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連載:野球応援団長・笠川真一朗コラム

特集:第50回明治神宮野球大会

関大の坂之下晴人 バット短く、息長く 「守備職人」の2回生は全国でも堂々

野球応援団長・笠川真一朗コラム
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第50回明治神宮野球大会
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準々決勝の2回、驚くほど短くバットを持ちながら、見事に先制タイムリー!(すべて撮影・佐伯航平)
大阪商業大・伊原陵人 初の全国の舞台で立派に投げ込んだ1年生左腕

秋の日本一を決める明治神宮大会で熱戦が繰り広げられています。野球応援団長の笠川真一朗さんが、気になった選手について独自の視点からつづります。第4日の準々決勝で笠川さんが注目したのは、関西大学の守備の上手な2回生でした。

バットを短く持って食らいつき、守備は堅実

11月18日の大学の部第1試合、初戦を勝ち抜いた金沢学院大と関西5連盟第1代表の関西大の試合がありました。5ー0で関大の勝利でした。そこで僕が注目したのは、関大の8番セカンド、坂之下晴人君(さかのした・はると、2年、大阪桐蔭)です。試合前のノックから華麗なグラブさばきをしていて気になってました。彼が守備がうまいというのは関係者の方から聞いてはいましたが、実際にこの目で見ると、やっぱりすごいなと感じました。

試合が始まって右打席に立つと、バットを極端に短く持ち、追い込まれてもしっかりとボールを見極めて食らいつく。この試合では2回の第1打席に、先制点となる一、二塁間を破るタイムリーを放つ活躍でした。第2打席では追い込まれてから四球を選び、第3打席はチャンスでファーストストライクを思い切って打ってセカンドゴロ、最終打席ではまたも四球を選びました。どの打席にもしっかりと内容があり、下位打線を担う者としての役割をしっかりと果たしていたように感じられました。

安心して見ていられる守備。「守備職人」と言われるだけあります

守りでは飛んできた四つのゴロをしっかりとさばきました。とくに8回が見事でした。一、二塁間に難しいゴロが飛び、これが抜ければ失点というピンチの場面でしたが、横っ飛びでしっかりとキャッチして一塁へ送球。「守備職人」と呼ばれる通り、見事な守備力を全国の舞台でも見せてくれました。そして周りの選手への声かけや雰囲気はどう見ても2年生の選手とは思えませんでした。

身長171cmと上背はそんなにありませんが、ガッチリとした体格。簡単にアウトにはならない円熟味のある渋い打撃。しっかりとした安定感の中にもキラッと光るものがあり、安心して見ていられる守備。そして常に落ち着いて堂々としている姿は、まるで社会人野球の選手を見ているようでした。大人の野球ができる賢さ、そして泥臭さもあって、かつベンチでもグラウンドでも大きな声を出している姿をみて、チームの勝利のためにプレーできる素晴らしい選手だと思いました。こんなに褒めちぎってしまうのはどうなのか、とも思いますが、そのくらい僕のツボにビタッとハマる選手でした(笑)。僕と同じように感じている方も大勢いらっしゃると、自信を持って思います!

「堂々とプレーする」ことが好結果につながる

試合後に話を聞いてきました。
試合中、堂々としているように見えたので、その辺りの気持ちについて聞きました。「今年の春、リーグ戦で試合に出てたんですけど、自信を持ってプレーできてませんでした。でも夏以降、打率がよかったのもありますが、堂々とプレーした方がいい結果が出ているので、自信を持ってプレーするようにしてます」。春の経験を生かしたうえで、堂々とグラウンドに立っていると教えてくれました。

勝利のハイタッチ。素直な気持ちがあふれます(右が坂之下)

バットを極端に短く持つスタイルに関しては「春のシーズン前に山口コーチ(山口高志・アドバイザリースタッフ)に教えていただいて、やってみました。パワーがない分、バットを短く持ってゴロやライナーをコンパクトに逆方向に打つイメージです。ただ基本的に練習では逆方向を意識してますが、進塁打を打つことが目的ではありません。その意識が自分に合ってると思ってやり始めたら、徐々に慣れてきて、いい結果が出るようになりました」と話してくれました。

「高校のときは打球を飛ばそうという思いがありましたけど、試合で活躍することを考えたら、いまのスタイルがいいと思いました」。山口コーチの教えを信じて、あきらめずに取り組んだと、坂之下君は言います。指導してくれている山口コーチに、すごく感謝していました。

できることを考え、活路を見出す

自分のできることをしっかり考えて活路を見出すことは、野球選手にとって長く競技を続けるためにはとても重要なことです。自分のやりたいことと、自分にやれることは違ったりもします。その中でコーチの指導にしっかりと耳を傾け、実践して成功すれば、それは取り組んだ自分の成果です。坂之下君にとって、すごくいい経験になっていると思います。

アピールポイントの守りに関して意識していることを聞いてみました。「バッターのインパクトの瞬間に集中してます。左足でインパクトの瞬間に合わせます。中学時代にサードを守ってたときに、速い打球に反応できるようにと教わりました。それからずっとやってます」。昔から継続して続けていることが今もしっかりと身についているそうです。

坂之下君は一般的なセカンドのイメージよりは、かなりガッチリしているように見えます。「体重は増えました。高校時代は寮だったのですが、いまは実家から通ってるので、しっかりご飯が食べられます(笑)。それでも変わらず自分の思う通りに動けてますので」。はにかみながら語ってくれた様子は、大学生らしくて可愛らしかったです(笑)。

ガッチリした体型も、落ち着きを見せている一因かも?

慣れない神宮球場での守備に対応するために、関大のグラウンドでも外野の人工芝の上でノックを受けるてきたそうです。そして初戦となったこの試合前のシートノックのときに、人工芝の長さや埋められているチップの量の差などによる打球の違いを感じたそうです。シートノックの間に感覚をつかみ「試合には堂々と臨めました」と話してくれました。そしてみんなでつかんだ無失点勝利。2回生ながら「森さんが必死に投げてました。無失点で勝つためにバックは守るしかない」と力強く語った姿は、とてもたくましかったです。

長く野球を続けそうな雰囲気を感じる選手

最後に、これからどんな選手になりたいか尋ねてみました。「守備はできて当然、と思えるぐらいになりたいです。打撃では勝負どころで打てるように。試合の中でしっかりと仕事ができる選手になりたいです」と語ってくれました。

高校時代から下位打線で打ってきた経験もあり、自分の役割やできることをしっかりと理解して、日々練習に励んでいるのだと思います。チームに貢献しようとする気持ちがとても強い選手だと感じました。次の戦いに向けてということも聞いたときには「どんな形でもいいから勝てるようにプレーします」と話してくれました。

坂之下くんのプレーに対して「社会人野球の選手みたい」と書きましたが、これは僕の中では最大級の賛辞です。坂之下君のプレーを見ていると、長く野球を続けそうな雰囲気を強く感じるのです。

大学野球を見ていると、そう感じる選手がたまにいます。持論ですが、そのような選手に共通しているのは「走攻守に渡って一つひとつの仕草や動き、そしてプレーに『チームのために』という思いが見える」と感じるところです。

坂之下君に取材後に「社会人野球の選手見てるみたいやったわ」とボソッと伝えると、「社会人野球、やりたいですね〜!」と返してきました。

まだ2回生。これからの彼にも期待したいですね!

プロ野球の世界が選手にとってはもちろんベストだとは思いますが、それは本人次第なので他人が決めることではありません。どちらにせよ坂之下君が長く野球ができる選手でいてほしいと、心から思います。

まだ2回生。これから自分自身と向き合い、チームと向き合い、さまざまな経験をすることで気持ちの変化も、求められることの変化もあると思います。子どもから大人になっていく大学野球ならではの過程の中で、さらに魅力のある素晴らしい選手になっていくことを願っています。

そして関大は明日の決勝戦で慶應義塾大学と対戦します。
慶應には高校時代、坂之下君と苦楽をともにした福井章吾君(2年、大阪桐蔭)もメンバーに入っています。「戦うのが楽しみです!」と、かつての仲間との対戦を想像して微笑みました。

九州産業大・柳内一輝 チームを支え続けた前キャプテンのラストゲーム

明日の決勝戦、どちらが勝つのか。僕も楽しみに観戦します!

野球応援団長・笠川真一朗コラム

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