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特集:第11回ラクロス全日本大学選手権

東北大が初の全学決勝へ 点取り屋・小山大輔が描く全国制覇への道

第11回ラクロス全日本大学選手権
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関西学院大との準決勝で小山(45番)は両校最多の4得点をあげた(すべて撮影・松永早弥香)

ラクロス第11回全日本大学選手権 男子準決勝

11月24日@大阪・ヤンマーフィールド長居
東北大(2地区予選勝者) 7-5 関西学院大(関西地区1位)

11回目となる今大会、男子ラクロスの歴史が変わった。過去10回の男子全学決勝はすべて関東vs関西だった。その2強体勢の中、東北代表の東北大が関西代表の関西学院大を7-5で破り、12月1日、関東代表の早稲田大との決勝に挑む。

北海道大、同志社に大差で敗れ準決勝敗退 それでも選手たちは笑顔だった

勝負どころで決めきった

東北大は2014年の6回大会から全学に連続で出場し、この3年はすべて準決勝敗退。先輩たちが流してきた悔し涙が、いまの選手たちの胸にしっかり刻まれていた。そんな中、チームが立てたスローガンが「尽」だ。自分の力を出し尽くし、チームのために尽くす。東北リーグを全勝し、徳島大との2地区予選、北海道大との1回戦を勝ち抜き、大阪で開催された関西学院大との準決勝に臨んだ。

最初のフェイスオフを関学がとるもすぐに東北大がボールを奪い、シュートを狙う。これを関学G(ゴーリー)が好セーブし、すぐに反撃。両者がスピーディーな展開を見せる中、開始5分、東北大の長尾壮一郎(4年、山手学院)が左からワンバウンドさせながらのシュートを決めて先制点。さらに開始10分、小山大輔(2年、仙台第三)のミドルシュートで2点目。第1クオーター(Q)を東北大リードで終えた。

第2Q早々、関学の中澤裕哉(4年、三田祥雲館)に絶妙なパスが通り、2-1。一気に同点を狙うも、東北大G(ゴーリー)の田村怜於(4年、東京学芸大附属)がことごとく阻み、さらに小山がするどいランニングシュートを決めて3-1と突き放す。しかし関学は終了間際、勝浦友貴(3年、北須磨)が倒れ込みながらシュートを決め、3-2で試合を折り返した。

東北大G田村(5番)が好セーブを連発した

関学は最初のフェイスオフをとるも、開始4分、東北大の小山がフェイクで一人かわしてからのシュートで4-2。関学も負けられない。残り4分、ランニングシュートを決め、4-3と1点差に迫った。勝負は最終Qへ。

関学は開始3分、G田村との1対1のシーンで決めきり、4-4。この試合で東北大は初めてリードを失った。しかし今シーズンを振り返ると、リードした状況から追いつかれる展開が多かったこともあり、東北大の選手たちは自分たちのプレーに集中した。開始5分には日野康平(4年、市立浦和)が、さらに開始8分には高嶋佑輔(4年、水戸第一)が決めて6-4。関学に1得点を許すも、最後は小山がこの試合4点目となるシュートを決めて7-5。関学ベンチからは「まだ終わってないよ! 」と声が飛び、関学の選手たちも最後の最後まで攻め続けたが、7-5のまま試合終了のホイッスルが鳴った。

初めて準決勝を勝ち抜き、東北大は仲間たちと喜びを爆発させた

東北大の選手たちは歓喜の涙を流しながら、スタンドへの挨拶に向かった。主将の浅野勇磨(4年、東葛飾)は大きな声で「今日は大阪まで応援に来てくださりありがとうございました」と言うも、あふれ出てくる涙で言葉が続かない。「僕たちは先輩にラクロスを教えてもらって、先輩と一緒にラクロスがうまくなってきました。僕たちの年で決勝に進めたのは僕たちがすごいんじゃなくて、これまでの先輩たちのおかげであり、今日この大阪まで応援に駆けつけてくださったみなさんのおかげでもあります。ありきたりな言葉かもしれませんけど、これはみんなの勝利だなって思ったんです」とそのときの心境を口にした。

その浅野の横で何度も何度も涙をぬぐっていたのが小山だった。「事前の準備の段階で、自分が勝負どころとなることが多くて、自分次第でこの試合は決まるなと僕の中では思ってたんです。だから決められて安心したというのが一番大きくて……」。2年生の小山は今シーズンに初めてスタメンを勝ちとった。弓削多春貴ヘッドコーチ(院2年、浦和)はそんな小山を「自分たちもびっくりするぐらい化けてくれて、東北大のこれからの発展もそうですけど、ゆくゆくは日本代表とかも目指して頑張ってほしいです」と期待を寄せている。

ラクロスに熱中「やった分だけ出し抜ける」

宮城県出身の小山にとって地元にある名門の東北大は、中学生のときから目標にしていた場所だった。それでも勉強だけではなく、野球もやりきりたいという思いから仙台第三高校に進んだ。

小山は小2のときに兄にならって野球を始め、高校までは野球一筋だった。もともとはピッチャーだったが、ピッチングがうまくいかなくなり、メンバーからも外れてしまった。このままではと悩み、高2の夏に外野手へコンバート。ゼロから始める苦しさもあったが、高3夏の宮城県大会ではベスト4まで進んだ。そんな高校時代を振り返り、小山は「最終的にはうれしい気持ちで終われましたけど、苦しいとか悔しいという思いも強かったです」と言う。

野球に情熱を燃やしながら勉学にも励み、現役で東北大に合格。当初は大学でも野球を続ける予定だった。そんな小山を最初にラクロスへ誘ってくれたのが、いまの主将である浅野だ。「ラクロスってどんなスポーツなんだろう」と思いながら先輩たちのプレーを見ていたところ、「見てるだけじゃなくて体験してみたら? 」と声をかけてもらえ、シュート練習に参加。素直に楽しく、気持ちがラクロスに傾いた。

角度をつけたアンダーシュートは、日々練習をしてきた小山(45番)の武器だ

小山にとっては「日本一を目指せる」の言葉にも魅力を感じた。ラクロスはほかの競技に比べ、大学から始める人が多いスポーツだ。その分、やった分だけ伸びるという意識が小山にあった。「高校野球なんかでも、東北が日本一になるなんてなかなかないじゃないですか。だから僕の中で日本一って言葉を身近に感じることはありませんでした。でも『ラクロスなら日本一を目指せる』と言われたとき、すごいことだなって思ったんです」。入部してからは自主練にも取り組んだ。「やった分だけ成果が出る。だったらやってやろう、出し抜いてやろう」と考え、先輩たちのプレーを見て学びながら少しずつ自分の力にしていった。

チームのために日本代表になりたい

初めてのシーズンが終わり、今年1月に新チームへ移行するタイミングで同じ東北大のDF佐野清(現3年、駒場)と対戦した際、小山は自分のプレーが通用しないことに悩んだ。その佐野は今年6月に韓国で開催されたASPAC(APLUアジアパシフィック選手権大会)の日本男子チームに選ばれ、6連覇に大きく貢献した。そんな選手と対戦する中で、日本一を目指して理想としているプレーといまの自分のプレーのギャップを感じたが、それもまた、小山のモチベーションになった。

東北リーグが開幕してから、小山はスタメンとして出場。試合を重ねる中で徐々に得点をあげられるようになり、関学との全学準決勝では4得点と爆発的な活躍を見せた。浅野が「ラクロスに対する姿勢も含め、僕たち上級生から見てもすごいなと思うことがあります。だから(小山を)ずっと下級生とは思わずに接してきました。これぐらいの結果を出して当然という思いです」と笑顔で語るほど、上級生からの信頼も厚い。

「自分次第でこの試合は決まる」と責任を感じていた小山(45番)は試合後、うれしさと安堵から号泣した

準決勝でMVPに選ばれた小山に対し、東北大のメンバーたちは「日本代表」とコール。そんな声に小山は照れくさそうに笑って返していた。「(佐野)清さんが(ASPACの)日本代表に選ばれたこともあって、清さん発信でみんなそんなことを言ってくるんです」と小山。小山自身もいつか日本代表になれたらという思いはある。だがいまは「チームのために」という思いの方が大きい。

「清さんのおかげでチームのディフェンスのレベルが上がりました。オフェンスに関してももちろんチームにもって帰ってくれて還元してくれたところはあるんですけど、プレーする人がいないと説得力がないかなと思うんです。だから自分も日本代表になってプレーして、それをチームにもって帰ってこられれば、東北大はもっと発展できるんじゃないかな。自分が日本代表になりたいというよりは、チームを上げるという意味で目指さないといけないのかなって思ってます」

東北大は佐野たちが4年生になる来年、全国制覇を目標にしている。だが今年、その夢に届く切符をチームは手にしている。そんな大一番を前にして浅野は「初めての決勝という大舞台を楽しんで東北大の名に恥じない試合をしたいし、最後まで尽くせる試合をしたいです」と意気込む。

12月1日は東北大にとって最大の挑戦の日となる。

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