陸上・駅伝

特集:第98回関東学生陸上競技対校選手権

自称「跳躍ハードラー」順大・泉谷駿介、注目集めた関東インカレで2冠

110mHで優勝し、泉谷(中央)は小さくガッツボーズ(撮影・松永早弥香)

第98回関東学生陸上競技対校選手権

5月23~26日@相模原ギオンスタジアム
泉谷駿介(順天堂大2年、武相)
男子1部110mハードル 1位 13秒41(+2.7m)
男子1部走り幅跳び      2位 8m09(+3.8m)
男子1部三段跳び         1位 16m08(+2.0m)

順天堂大2年の泉谷駿介(いずみや、武相)は、関東インカレの主役の一人だった。

5月19日のセイコーゴールデングランプリ(GGP)大阪で、一躍注目を浴びた。2.9mの追い風参考ながら、110mハードル(H)で日本記録を0秒1上回る13秒26で優勝したのだ。そして、中3日で臨んだ関東インカレ。3種目に出て優勝、優勝、2位の大活躍だった。

110mHと走り幅跳び、三段跳びの3種目にエントリー。2日目の24日が大忙しだった。110mH決勝と走り幅跳び決勝の時間が重なった。

ハードルと走り幅跳びの時間が重なった……

24日はまず、午前9時30分からの110mH準決勝。序盤から飛び出し、13秒59(+0.6m)の大会新記録を樹立し、午後の決勝へ進んだ。午後1時20分に走り幅跳び決勝がスタート。ただし、2時40分に110mHの決勝がある。泉谷は走り幅跳びの1回目で確実に4回目以降の試技へ進める記録を出し、ハードルに備える予定だった。

しかし、1回目は助走が合わずにファールとなった。そして2回目、追い風3.8mの参考記録ながら8m09の好記録をマーク。その時点でトップに躍り出た。会場からどよめきが起きたが、泉谷としては喜びよりも安堵感の方が大きかったという。「いや~、焦りました。助走練習では結構合ってたのに、1本目で助走が変わってしまって……。でも2本目でうまく修正できたのでよかったです」と、苦笑いを浮かべた。

そしてハードルの決勝へ。周囲は日本記録更新を期待したが、本人はタイムよりも勝負にこだわった。スタートのリアクションタイムは予選、準決勝よりもさらに速い0秒103。1台目のハードルで頭一つ抜け出すと、そのまま差を広げて初優勝。小さくガッツポーズをつくると、その足で走り幅跳びに向かった。

走り幅跳びの2本目で追い風参考ながら8m09の大ジャンプ

トップで走り幅跳びの4回目以降に進んだ泉谷は、5回目から競技に戻った。その5回目はファール。6回目は8m08(+5.1m)と、追い風参考ではあったが、この日2度目の8m超え。結局1回目の記録で、津波響樹(つは・ひびき、東洋大4年、那覇西)の8m26(+2.3m)に続く2位となった。

神奈川・武相高校時代は八種競技に取り組んでいた泉谷は「八種は競技と競技の間がちゃんとあったんですけど、今日は間が短くてちょっときつかったです。久しぶりに八種のつらさを味わえたかなって、懐かしい感じがしました」と言って、人なつっこい笑顔になった。

最後の三段跳びで16m超えの自己ベスト

中1日開いて、最終日の26日。最後の三段跳びに臨んだ。2日目の競技後、泉谷は「順天堂でワンツースリーをしたいんで、先輩たちの勢いに乗って頑張りたいです」と語っていた。具体的な目標は「15m80を跳んで3位」。2日目に2種目の決勝を戦った疲労はかなり抜けていはいたが、万全ではなかった。それでもさすが、いま乗りに乗っている男だ。「もしかしたら自己ベストが出るかも」という予感があったという。

1回目、泉谷はいきなり16m08の自己ベストを跳んできた。「もうちょっと出るかもしれない」という手応えもあったという。結局1回目の記録で優勝を決めた泉谷は、最後の6回目の試技の前、観客に手拍子を求めた。手拍子のリズムに乗って助走したが、ファール。悔しそうな顔になったが、すぐにスタンドを振り返り、感謝の気持ちを込めてお辞儀した。

三段跳びの6回目はファールで苦笑い(撮影・藤井みさ)

スプリントを鍛え、跳躍は動画でイメージ

泉谷は高3の夏、八種競技と三段跳びでインターハイに出場し、八種競技は優勝、三段跳びは3位と堂々たる成績を残した。“九種競技”に取り組んだとも言える泉谷に好きな種目を尋ねると、「陸上全体が好きなので、好きな種目は『陸上競技』ですかね」と返した。

「走れないと跳べない」との考えから、練習はスプリントが中心。100mの自己ベストは、昨年9月の関東学生新人選手権で優勝したときの10秒58(+0.3m)。今シーズンは向かい風1.1mの状況下で10秒61をマークしており、スプリントの力は上がっている。走ったあとはイメージで跳ぶ。世界のトップアスリートが跳躍する動画を「ああいう動きをすればいいのか」と参考にし、頭の中に残っている動きをイメージしながら練習している。

走り幅跳びの2回目までを跳び、ハードルの決勝へ。優勝して、また走り幅跳びに戻った

今回の大会では「110mHは優勝、走り幅跳びは8m超え、三段跳びは15m80」を目標にしていた。すべてクリアだ。自分で一番伸びしろを感じている種目は? と問われると「どの種目にも伸びしろはありそうだなって思うんですけど、一番はハードルかな」。決勝ではリアクションタイム0秒103という驚異の速さをたたき出した。「いつも通りにやっただけです。なんだろう……。最近、集中力が上がったんですよ」。サラッと言った。つかみどころのない男だが、いま、とにかく強い。6月末の日本選手権(福岡)では110mHで日本新記録を狙う。走り幅跳びにもエントリーしているが、出場は未定だ。

そして7月にはイタリアのナポリでユニバーシアードに出る。「本当は1番を狙いたいんですけど、どんな選手がいるか分かんないので」。とりあえず3位以内を目標にするそうだ。

泉谷は自分自身を「身長175cm跳躍ハードラー」と称している。「身長がでかいと思われがちで、でも見た時に『思ったよりちっちゃい』と思われるのがいやで……。結構言われるんですよ」と苦笑い。伸び盛りの19歳は、おもしろい男だ。

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