野球

伊藤裕季也の背中を追って3本塁打、立正大の佐々木勝哉「我が世の秋」

亜細亜大の1回戦で先制ツーランを放ち、叫ぶ佐々木(すべて撮影・佐伯航平)

東都大学野球秋季リーグ戦第3週、立正大-亜細亜大のカードは、立正大が9月24日の1回戦が6-3、25日の2回戦が7-3と連勝し、この秋初の勝ち点を手にした。1回戦は同点の9回に2番奈良間大己(1年、常葉大菊川)が劇的なサヨナラスリーラン。2回戦は先制し、5回に追いつかれたが、6回に2点を勝ち越し、8回には鮮やかなツーランスクイズを決めて突き放した。4番ファーストの佐々木勝哉(4年、日大三)は1回戦では1回に先制ツーラン。2回戦では3回にソロと2連発。絶好調だ。

この春まで通算本塁打ゼロ、秋すでに3本!

「打った瞬間、いったと思いました」

佐々木は2回戦の試合後、貴重な追加点となる3号ソロホームランの感触を話してくれた。2点リードの3回1死ランナーなし。亜細亜大の先発・松本健吾(2年、東海大菅生)の135kmのストレートを芯でとらえた。打球は弾丸ライナーでレフトスタンドに飛び込んだ。

打率はリーグ2位につけている

身長185cm、体重85kgの恵まれた体格を生かした長打力が佐々木の魅力だ。しかし大学入学以来、この春までリーグ戦でのホームランはゼロ。それがこの秋、第1週の東洋大3回戦で待望の第1号ホームランを放ったところから好調を維持。3カード7試合を終えた時点で22打数9安打5打点、ホームランも3本。打率は4割9厘でリーグ2位につけている。

実はこの秋、佐々木はもう1本スタンドに放り込んでいる。第1週の東洋大2回戦、4回にスリーランを放ったのだ。ところが5回表を終えたところで雷雨によりノーゲームに。幻のリーグ戦第1号ホームランとなってしまった。「ホームランボールをもらったんですけど、これは正直……」と苦笑いしていた。

日大三高から立正大に進んだ佐々木は3年生の春からレギュラーをつかんだ。その秋にはリーグ戦優勝を果たし、続く明治神宮大会では3試合で9打数4安打5打点と活躍し、大学日本一に貢献した。

春は考えすぎて打撃不振に

最終学年になり、リーグ連覇を目指して臨んだ春は苦しいシーズンとなった。開幕から4番に座ったが、バッティングの調子が上がらず、チームも5連敗。中盤戦からは下位を打つようになり、スタメンを外れることも。11試合に出場し、打率は規定打席数到達者36人中最下位の1割2分8厘。立正大は最終週の駒澤大戦で勝ち点を取り、入れ替え戦だけは免れたが、5位に終わった。

春の不振について、佐々木はこう振り返る。
「打てなくて、考えて、考えて、さらに落ち込んでしまいました。でもこの秋はもう最後なので、楽しんでやろうという気持ちでやってます」

坂田監督からも、この春からの成長を認められている

坂田精二郎監督はこう見ている。「佐々木は春のリーグ戦で経験を積んだ分、考えて頭を使って野球をやれるようになった。前は『自分が、自分が』というところが強かったんですが、それがなくなったのがいい結果につながっていると思います」

この秋、立正大は第1週、第2週と連続で勝ち点を落とした。第2週に國學院大に連敗したあと、坂田監督は「次の亜細亜戦で勝ち点を落としたら、4年生をメンバーから外して3年生以下で戦う」と、4年生に奮起を促した。
「監督からそう言われて、4年生でミーティングをしたりして、もう一度足元を見つめ直しました。1年生のやる仕事を4年生が引き受けたり、4年生だけで自主練習をしたり。なんとか後輩たちに来年も1部で戦ってもらいたいと言い合いながらやってきました」。佐々木は國學院大戦後の数日間をこう振り返る。

この第3週、主将の根本郁也(桐光学園)が2試合で2本のツーベース、米田虎太郎(帝京大可児)が2回戦でソロを放つなど、4年生の奮起が勝ち点ゲットにつながった。

変則日程のため、次のカードの中央大戦までは3週間近くあいてしまう。現在、中央大、國學院大の2校が勝ち点2を取っている。昨秋は勝ち点3で立正大、駒澤大、東洋大の3校が並び、勝率でも並んだ駒澤大との優勝決定戦に勝って立正大がリーグ優勝を決めた。もちろん中央大、國學院大の状況次第だが、立正大も残り2カード続けて勝ち点を奪えば、優勝の可能性が残るかもしれない。

社会人からのプロ入りを狙う

佐々木にとっての理想の選手を尋ねてみた。「ここぞというところで打ってくれるクラッチヒッター、裕希也さんです」。日大三高から立正大と1学年先輩だった伊藤裕季也(ゆきや)内野手だ。昨秋のドラフト2位で横浜DeNAベイスターズへ進んだ伊藤は、8月8日に公式戦デビューを果たし、打率2割5分5厘、7打点、4本塁打(9月25日現在)と、セ・リーグ2位でのクライマックスシリーズ進出を支えた。

あこがれの先輩の背中を追って、プロの世界を目指す

佐々木は大学卒業後、社会人野球の世界に進む予定だ。そして2年後のドラフトでプロ入りを果たし、尊敬する先輩と同じ舞台でプレーすることを目標にしている。

「裕季也さんも僕ら4年生のことを気にしてくれて、激励のLINEやメールを送ってくれるんです。これからの3週間、4年生中心にしっかり練習して、気を引き締めて残りのカードを戦いたいです。僕らはすぐ調子に乗っちゃうので(笑)。『自分が打ってチームを勝たせる』ぐらいの強い気持ちで臨みます!」

大学ラストシーズン終盤戦に向けての意気込みを、佐々木勝哉は笑顔で語った。

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