大学アメフト

後輩たちの一発勝負、みんなで見ようや 関学・立命アメフト元主将対談(下) 

関西人らしく笑いを交えながら語り合った井若さん(左)と近江さん(対談写真は撮影・北川直樹)

関西学生アメリカンフットボールリーグ1部は10月10日か17日に開幕し、8校によるトーナメント戦で優勝を争う。2011年以降は関西学院大学と立命館大学の「2強」状態。16年に全日本大学選手権に関西から2校(19年からは3校)が出られるようになると、両校が甲子園ボウル出場をかけて4年連続して「2度目の関立戦」に臨み、すべて関学が勝ってきた。今年は選手権の開催が見送られ、関西の決勝で両校の対戦があれば、5年ぶりに一発勝負で甲子園ボウル出場校が決まる。17年度に両校の主将を務めた井若大知さん(いわか・だいち、24、箕面自由学園高~関学~富士通)と近江克仁さん(おうみ・よしひと、24、立命館宇治高~立命~IBM)が、両校のライバル関係や後輩への思いを語りあった対談の後編です。

決戦のフィールドで思わず笑い合った 関学・立命アメフト元主将対談(上)

いろんなことをライバルに教えてもらった

――4回生のときの1戦目は21-7で立命が勝ちましたが、2戦目は34-3で関学の完勝でした。リベンジされた近江さんは、どんなところに関学の強さを感じましたか?

近江克仁(以下、近江):単純に「気合入れたらこんなに強いんや」と思いました。「1戦目はやっぱり気合入ってなかったんやん」って、ちょっとイジけてました。
井若大知(以下、井若):1戦目の負けがなかったら、あそこまで強くなってないわ。立命がいて、立命に勝たなあかんから、関学って一人ひとりが強くなる。立命に勝つために春からずっとやってきて、やっと僅差(きんさ)で勝ったり、1戦目に負けて2戦目に勝ったりやったから。いろんなことを立命に教えてもらった。

2度目の立命戦でリベンジし、仲間と喜び合う井若さん(中央右、撮影・朝日新聞社)
関学にリベンジされた試合後、近江さん(14番)は「1年間応援ありがとうございました」と叫んだ(撮影・篠原大輔)

夏から本格的に関学対策、立命対策

近江:俺が高3のとき、NFLのRB(ランニングバック)コーチをやってた方が大学のコーチに入ってた。立命は春の段階から関学用のプレーを用意して、夏から精度を上げたり、夏合宿でも関学のビデオを見たりするけど、その人が「こんなに偏ったリーグは見たことがない。世界のどこを探してもない」って言ってたらしい。夏から本格的に特定のライバルに対して準備するなんて、聞いたことないって。
井若:やっぱり夏からやってたんや。
近江:そやで。
井若:一緒やな。
近江:秋のリーグ戦は試合の間隔が2週間やから、1週目は関学対策をやって、2週目は対戦相手への準備。関大や京大戦の前は、2週間まるまる使って準備してた。

好きだった「Whose House? Rits House!」

井若:京大といえば、4年の京大戦でのお前のタッチダウンやな。ファーストプレーで、(エースRB西村)七斗のジェットモーションを見せてからのロングパス。いまやから言えるけど「ばりカッコええやん」と思ってた。
近江:(笑)
井若:あの日はミーティングがあって、終わったあとにみんなでネット中継を見てた。七斗には入れんやろなと思いながら目で追って、もう次の瞬間には近江がパス捕ってて。タッチダウンしたあと、右手で左胸を2回たたくポーズがヤバかった。近江といい七斗といい、立命には華のある選手が多かったな。俺が留年してるときに出た大学世界選手権で七斗がファーストダウンとったとき、あのポーズをマネさせてもらった(笑)。関大の小川知輝だけ気づいてくれたわ。

近江:俺は就職したから出られへんかったけど、あの大会でみんなと一緒にやりたかった。大知がキャプテンで、立命が試合前のフィールドでやる「Whose House? Rits House!」の日本代表版をやったんやろ?
井若:実は、あれめっちゃ好きやってん。やったあとに関学のグループLINEが動いて「立命に魂を売った男」って書かれたけどな(笑)。近江の「Whose House」を毎回こっそりチェックしてて、最後に右腕を突き上げるときに、腕がブーンって震える。あれは癖やな。ほんまにカッコよかった。
近江:(笑)。4年でキャプテンになって、「もう、Whose Houseやめよ」って言うてん。ビッグゲームの前だけやるのって、何かおかしいから。まあ、結局はやったけどな。

立命のビッグゲーム前恒例の「Whose House ? Rits House !」。中央でかけ声をかける14番が近江さん(撮影・篠原大輔)

素手でつかんだ盟友からのロングパス

――近江さんの関学戦のビッグプレーといえば、3回生の西日本代表決定戦(関学26-17立命)で、試合終了間際にキャッチした54ydのロングパスを思い出します。

近江:あのプレーのこと、みんな言ってくれます。捕ったあと、負けてるのに「ファーストダウン」のポーズしましたね(笑)。中学からずっと一緒にやってきたQBの西山(雄斗)は僕にしか投げへんやろなと思ってたし、とにかく走り抜けようと。相手もいたけど走り続けました。西山は前に出ながら思いっきり放ってくれた。あのとき僕は素手やったんです。雨が降ってきたから、革ボール用のグローブからゴムボール用のグローブに替えたんですけど、それが同期のヤツからの借り物だったのを思い出して、返しました。
井若:試合中に返すんはヤバいやろ(笑)。
近江:俺は素手でやるからええわ、って。あのパスはカバー2のCB(コーナーバック)とSF(セーフティー)のゾーンのシーム(境目)を狙うプレーで、もうちょっと早めにやっててもよかったなあ。
井若:近江のキャッチもよかったけど、あの日は七斗のランも止まらんかった。DLの松本英一郎さんを引きずりながら走ってた。どうやったらあんな走りができるんやろ。

近江:結局、そのまま負けた。それで立命サイドのスタンドを見上げたときに、だいぶお客さんが減ってた。前半が0-20やったし、雨になったから途中で帰った人が結構いたはず。俺は全体のハドルのあとに同期の3年生を集めて「1戦目に負けて、今日のあの前半を見ても残ってくれた人たちのためにも、来年は恩返ししようぜ」って言うてん。それで「感謝と尊敬の心を持ち、大きく成長する」という意味を込めて「BIG UP」をスローガンにした。
井若:湘南乃風に「BIG UP」って曲があるけど、近江のことやから筋トレのときにこの曲かけてるんやろなと思ってた。
近江:知ってるけど筋トレでは流してないよ(笑)。

甲子園ボウルで負け、「ダイチー」の声に号泣

――近江さんは4回生のシーズンが終わったあと、甲子園ボウルは見に行ったんですか?

近江:行きました。ヒマなんで。
井若:日大に負けてしまって一通り取材を受けたあと、甲子園球場の内野席の柵にしがみついた立命のメンバーたちが「ダイチー」って呼んでくれた。あれでブワーっと涙が出ました。ただそのあとに言われたのが「何負けとんねん!」で……。
近江:(笑)。関学が勝ったら、すぐ帰ろうと思ってた。負けて悔しいやろなと思ったから、残ってしゃべろうと。仲のいいヤツがいっぱいいたから。
井若:めちゃくちゃうれしかったわ。関学サイドの観客席からヤジを飛ばす人もいて、それを聞いた後輩が泣いてて。「こいつらに申し訳ないな。何を残してあげられたんやろ」って考えてたときに呼んでくれて、もう号泣やった。
近江:二人ともシーズンが終わったから、久々にサシでメシ行ったな。「このタイミングで関学と立命のキャプテンでメシ行ったのは、歴代探してもおらんやろ」って話をした。
井若:仲はほんまによかったからな。

母校のコーチとして、NFLを目指す挑戦者として

――井若さんは昨年度限りで現役を退き、富士通で働きながら母校の箕面自由学園高校でアメフト部のコーチになりました。そして近江さんは大手損保会社をやめ、日本人初のNFL選手を目指して日々トレーニングを積んでいますね。

井若:NFL行けそうやろ?
近江:NFLの一流選手には絶対なられへんと思ってんねん。ただ三番手ぐらいの選手にはなれると思ってる。日本人がうまくならん理由の一つは、NFL選手が夢じゃないからやろ。大学生の目標は大学日本一で、そこ止まりの選手でいいと思っちゃうやん。自分をアメリカのカレッジの選手と比べたりせえへんし、NFLとかカレッジの試合見てる人も少ない。大知はいつ見だした?
井若:中学のときやな。ビッグベン(NFLピッツバーグ・スティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー)が一番好き。
近江:俺もスティーラーズ好きやった。いま英語力をつけるためにIBMのチームのアメリカ人とメキシコ人とシェアハウスしてるけど、アメフトに関して知ってる量がぜんぜん違う。二人の話に出てくる選手のこと聞いたら、「そんなことも知らんの?」ってめっちゃ言われる。

OL一筋の男も、最初はQBにあこがれた

近江:俺は小学校のときに「NFL選手になる」って決めた。でも成長していくにつれて「あれ? NFL遠すぎるんちゃう?」って感じた。NFLのすごさが分かってきた一方で、日本のレベルの低さも実感し始めたから。でも、小学校のときの気持ちのまま中学、高校、大学と過ごしてたら、もっといい選手になれたと思う。中学、高校時代は誰よりもNFLを見てた自信あるけど、それでも、もっとアメフトに触れてたらよかったと最近思うわ。
井若:俺はQBにあこがれてた。中学から入った千里ファイティングビーの最初の練習にQB用のショルダーとフェイスガードで行ったら、「OLな」って言われて……。夢破れた。
近江:そのときの体格は?
井若:160cmで80kg。
近江:(笑)

近江:大知は箕面自由のコーチになってどんな感じなん?
井若:最近は練習にも入ってるよ。6月やったかな、ある選手がオンラインで話したいっていうからやったら、泣きながら「コロナのことで秋の試合があるかどうかも分からなくて、モチベーションを持つのが難しいです」って。
近江:大知は何て言うたん?
井若:「それでもし試合があったら、後悔せえへんのか?」って。「それはします」って言うから、「後悔しない選択をするにはどうしたらいいか、というニュアンスで考えたらええ」って言うたな。
近江:俺もオンラインのリーダー交流会みたいなので、同じこと聞かれた。「もうポジティブになりきるしかないやろ」って答えた。「ロジカル・ポジティブシンキング」って言葉を考えついたわ。コロナの騒動が起きて、ロジカルにどう行動するか、やろ。神様は何のための時間を与えてくれたのかっていうのをポジティブに考えて、時間を有効活用して「人生めっちゃええやん」ってのを自分に思わせるのがいい。
井若:俺も高校生に言うたわ。「神様が与える試練で、乗り越えられへんものは絶対にない」って。試合がないかもしれんと思ってやってて、もしあったら後悔すると分かってたら答えは出てる。その中であがくべきや、と。

ランブロックでもパスプロテクションでも強さを誇った井若さん(左、撮影・篠原大輔)

後輩よ、ラストシーズンをやりきれ!

――今年の4回生は、お二人がキャプテンだったときに入学してきました。とくに期待する選手は誰ですか?

近江:僕は今年のキャプテンになったRB(ランニングバック)の立川(たつかわ、玄明、大阪産大附)ですね。入ってきたときに、「コイツはキャプテンになるな」と思いました。しっかりしてるし、信頼を置ける存在になるんやろなと思って。だから1年のアイツに対してリーダーとして扱ってました。「1年をまとめるのは、お前やから」と。1年のときは持ち味のパワフルなランで活躍しましたけど、2年、3年は迷いが見えました。立川が1年で出てきたとき、どの大学の人も「えげつないのが出てきた」と思ったはずなんです。初心に戻って、がむしゃらに1年のときのようなプレーをしてほしいと思います。
井若:副将でLB(ラインバッカー)の海﨑(かいざき、悠、追手門学院)と、QBの奥野(耕世、関西学院)です。僕が4年のときに立命の七斗の映像を見たとき、海﨑だけが「止まります」って言いました。「この子はリーダーになる」と思いました。奥野はいろんなことがあったから、いい思い出として大学4年間のアメフトを終わってほしいです。

――今年はトーナメント方式になって、関学と立命が対戦するとしたら決勝での一発勝負になりました。

近江:キャプテンの立川に電話しときます。「勝てるぞ」って(笑)。「関学は1戦目に弱い」っていうぐらいの気持ちで臨んでほしいですね。あと、もし直前にチームにコロナの感染者が出て試合ができなくなっても、その子を責めたり、その子がめちゃくちゃ落ち込んだりというのはやめてほしいです。
井若:やっぱり4年のときの1年はかわいいですよ。思いっきりやってほしいです。今年の4年は伝統的なファイターズの魂が宿ってる学年だと思います。だから強いと思ってます。戦力的には立命が上でしょうけど、今年の4年が覚悟を決めたら、どこにも負けないと思ってます。

2度目の関学戦でリベンジされ、チームメイトに語りかける近江さん(14番、撮影・篠原大輔)

――関学と立命が対戦することになったら、お二人は観戦するんですか?

近江:僕の一つ下の学年が2回目の関学戦で逆転のフィールドゴールを決められて負けたとき、IBMの練習が終わったあとで、ライブ中継をスクリーンに映して見てたんです。そしたら関学出身の同期のヤツが「ウオーッ」って大喜びして。めっちゃ腹が立ちました。一緒に見るのも面白いと思いますけど、ケンカになるんじゃないですかね。
井若:立命のお前らの代、集めとけよ。俺らの代も集めとくから。
近江:分かった。楽しみやな。

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