“リーマントラベラー”東松寛文「自己分析は就活の筋トレ」(4years.就活セミナー)
体育会の大学生の就職活動を応援しようと3月18日、東京都内で開催された「4years.就活セミナー」。就職活動に臨む体育会学生を前に、サッカーJ1湘南ベルマーレの水谷尚人社長、「リーマントラベラー」として知られる会社員の東松寛文さん、朝日新聞就活キャリアアドバイザーの篠原真喜子さんらが講演しました。ここでは、東松さんの講演内容をお届けします。東松さんが自らの就活経験を元に語る「徹底した自己分析」の方法とは――。
「体育会で頑張ったアピール」はリスクでしかない
広告会社でサラリーマンをしながら休日を利用して世界一周をなしとげた東松さん。神戸大学ではアメフト部で活躍したバリバリの体育会系でした。その経験とバイタリティーを生かして就活も楽勝だったかと思いきや、実はかなり苦戦したそうです。
「体育会だからなんとかなるだろうと、正直、就活をナメてました。でも、世の中はそんなに甘くなかった。学生時代に頑張ったアメフトの話をすれば何とかなると思ってましたけど、ダメだった。体育会で頑張ってきた経験はビジネスでは必ず役に立ちますけど、就活ではまったく役に立ちません!! 」
「体育会での経験は、就活では役に立たない」。いきなりの刺激的な発言でしたが、東松さんはその理由をこう説明しました。
「体育会出身だと、自分の部活の『頑張ったアピール』をする人が多い。でも、『頑張った』って抽象的な言葉で、他人と比較できませんよね? 私はアメフトの関西学生リーグで3位になったんですけど、それをアピールしても、隣の人が1位だったらその時点で面接終了でしょう。『頑張ったアピール』はリスクでしかないんです」
では、どうすればいいのか。東松さんが勧めるのは、徹底的な自己分析。「自己分析は就活における筋トレ。アメフトでいくら相手のことを研究しても、筋トレせずに体ができてなかったら勝てません。いくら企業の研究をしても、自分自身の分析を怠ってたら、就活に勝てるわけがないんです」と強調します。
具体的には、過去の自分を精査して、自分の強みを見つけ出すこと。東松さん自身も就活の途中でそのことに気づき、急ピッチで自己分析を深めたことで、面接には落ちなくなったそうです。無事に志望していた広告会社の内定を勝ちとりました。
「自分の中に、人が持っていない希少性=強みを見つける。それが見つかれば、就活に限らずその強みを生かして生きていけます。特別に新しいことを始めなくても、みなさんはすでに20年も生きてるわけだから、自分だけの強みを持ってるはずです」
東松さんは自身を例にとり、三つの強みを挙げました。
(1)一時は社畜寸前になっていたほどサラリーマンをやりきる力
(2)弾丸旅行に行きまくるノウハウやテクニック
(3)それを面白く伝える文章力
一つひとつの能力だけを見ると、文章力では作家に負けるかもしれないし、旅行だったら旅を専門の職業にしているライターなどもいて、そこには及ばないかもしれない。しかし、この三つをかけ合わせることで、サラリーマンでありながら世界中を旅して、それをブログなどで伝えるいまの「リーマントラベラー」のスタイルができあがったと言います。
自己分析でやるべき二つのこと
それでは、私たちは自分の強みをどうやって見つけたらいいのでしょうか。東松さんは「やるべきことはたった二つです」と言いきります。
一つ目は「自分がわざわざやっていることを探して、なんでやっているのかを考える」こと。東松さんはある後輩社員の例を出しました。
「後輩社員が先日、初の海外一人旅に行ったんですけど、感想を聞くと『予定より早く回れてしまってヒマになり、カフェでお茶してました』と。私ならお茶してないで最後まで旅を楽しみますけど、初の海外で何のトラブルもなく回れるというのも逆にすごい。理由を深掘りしていったら、彼は難しいことを理路整然と単純化して遂行するのが得意だと分かった。それで、『教授になったら? 』と彼に言ったら、『なんで分かったんですか!! 』と。昔、教授を目指したことがあるそうなんです。彼はいま、教授になろうと再び努力しています。
この例のように、わざわざやっていないのにできてしまうのは、根底にその人の能力があるからです。みなさんも、気づかずにやっているような自分の動作を考えてみてください」
二つ目の自己分析のテクニックは「感情が動いたときに、なぜそう感じたのかを考える」こと。東松さんは、アメフト部の後輩たちとのやりとりを例に、次のように説明しました。
「母校のアメフト部が久々に2部リーグに落ちて、その後すぐに1部に復帰したことがあったんですけど、そのときの感想を現役部員に聞いたら、『ほっとした人』『すごくうれしい人』『何も思っていない人』など、意外なことに全員バラバラな感情を持ってたんです。つまり、過去に感情が動いた経験をいくつか思い出して『この場面でなぜこう感じたのか』ということの共通項を探していくと、自分だけの理由が見つかるはずです」
こうした自己分析を進めていく上で、実は、体育会での経験がアドバンテージになる、と東松さんは語ります。
「体育会の活動は、これまで話した『わざわざやってること』そのものですし、試合や厳しい練習の中で、『感情が動いた経験』もたくさんしてるはずです。そういう意味では、体育会の人たちには普通の人以上にチャンスがあります。3年生のみなさんにとっては、いま本気で動くかどうかで人生が変わる。就活だけでなく人生のためにもなりますから、とにかく自己分析に全力を挙げてください」
受講者の感想
これまで何社か落ちてるんですけど、東松さんが言うように志望理由や自己PRをもっと深く掘っていかないと、ほかの学生との違いを出せないと実感しました。これから自己分析を頑張って、自分ならではの強みを見つけていきたいです。(法政大学3年ラグビー部・男性)