アメフト

関学の誇る「何でも屋」西野、大一番で輝き

立命戦でWRとして出たプレーで、右オープンを駆けた西野

関西学生リーグ1部最終節

11月18日@大阪・万博記念競技場
関西学院大(6勝1分) 31-7 立命館大(6勝1敗)
関学は2年ぶり56度目の優勝

「青の三銃士」が関学を逆転優勝へと導いた。

最終節の立命戦。関学は3人のQBを使い分け、尻上がりに調子を上げてきた立命ディフェンスを打ち破った。若きエース奥野耕世(2年、関西学院)、昨シーズンのエースだった西野航輝(4年、箕面自由学園)、関学では68年ぶりのQB主将である光藤航哉(みつどう、4年、同志社国際)。それぞれの持ち味を出してオフェンスを引っ張り、圧勝劇を演出した。

関学の誇る「何でも屋」西野が、大一番で渋く輝いた。7-0とリードした第2Q最初の攻撃シリーズ。西野は左サイドのWRとして入り、右へモーション。奥野からハンドオフを受け、21ydを走った。「QBが3人いるからできるプレーと思います。みんながいいブロックをしてくれたので、僕は走るだけでした」。このシリーズは3人のQBが入れ替わりで登場。相手を幻惑し、最後はQB奥野からWR阿部拓朗(3年、池田)への19ydタッチダウン(TD)パスで締めた。第3Q終盤には阿部へ36ydのパスを通し、フィールドゴールでの追加点につなげた。この日は5回投げて4回のパスを通してみせた。

関学のQB西野、奥野、光藤(左から)

エースの座、明け渡しても

ここまではパッとしないシーズンを過ごした。昨年は甲子園ボウルまでエースを張った男が、今春はチーム事情からWRを兼任。アメフトを始めた中1のころに少し経験しただけのポジションだった。「QBは後ろから全体を見る感じですけど、WRは目の前に相手がいるので、違った感覚があった」。戸惑い、パスキャッチもままならず。本職のQBについてもコーチから「奥野の方が上」と断言され、エースの座を明け渡してしまった。「QBに専念したかったですけど、チーム状況で仕方なかった。わがままは通せませんけど、もちろん悔しさもあった」。それが西野の本心だった。夏を経てもQBの序列は変わらぬまま、秋のリーグ戦が開幕。「スターターで出たい」。活躍する自信はあった。

心が吹っ切れたのは、ビッグゲームが始まってからだ。第5節の京大戦で、関学は第4Qに入ってもTDなし。そこでチームはQBを奥野から西野に代えた。すると8分27秒にRB山口祐介(4年、横浜栄)の中央突破でTD。「自分が出たら、奥野とは違うテンポになった。あれから自分が入るのは負けてるときか、同点のときって思えました」。自分が一番という気持ちを押し殺し、一歩引いて支える側に回った。最終節の前は初めての立命戦に臨む奥野を懸命にサポート。試合前も「楽しんで、思いきりやってこいよ」と、後輩を気持ちよく送り出せた。

大学ノートに書き続けた

関学では学びの連続だった。箕面自由学園高ではQB以外の経験はなく、まさかRBもWRもやるとは思わなかった。大学3年の春はRBに専念。OLがどうブロックして走らせるのかを初めて真剣に考え、もともと大好きな筋力トレーニングで下半身を強化。エースQBとして活躍した秋は、練習の1プレーについての反省もノートに書いた。いまでは何かあるとプレーの全体図を書いて考える。分厚い大学ノートがすぐになくなるほど書き続けている。「フィジカル面で困ることはなかったので、コーチに『どこでもできるだろう』と思われたんだと思います。びっくりしましたけど、いい経験になりました」。たしかに体が頑丈だからこそできた「何でも屋」。いまではオフェンスではOL以外何でもできる。こんなQBはなかなかいない。

今春はWRとしても起用された西野

今シーズンはQBのパートリーダーを務める。3人のQBで戦うことについては、ポジティブに捉えている。「奥野はパスで、光藤は走るのがうまいんでランで」と、甲子園ボウルの西日本代表決定戦(12月2日)に向けて注文した。「自分は苦しい場面でチームを勢いづけたい。フィールドに入ったときに、変化をつけたい」と誓った。ようやく機能し始めた「青の三銃士」。マルチプレーヤー西野が、関学を甲子園へと導く。

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