陸上・駅伝

特集:第103回日本陸上競技選手権

4周弱のガチンコ勝負! 日本選手権男子1500mを制すのは誰か

関東インカレ1500m決勝のラスト100m、体と体がぶつかるほどの距離で競り合った館澤(右)と飯澤(撮影・北川直樹)

陸上の日本選手権が6月27日、福岡・博多の森陸上競技場で開幕します。国内最高峰の戦いが期待される4日間を前にして、4years.では注目選手や種目を紹介していきます。3回目は29日に予選、30日に決勝のある男子1500mです。

館澤の3連覇阻止を狙うスーパールーキー

男子1500mは東海大学の館澤亨次(4年、埼玉栄)に3連覇がかかる。館澤は4月にカタール・ドーハで開催されたアジア選手権で5位に入賞するなど、この種目の日本の第一人者と言える。そんな館澤が今シーズン1度も勝てていないのが、なんと東海大の後輩でルーキーの飯澤千翔(かずと、山梨学院)だ。

飯澤は入学してすぐ、4月6日の日本大学・東海大学対校戦の1500mで、3分45秒64の自己ベストをマークし、館澤に0秒35の差をつけて勝った。続く5月6日のゴールデンゲームズinのべおかで、飯澤はさらに自己ベストを更新。2位の館澤に2秒近い差をつける3分42秒07で優勝した。そして5月24日の関東インカレはスローペースで進み、ラストの200mでこの二人の激しいデッドヒートに。わずか0秒01の差で飯澤が優勝。館澤に3戦3勝となった。

東海大のスーパールーキー飯澤(501番)は、「館澤さん(499番)と練習できることでもっと伸びる」と話す(撮影・北川直樹)

飯澤は関東インカレのレース後、「ゴールデンゲームズで館澤さんに勝ったとき、今年はもう負けなしでいけるかもしれないと思って、それでここで勝てたんで、また自信になりました。日本選手権も全日本インカレも優勝したいです」と語った。

対する館澤は、課題があるとしたら? という問いに「全部っちゃ全部」と答えた。キャプテンとして、第一人者としてのプライドは砕け、全身に悔しさがにじんでいた。今シーズン4度目の対戦となる博多の森で、館澤は意地を見せられるだろうか。

「お前より速い」言い合う中大のライバル

現時点で学生で最も速い1500mのタイムを持っているのが、中央大学の舟津彰馬(4年、福岡大大濠)だ。2018年4月に3分38秒65と、当時日本歴代5位のタイムをマークした。今年4月21日の兵庫リレーカーニバルで優勝したあと、「走っている途中から勝つイメージが浮かんだ」と言い放った。

兵庫リレーカーニバルの男子1500m決勝、トップでゴールする舟津(撮影・藤井みさ)

そのときに大学ラストイヤーはタイムより順位、「今年は勝ちに対して貪欲(どんよく)になっていきたい」と、きっぱり言った。5月26日の関東インカレでは、ラスト200mまで東海大の二人と競り合ったが、3位に終わった。

舟津は、チームメイトの田母神一喜(4年、学法石川)と切磋琢磨(せっさたくま)している。田母神は館澤と同じく、1500mでアジア選手権代表に選ばれた。舟津によると、田母神とは「俺のほうが速い」「いや俺のほうが」と言い合える、よきライバルだという。

田母神はアジア選手権で7位に入ったあと、5月6日の木南記念の800mでペースメーカーを務め、5月19日のセイコーゴールデングランプリ大阪の800mでは8位。5月25、26日と関東インカレ800mに出場して2位だった。連戦の中で体調を崩してしまい、思うような練習ができなかったという。

関東インカレまでの連戦と体調不良で思うような練習を積めていなかったという田母神。写真はセイコーゴールデングランプリ大阪から(撮影・藤井みさ)

今年から長距離ブロックの主将を務め、チームをまとめる立場にもなり、自分の練習との兼ね合いが難しいということも言っていた。しかしそれらを言い訳にせず、チームも自分もいい方向に導いていこうという責任感が、言葉の端々から感じられた。

「日本記録チャレンジ」で結果を出したのは

関東インカレから1週間後の6月1日、日体大記録会の男子1500m最終組で「日本新記録チャレンジ」と銘打ち、日本トップクラスの面々が集結した。大学生は館澤、田母神、舟津のほか、館澤と切磋琢磨してきた東海大4年の木村理来(佐野日大)も走ったが、いずれもペースメーカーについていけなかった。トップでゴールしたのは富士通の松枝博輝(順天堂大)で、3分38秒12と日本歴代3位の好タイムだった。

6月1日の日体大記録会で、ただ一人ペースメーカーについていった松枝(撮影・北川直樹)

松枝はレース後に「日本選手権では1500と5000の2個とって、1500には区切りをつけたいです。そのあとはヨーロッパで5000に出て、13分22秒の世界選手権参加標準記録突破を狙いたいです」と、博多の森での2冠宣言をした。

松枝が一歩抜け出したかとも思われる男子1500m。大学生ランナーたちは、どこまで食らいついていけるか。まさに大会のキャッチフレーズの「ナンバーワンしかいらない」だ。トラックを3周と4分の3駆け抜ける間の意地と意地のぶつかり合いに注目だ。

in Additionあわせて読みたい