野球

神宮の杜に戻ってきた応援、東京六大学秋季リーグ開幕

神宮球場の右中間席に陣取った法政大学の応援(撮影・すべて朝日新聞社)

神宮球場に応援が戻ってきた。19日に開幕した東京六大学野球秋季リーグで各校応援団の参加が認められた。感染症対応ガイドラインにのっとり観客がいない外野席からなどいつもと違う風景だが、8月の春季リーグは不在だっただけに、選手も力をもらったようにはつらつとプレーした。

東京大学運動会応援部 どんな状況でも諦めず、前を向いて思いを届け続ける

外野から届け、選手は感謝

一塁側の大学は右中間席に、三塁側の学校は左中間席に応援エリアが設定された。指揮を執る部門は、団長に当たるリーダーだけマスクを外せる。チアリーダーもマスクを着用し、声は出さない。最も難しいとされた吹奏楽部も細心の注意を払って参加できる。開幕戦を制した法政大学の青木久典監督は「(普段より)距離はあるが(それを)感じなかった。素晴らしい。いつも以上にベンチまで届いた」と感謝した。先発した鈴木昭汰(4年、常総学院)は「マウンドで相手の応援は意識していないが、いつもより熱量を多く感じた」。

「応援の力は偉大と感じた」という早大の早川主将

第2試合、17奪三振の力投で完投勝ちした早稲田大の早川隆久主将(4年、木更津総合)は「応援があるだけで、打者は『ここで一本打たないと』と思うし、自分がピンチになったら『ここで抑えないといけない』という気持ちが全然違う。応援の力は偉大だなと感じた」と振り返った。

「本当にできるのか」

早川の話を伝え聞いた早大応援部の宮川隼(はやと)主将(東京六大学応援団連盟委員長)は「本当にありがたい」と感激した。新型コロナウイルスの影響で正式に応援できたのは、正月の箱根駅伝以来だった。「実際にできるのかどうか、始まるまで信じられなかった」
第1試合が終わった後、応援部門の入れ替えは感染対策を十分に考慮し実施された。そのため予想以上に時間がかかり、この日は試合前の校歌を歌えなかった。いつもはベンチの上からの応援だ。外野席から選手に見えるようにと選手名などを記した小型のボードを用意したが、どれだけ思いが伝わったかはわからない。

「紺碧の空」を歌う早稲田大学の応援

響いた伝統のエール

NHKで放送中の朝の連続テレビ小説「エール」。主人公のモデルは故・古関裕而氏で、5月に早稲田の応援歌「紺碧の空」にまつわる放送があった。「魂の歌ですから。皆さんに知ってもらえてうれしかった」。時期を合わせるように野球の早慶戦もあるはずだった。宮川主将は、例年になく盛り上がる応援合戦に向け気合を入れていたが、コロナ禍で幻に終わった。「紺碧の空」を歌い上げる機会がなかなか来なかった。誰のため、何のための応援か、迷いが出てもおかしくなかった。

この日、早大は1回、明大好投手の入江にあっさり2死まで抑えられたが、四球を足場に連続二塁打などで2点を先制した。魂の歌をいきなり披露することができたのは、選手からのプレゼントだったか。

歴史ある六大学のエールが、神宮の杜に帰ってきた。

 

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