皇學館大・川瀬翔矢 「打倒関東」にかける思い、おひざ元の伊勢路で示す
第51回全日本大学駅伝対校選手権 東海地区選考会
6月16日@愛知・ウェーブスタジアム刈谷
1位 皇學館大 4時間10分48秒
2位 愛知工業大 4時間15分21秒
3位 岐阜協立大 4時間16分52秒
皇學館大学は6月16日の全日本大学駅伝東海地区選考会において、2位の愛知工業大学に4分33秒もの差をつけ、3年連続3回目の本大会出場を勝ちとった。全4組による10000mのタイムレースで、皇學館大は全組でトップを独占。中でも各校のエースがそろう4組目で力を見せつけたのは、川瀬翔矢(3年、近大高専)だった。
川瀬は「エースっていう意識はそんなにないです。自分は一選手として、みんなで決めた目標に向けて必死に取り組むだけです。自分にできることをしっかりやって、チームのために貢献しようと思ってやってます」と話した。全日本のゴール地点の伊勢神宮は大学キャンパスのおひざ元。地元で輝けるか。
「ラスト1周でザワつかせよう」
東海地区選考会は午後5時に開会式があり、最終組のころにはどっぷり日も暮れていた。グラウンドコンディションは気温20度、湿度56%。仲間の応援を受けながら、川瀬は主将の平野恵大(しげひろ、4年、智辯学園)とともにスタートした。トップに出たのは名古屋大の國司寛人(くにし、博士課程2年、富士)。川瀬には想定通りだった。その國司の後ろにぴったりつき、タイミングを見て前に出ようと考えていた。
「ギアを上げて突き放すとしたら、残り5周ぐらいがギリギリか」。そう考えた川瀬は、ラスト5周のタイミングで國司の前へ。國司は川瀬のスピードについていけず、差はどんどん広がった。ラスト1周でさらにギアを上げて、ゴール。平野もラスト300mで國司を抜き去り、川瀬に次ぐ2位。皇學館大が最終組のワンツーフィニッシュを飾った。川瀬はレースを振り返り、「ラスト5周のところで余裕があったんで、いこうかなって。キツかったんですけど、なんとか押しきれてよかったです。自分はスタート前からラスト1周でザワつかせようと決めてたんで、死ぬ気でいきました」と言いきった。
東海地区で5000m13分台の男
川瀬は1年生の時に5000mで13分54秒32をたたき出し、全国的にも注目を集めた。皇學館大が初めて挑んだ全日本大学駅伝では1区を任され、区間9位の快走でチームに勢いをもたらした。しかし2年目は苦汁をなめた。けがで練習を積めない状況で選考会に挑み、4組9位。31分40秒と、チームにとってブレーキになってしまった。迎えた本大会、川瀬は当日の朝にメンバーから外された。
昨シーズンを振り返り、川瀬は「ぼろぼろの状態で臨んだんで……。去年がどうだったからというのは特になくて、今年は今年で、いまの走りをしようと思って走ってきました」と語った。今春、両足に痛みが出てしまい、5月の東海インカレでは1500mで予選落ち。今回の選考会前も痛みで練習ができず、あきらめようとも考えていた。しかし仲間がみな、この選考会に向けて心を一つにしている中、自分だけがあきらめるわけにはいかないと奮起。「何が何でもやるよ! 」と仲間に言って覚悟を決めた。
東海インカレから約1カ月。次第に足の痛みもひき、違和感も収まってきた。チームに貢献したいという思いで選考会を走り、全体のトップとなるタイムでフィニッシュ。両手を挙げてガッツポーズでゴールした川瀬を、日比勝俊監督は満面の笑みで称えた。
同じ三重出身の東海大・塩澤を意識
川瀬は高校時代、関東の大学からも声をかけられていたが、地元に残る決断をした。「関東に行こうという気持ちも少しはあったんですけど、僕は地元を盛り上げたい、日比さんの元でやりたい、という気持ちがあって皇學館を選びました。自分がここで頑張ることで、地方で頑張ってるほかの選手を励ませたらいいなと思ってます」と川瀬。
意識している選手を尋ねると、東海大3年の塩澤稀夕(きせき、3年、伊賀白鳳)の名を挙げた。塩澤は同じ三重県出身で、高校時代からインターハイや国体で入賞を果たすようなトップ選手だった。「自分自身ずっと高校時代から追いかけてて、大学になってやっと少し勝負できるポジションになってきました」。大学は離れたが、また全国という舞台で相まみえるのを楽しみにしている。
今年の全日本大学駅伝は川瀬にとってリベンジの舞台となる。「(1年生で走った)1区にこだわりはないです。任せられたところを走ります」と言う一方で、「目指すは区間賞」という思いを口にした。そんな川瀬について主将の平野は「本当にすごい選手で、関東の一流の選手とも互角に戦える可能性がある。練習のときはライバルですけど、本当に心強いチームメイトです」と評価している。
皇學館大は過去2回出た全日本大学駅伝で17位と18位。「打倒関東」を掲げ、3度目の伊勢路に挑む。