陸上・駅伝

筑波大・白川朝陽 箱根駅伝で先頭を走った「兄よりも良い結果を」高め合う存在として

日本選手権クロスカントリー競走のシニア女子8kmで学生トップとなった筑波大学の白川朝陽(撮影・井上翔太)

第108回日本選手権クロスカントリー競走 シニア女子8km

2月22日@海の中道海浜公園(福岡)

優勝 川口桃佳(ユニクロ)26分25秒
2位 信櫻空(横浜市陸協)26分31秒
3位 鈴木杏奈(しまむら)26分34秒
4位 尾崎光(シスメックス)26分38秒
5位 對馬千紘(スターツ)26分40秒
6位 逸木和香菜(九電工)26分41秒
7位 中馬蘭奈(しまむら)26分43秒
8位 田﨑優理(シスメックス)26分47秒
9位 平井見季(ユニクロ)27分00秒
10位 白川朝陽(筑波大学)27分00秒

2月22日に開催された第108回日本選手権クロスカントリー競走のシニア女子8kmで、筑波大学のルーキー白川朝陽(1年、大塚)が全体10位となり、学生ではトップに入った。兄も中央大学の長距離で主力を張るランナー。ライバル意識もあり、これからも兄妹そろって高め合っていく。

6日前に男女混合駅伝でアンカーを務めたばかり

福岡・海の中道海浜公園にある1周2kmの専用コースを、計4周して行われる今レース。シニア女子では46選手がスタートした。大学生では10000mの日本学生記録を持つ拓殖大学の不破聖衣来(4年、健大高崎)が欠場となったが、昨夏にペルーで開かれたU20世界選手権女子5000m代表の立命館大学・山本釉未(1年、立命館宇治)ら、力のあるランナーも出場した。

レースは起伏のある1周2kmのコースを4周して争われた(撮影・井上翔太)

1周目は山本が先頭集団の中でレースを進めた一方、白川は第2集団の後方についた。6日前には、全国大学対校男女混合駅伝で最終6区(5km)を走ったばかりの白川。「そこまで調整せずにこのレースだったので、前は速いけど、自分のペースで行こうと思っていました」と終始、落ち着いていた。

2周目を終えたところで、先頭集団は10人前後となった。山本は3周目の序盤、高低差が約6mある丘のところで遅れ始めた。自分のペースを貫いていた白川が山本をかわし、前を追った。最後は筑波大の先輩でもあるユニクロの平井見季と競り合いながらフィニッシュ。学生トップの結果に、「一番強いのが普段から仲が良い釉未ちゃんで、『絶対に勝てない』と思ってたんです。まだまだ自分の実力じゃ届かない位置に、彼女はいる。普通に走ったら負けるんですけど、今回勝てたことは一つ学びになったかなというのはあります」と振り返った。

筑波大の先輩でもある平井見季(左)と競り合いながらフィニッシュ(撮影・井上翔太)

1年目からチーム内で中心的な存在に

クロスカントリーの練習は特段積んでいなかったという。「学校にちょっとだけクロカンのコースがあるんですけど、そこを2回走ったか、走っていないかぐらいでした。なので、クロカンに対して、正直どこまで行けるのか……と思っていました」。出場した目的について尋ねると、「冬季練習の一環でした」。今大会は2026年にアメリカ・フロリダ州タラハシーで開催される世界選手権の代表選考を兼ね、優勝者には4月の日本選手権10000mへの出場権も与えられるが、白川はあくまで自身の強化のために出場したことを強調した。

白川は1年目から、チームの女子中長距離ブロックで中心的存在となっている。昨年9月の日本インカレ女子10000mで6位。1年生では唯一の入賞を果たした。自身を含め鈴木美海(1年、順天)、田中柚良(1年、西春)のルーキー3人が出走した全日本大学女子駅伝では6区で順位を守り、チームは8位でシード権を獲得。昨年末の富士山女子駅伝でも他大学の主力が集まる2区を走った。

昨年9月の日本インカレ女子10000mで白川(5番)は6位入賞(撮影・藤井みさ)

チームとして戦うことは、特に筑波大に来てから意識するようになった。「普段はトラック種目をメインにやってるんですけど、駅伝の時になったらみんなが団結する。私自身、駅伝の強豪校出身ではないので、刺激になりました」。白川の兄は昨年の関東インカレ男子1部ハーフマラソンで3位となり、年始の箱根駅伝で4区を走った陽大(ひなた、3年、大塚)。トップで襷(たすき)を受け、先頭を守ったまま小田原中継所へひた走る兄の姿を「キラキラしてるなぁ」と思いながら観戦していた。「競技ではお互いにちょっと意識しているので。『兄よりも良い結果を』というのは、常に思っています」。近い将来、男女混合駅伝で対決するときが来るだろうか。

中大・白川陽大が学生ハーフ4位 箱根駅伝の悔しさから約2カ月、予選会に向けて弾み
年始の箱根駅伝、兄はトップで往路の小田原中継所にやってきた(撮影・佐伯航平)

勝つために走るのか、食べるために走るのか

部のホームページで「食べることが大好きで、胃袋がいくつあっても満たされない」と紹介されていたので、本人に確認したところ「女子の中では私以上に食べる人を見たことがないです」と教えてくれた。それが競技にもつながってくるのだろう。夏バテになったことがなく、長距離ランナーに起こりがちな内臓疲労を感じた経験もないと言う。

「食べるのが好きすぎて、勝つために走ってるのか、食べるために走っているのか分からないぐらいです(笑)」。常にコンビニエンスストアのアイスをチェックしつつ、今大会に向けてはお菓子を断って臨んできた。終わった後には、格別なご褒美が待っている。

大学生活2年目もトラックシーズンは10000mを中心に、まずは4月の学生個人選手権でFISUワールドユニバーシティゲームズ代表の座をめざす。「他の種目では、鵜澤飛羽さん(4年、築館)のように『世界に行くのが当たり前』みたいな人たちもいっぱいいるので、すごくいい環境にいさせてもらっていると感じます」と白川。自分もいずれは、その一員に?と聞くと謙遜されたが、一方で「伸び伸びやらせてもらえる筑波大学で、4年間を通してちょっとずつ成長していきたい」と誓った。

4月の学生個人選手権でFISUワールドユニバーシティゲームズ代表の座をめざす(撮影・井上翔太)

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