ラグビー

早大PR亀山昇太郎 昨季押し負けた因縁の相手と再戦へ〝迷わず押す、押せば勝てるさ〟

「4年間で一番の転機となった」と話す京産大戦の大敗から1年。リベンジの舞台が巡ってきた(すべて撮影・斉藤健仁)

1月2日、東京・国立競技場でラグビー大学選手権の準決勝2試合が行われる。2試合目は、秋から負けなしの早稲田大学(関東対抗戦1位)と、昨季ベスト4の京都産業大学(関西2位)。両校は昨季の準々決勝で対戦し、早稲田大は京都産業大にスクラムでプレッシャーを受けて28-65で負け、シーズンを終えた。早稲田大にとっては、何としてもリベンジを果たしたい因縁の相手だ。

昨季京産大戦後、フロントロー同期でリベンジ誓う

この試合に途中出場し、大敗後、西日の差すグラウンドで、現キャプテンHO佐藤健次、PR門脇浩志(いずれも4年、桐蔭学園)と、「来年は全部勝って、どのチーム相手でもスクラムを押す」と、同期3人で固く誓いあったのが、身長176cm、体重115kgの右PR、亀山昇太郎(4年、茗渓学園)だ。

「この4年間で一番の転機となった試合は、やっぱり京都産業大戦です。大敗で悔しいと思えないほどだった。接戦で負けていたら『まあしょうがない』と思っていたかもしれません。良い経験とは言いたくないですが、大差で負けてしまって、今季に向けて大きい起点となった」

昨季の大学選手権準々決勝。京都産業大に対してスクラムが劣勢だった

この悔しさをバネに、新チームはなんと年明けすぐの1月9日から始動。FW陣がウェートトレーニングだけでなくスクラム練習もスタートさせたことが、今季の好成績につながっている。

大学入学後すぐにレギュラー格となった亀山は、4年になった今季は春から全試合に「3」番を背負って先発し、早稲田大のFW陣を下支えしているスクラム職人であり、大黒柱の一人だ。

今季は春から全試合に「3」番を背負って先発し、FW陣を下支えしている大黒柱の一人

FWのセットプレーが安定、BKに好循環

夏合宿の帝京大学戦も、対抗戦の帝京大学戦でもスクラムは対等に組んで勝利し、100回目となった「早明戦」でもスクラムで劣勢になることなく勝利に導いた。今季、BKにスターぞろいの早稲田大のアタックが機能しているのは、スクラム、ラインアウトといったFWのセットプレーの安定にあることは明らかだ。

昨季と比べて、どうしてスクラムが強くなったのか。PR亀山は「仲谷(聖史)コーチの指導もあり去年からどんどん伸びていて、春先、サトケン(佐藤健次キャプテン)とかスター選手がジャパンなどでいない間に、泥臭いラグビーをしなければならなかったのですが、その時期に本当にチーム力が上がった。去年と比べても、ジュニアチームの押しが強いし、誰がPRやLOに入っても押す自信があります!」と語気を強めた。

1浪で入学した高校日本代表の杉本安伊朗(2年、國學院久我山)や山口湧太郎(3年、桐蔭学園)ら「1番(左PR)の質が上がった」(亀山)ことや、フッカーに転向して3シーズン目、日本代表合宿にも参加した佐藤の成長も理由の一つだが、やはりチームとしてスクラム強化し続けたことが功を奏したという。

1月9日から始めた強化で今季のスクラムは安定。11月の帝京大戦の大勝を支えた

中学で大阪を離れ茗渓学園へ

佐藤キャプテンとともにFWを引っ張る亀山は岡山県出身で、両親、姉も医者という一家に生まれた。父親が大学でラグビーをやっていた影響で4歳から岡山ラグビースクールで競技を始めた。

中学進学時、岡山県内でラグビーが部活動でできる中学校がなかったこともあり、親元を離れて茨城・茗渓学園中学校に進学した。太陽生命カップや茨城中学代表に選出され、全国ジュニア大会などにも出場した。早稲田大のFL萩原武大(3年)は中学、高校の同級生だ。

高校はそのまま茗渓学園に進学した。高校1年から先発となったが、「花園」こと全国高校ラグビー大会は3回戦で長崎北陽台(長崎)に負けてベスト8進出はならなかった。高校2年時は2回戦で大阪桐蔭(大阪)、3年時は初戦で佐藤がキャプテンで優勝した桐蔭学園に敗れ、上位進出することはかなわなかった。

明治大のダブルタックルにもひるまず突進

憧れていた早稲田に進学「赤黒ジャージーに誇り」

高校に入った頃、亀山は「大学はラグビーを続けないで普通に通おう」と思っていた。しかし、桜のジャージーに袖を通すことができるU17日本代表に選ばれたことで「大学でもしっかりラグビーを続けたい」と考えるようになった。また「小さい頃から、父親といっしょに早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学のラグビーをテレビで見ていて、早稲田大に憧れていた」と話す。

そして早稲田大のスプリングスクールに参加させてもらい、相良南海夫監督(当時)に、「赤黒ジャージーへのこだわりや、『荒ぶる』(優勝したときのみに歌うことが許される第二部歌)の説明を受けて、すごく感銘を受け、早稲田大ラグビーが面白そう」と思い、スポーツ科学部への進学を決めた。

赤黒ジャージーを着ることに大きな誇りを感じている

「自分の中では早慶戦、早明戦に出られることや、赤黒ジャージーを着て試合に出られることもすごく誇りに思っています」

卒業の来春からはリーグワンでラグビーを続ける予定だ。

プロレスラーのアントニオ猪木が引退時に披露した「道」という詩の、最後の部分「迷わず行けよ。行けば分かるさ」が好きで、座右の銘としている。

100回目の早明戦に勝って対抗戦優勝を決め、佐藤と抱き合う亀山

昨季は京産大に負けたスクラム「今季の早稲田は違う」

大学選手権3回戦では近畿大学(関西3位)に前半こそスクラムで苦しんだが53-10で快勝し、いよいよ1月2日の準決勝では、昨季のリベンジがかかった京都産業大戦を迎える。

準決勝でチーム、個人としてどんなところに注目してほしいかと聞くと亀山は「昨季まではずっとスクラムは押されていたが、今季の早稲田大のスクラムは違うというところを見てほしい。チームとしては自分たちの試合に臨む目を見てほしいし、気迫を感じてほしい。早稲田大から感動を届けるというミッションがあるので、そこにどれだけコミットできているかも注目してほしいですね。ファンのみなさんも『荒ぶる』を歌いたいと思っていると思うのでしっかり頑張ります!」と腕をぶした。

準決勝で最大の焦点となるのは間違いなく、昨季、劣勢だったスクラムだ。亀山が引っ張る臙脂(えんじ)の8人の塊がスクラムを押した先にこそファイナル、そして『荒ぶる』が待っている。

「今季の早稲田大のスクラムは違うというところを見てほしい」

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