陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

関東学生連合、目標は箱根駅伝10位相当 東大・阿部飛雄馬も「爪痕を残したい」

目標を達成するため、選手自身が選考方法の見直しから始めた(撮影・松永早弥香)

箱根駅伝にオープン参加する関東学生連合は今大会、「10位(相当)以内」を目標に掲げている。そこで学連チームは、近年では通例になっていた選考レースではなく、他の出場校20校と同様、指導者らが中心になって練習の流れや体調を見極めてメンバーを選ぶ方針をとった。学連チームの監督を担う麗澤大の山川達也監督は「選手たちに聞いてみたら『本番に目標を達成するにはこういう調整方法の方がいいんじゃないか』という意見があったんです。彼らがそう決めたのであれば、私は学生のために頑張るだけです」と話した。

選手も指導陣も、チーム全体の力が問われる

学連チームの指導陣は通常、箱根駅伝予選会の結果で打診される。今大会の監督は予選会で11位だった麗澤大の山川監督、コーチは同12位だった駿河台大の徳本一善監督と同13位だった上武大の近藤重勝監督に声がかかった。山川監督は前回に続いて2回目の監督だ。正直なところ予選会が終わってからすぐは、学連チームの監督をすることに乗り気ではなかったと振り返る。「今年こそは麗澤大で箱根にいくんだって思ってやってきましたから。でもギリギリまで悩んだ結果、『これもいい経験になる。学生のために頑張ろう』と思って決断しました」と言い、全力で学連チームを支えている。

選考レースで選手を選ぶという従来のやり方は、選手自身はもちろん、その選手が所属する大学の指導者にとっても分かりやすい選考方法ではあった。しかし最後まで選手一人ひとりを見極めて選ぶとなると、常に選手の側で指導しているわけではない学連チームにとっては難しさがある。山川監督は「学連で実施する合同練習はもちろんですけど、記録会を見て回るほか、各大学の指導者の情報を大事にしていきたい」と話す。

山川監督は各大学の監督ともコミュニケーションをとりながら、16校の選手たち一人ひとりの調子や適性を見極める(撮影・松永早弥香)

「コーチとしても選手の走りや性格的な適性を見極めるスキルが必要。そうした意味でも、指導者として自分が成長する糧になると思う」。そう話していたのが徳本コーチだ。徳本コーチは過去に箱根駅伝の解説を任されたことがあるが、箱根駅伝の現場に帰ってくるのは、法政大の選手として走った2002年の第78回大会以来となる。「こういう舞台に立たせていただけるわけですから、結果にこだわってコーチをしたい。そこだけです。選手が10番以内と言ったので、それを目指す」と言いきる。

東大・阿部、近藤先輩から無言のアドバイス

学連メンバー16人は予選会の結果から、本戦出場校以外の各校から一人、過去に本戦出場の経験がない選手から選ばれる。メンバーにはこれまで33年連続で箱根駅伝を走ってきた山梨学院大の渡辺晶紀(2年、藤枝明誠)や、創部2年目で今年初めて予選会に挑んだ育英大の外山結(とやま、2年、前橋育英)など、さまざまなバックグラウンドをもつ選手がそろった。その学連チームの主将を担うのが、東大の阿部飛雄馬(ひゅうま、4年、盛岡第一)だ。

前回大会では近藤秀一(東大~GMOアスリーツ)が東大生として05年の第81回大会の松本翔以来、14年ぶりに箱根路を駆けた。その近藤は18年の第94回大会で学連チームの主将を任せられていた(本戦はインフルエンザで欠場)。現在も近藤は、東大のグラウンドで練習をする日もある。しかし阿部の学連メンバー入り、そして主将抜擢(ばってき)に対して、とくにアドバイスがなかったという。「自分がやりたいようにやれ、というメッセージなのかなと受け止めてます」と阿部は言う。

阿部(中央)はこの1年、あこがれの箱根駅伝を目指して取り組み、予選会で結果を出した(撮影・北川直樹)

阿部は前回の予選会では、1時間6分20秒の記録で224位だった。そこからの1年間、自分の現在地と目指すところを見比べながら、継続して練習に取り組んできた。目標も短期と長期、二つの目標を掲げることで、トラックシーズン中も予選会を意識して練習を重ねられたという。その結果、今年の予選会では1時間5分11秒と前回よりも1分以上記録を更新し、順位も64位と大きく上げた。「自分が小さいころから箱根駅伝に関われたらいいなと思ってたんですけど、学連メンバーに入れたことだけでもまずは目標達成」という気持ちがある。

主将を任せられたことに当初は「実感がない」と口にしていた。しかしいまは「チームメイトと密にコミュニケーションをとりたい。組織という箱の中に押し込めるのは簡単だけど不健全です。一人ひとりの関係が大事。人と人をつなぎ合わせるのが自分の役割だと思ってます。任された以上は何かしら爪痕を残したい」と主将としての責任とやりがいを感じている。

学連チームの直近の3大会は、21位か20位相当という状況。過去を振り返ると、08年の84回大会で記録した前身の関東学連選抜の4位(当時は公式記録)が最高だ。「10位(相当)以内」という目標に向け、一人ひとりが最後の最後まで挑む。

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