陸上・駅伝

特集:第89回日本学生陸上競技対校選手権大会

日大・橋岡優輝、インカレで今季世界最高の8m29「思い描くような跳躍に近づいた」

4回だけとなった今回の跳躍で、橋岡は4回目に8m29の大会新記録をマークした(すべて撮影・藤井みさ)

第89回日本学生陸上競技対校選手権大会

9月11日@新潟・デンカビッグスワンスタジアム 
男子走り幅跳び
1位 橋岡優輝(日本大4年) 8m29(向かい風0.6m)大会新記録
2位 外川天寿(国際武道大4年)7m88(無風)
3位 伊藤陸(近畿大工業高専5年) 7m75(追い風0.3m)

日本大学の橋岡優輝(4年、八王子)は最後のインカレの最後の跳躍で、走り幅跳び今季世界最高記録となる8m29(向かい風0.6m)の大会新をマーク。2年ぶり2度目の優勝を飾った。10月1~3日に同じ会場で行われる日本選手権に向けても、「8m32の自己記録更新、8m40の日本記録にもチャレンジできるよう、うまく準備段階が進んでいる」と手応えをつかんだ。

セイコーGGPで感じた課題、練習の中で理想の助走へ

今大会は新型コロナウイルス対策として、試技数を前半2回、最大でも4回と数を絞っての開催となった。1回目から8mを超えるイメージで臨むも、1回目の跳躍は7m92(追い風1.1m)。2回目はさらに記録を伸ばして8m06(追い風0.2m)、3回目はファウルとなり、試技はあと1回。会場の視線を一身に浴びながら、橋岡は「はっ」と声をあげて気持ちを引き締める。最後の跳躍では記録有効を意味する白旗が上がり、8mを超えているのは目に見えていた。記録は8m29。2017年に津波響樹(東洋大~大塚製薬)が記録した8m09を20cmも更新する大ジャンプに、橋岡もガッツポーズを決め、笑みを浮かべた。

「今日の跳躍は迷いなくいけました」。今シーズンの初戦となった8月のセイコーゴールデングランプリでは、1回目の跳躍で7m96をマークして優勝したものの、ついたスピードで腰が浮いて助走が乱れてしまい、「自分的にはちょっとしょっぱい内容で、少し改め直す必要がある」とコメントしていた。

セイコーゴールデングランプリで課題に残っていた助走に改善を加え、インカレに挑めた

それから約3週間、練習の中で試行錯誤を繰り返し、橋岡が理想とする「しっかりと地面の奥の方を捉えてうまく反発をもらう」助走へとかみ合ってきた。今回の跳躍では最後の4回目でイメージ通りの助走ができ、「やっと自分が思い描くような跳躍に近づいた」と実感できた。

前記録保持者の津波から「塗り替えてきてよ」

昨年8月の「Athlete Night Games in FUKUI」で、橋岡は8m32(追い風1.6m)を記録し、一時は日本記録保持者になった。当時の自己ベストを10cm伸ばし、27年ぶりに日本記録を塗り替えた跳躍だったが、橋岡自身は喜びに湧くではなく、首をかしげながらその記録を受け止めていた。「助走はすごくうまくいったけど、踏みきりで失敗してしまったので、流れが悪い中で出た記録だった。言葉はあれですが、『あんなんでいったんだ』という感じでした」。しかし今回は助走から踏切まで、スムーズな流れの中で出た記録ということもあり、さらなる記録への手応えがつかめた。

4年生の橋岡にとって、今大会は最後のインカレだった。「まずは大会新を目標にしていたので。そういったところでは、(津波)響樹さんから『大会記録を塗り替えてきてよ』と言われたことも、自分の中でよりやる気になり、この試合に向けていい状態を作り上げられた要因かなと思っています」。4本と限られた試技の中ではあったが、「でも4本でしっかりとまとめることはできたので。これをまた3本以内にまとめることができれば、より世界が近づく」とプラスに感じ取っている。

コロナ禍、両親も背負って鍛え

コロナの影響で、4~6月は助走練習や跳躍練習ができなかった。その間は人が少ない時間帯を選んで公園に行き、マーカーを置いてのドリル練習に取り組んだ。また、ウエイトトレーニングとして両親を交互に抱えてスクワットをすることで、最低限の筋肉を落とさないように工夫。 父の利行さんは棒高跳び、母の直美さん(旧姓城島)は100m障害(H)と三段跳びの元日本記録保持者だ。「母をおんぶとか肩車して、重さを変えるようにして父を。ふたりをおもり代わりにしていました」と独自のトレーニングを笑顔で明かした。

同じ会場で行われる日本選手権に向け、手応えを感じられる跳躍となった

この3週間後の10月1~3日には、同じデンカビッグスワンスタジアムで日本選手権が行われる。「(日本選手権前に)こういった場をもらえたことはありがたかったです。周りの選手もこの記録を見て闘志を燃やしてくると思うので、それに負けじと自分もより一層準備ができたらいいのかな。また違ったスタジアムの雰囲気になると思うので、その中で自分の跳躍ができるように準備をしていきます」

最後のインカレで見えた理想の跳躍。再現性を高め、日本記録保持者への返り咲きを狙う。

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