っていない。
現在、故障者は出ておらず、本戦に向けて順調に準備が進んでいるという。花田監督は「まだチームは成長を続けています。練習をこなすごとに力をつけている。総合3位という目標をぶらさずに、チャレンジしていきたいです」と語った。
「先頭を走る経験をさせたい」
3強を崩すという悲願に加え、選手たちに「先頭を走る経験をさせたい」という花田監督が描くレースプランは、こうだ。
往路から攻めた布陣で選手を配置。1区や3区、4区の走者がきっちり上位争いを繰り広げ、2区のランナーがエースらしい走りで先頭争いに加わる。そして、第100回大会で好走を見せ「山の名探偵」というニックネームとともに名前が知れ渡った工藤慎作(2年、八千代松陰)が5区を走る際には、前が見える位置で襷(たすき)を渡す。
復路は6区を区間1桁の順位で走れる戦力は整っており、7区にも強い選手を配置できると花田監督。「7区が終わった時点で3位争いができれば、すごく可能性はある。8~10区にも、まだ力がある選手も控えている」。ただ、思い描いた通りに動かすためには、一つのミスも許されないレース運びが必要となるのも事実。「チームの力は、出雲で6割、全日本(大学駅伝)で8割だったので、9割以上の力が出せれば、かなり目標に近づくと思います」
前半ガンガンいってラスト3kmの勝負
来年度の駅伝主将に決まり、2区出走が濃厚なのがエースの山口だ。前回の2区では8人を抜き、区間4位の好成績を収めただけに、今回もチームの期待を一身に受けている。レースプランを聞かれると、山口は3強への意識を口にした。「(駒澤大学の)篠原さん、(國學院大學の)平林さん、(青山学院大学の)黒田君が予想されると思う。みんな冷静で、後半にしっかりと伸びるような選手なので、逆に前半にガンガンいって、権太坂以降を耐えて、ラスト3kmの勝負になるとイメージしています」。個人的な目標としては、高校の先輩にあたる相澤晃(現・旭化成)がマークした1時間5分57秒を見据えながら「最低限、(1時間)6分前半で走らないといけないと思っています」と語った。
2年連続で復路の8区を走り、前回は区間5位と好走した伊福陽太(4年、洛南)は、これがラストラン。2月の延岡西日本マラソンを2時間9分26秒で制覇したものの、その後は、不調に悩まされてきた。5~6月はジョギングすらきつい状態となり、海外遠征もキャンセル。7月の夏合宿で本格的にチームに合流。その後も体調を崩したが、箱根に向けては順調に仕上がっているという。希望区間は、8区と9区。「3位を達成するために、どの区間を走っても、区間賞争いをできるような走りがしたいです」と抱負を話した。
自身はスポーツ推薦で入部したわけではなく、同じバックグラウンドを持つ後輩たちに背中を見せたいという思いもある。「今回が最後なので、スポーツ推薦で入ってきていない選手でも、地道にやり続ければ『箱根でしっかり走れるよ』というのを見せたい」と話した。
山登りは前半からアグレッシブに
山登りが有力視されている工藤は、出雲駅伝でアンカーを務め、青山学院大の太田蒼生(4年、大牟田)や駒澤大の篠原倖太朗(4年、富里)らを退けて区間2位の走りを見せると、全日本大学駅伝でも最終区を走り、区間3位と好調を維持している。
3強の壁は厚いと冷静に話しつつも、「前回大会は格上だと思っていた國學院大學や創価大学に(往路で)勝っている。今の早稲田大学は、昨年よりもチーム状況はいいので、どこか(相手に)ブレーキがあった場合には、十分可能性があるのかなと思います」と分析する。
昨年は出雲と全日本で好走できずに箱根を迎えたのに対し、今回は好調の中で臨む。「昨年よりも、平地での走力が段違いに上がっているので、前半からある程度攻めても、後半に失速しないのかな、と思います。アグレッシブさを出していきたいです」と語る。
徐々に調子を上げてきた早稲田大が、3強を崩してジャイアントキリングを達成できるのか。下馬評を覆す緻密(ちみつ)な走りに期待したい。