陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

駒澤大・神戸駿介 主将としても競技者としても、チームに貢献するラストイヤーに

3大駅伝デビューとなった昨年の全日本大学駅伝3区は、苦しい走りになった(撮影・藤井みさ)

今シーズン、駒澤大の主将をつとめるのは神戸駿介(4年、都松が谷)だ。前例のない状況下でチームをまとめる思い、そして学生ラストイヤーの競技者としての思いを聞いてみた。

駒澤大・大八木監督 充実を見せるチーム力、全日本大学駅伝では「頂点を」

周囲の人の尽力で競技に集中できた

1月末に取材した際には、チームを引っ張る存在として「人生の中でいちばん頑張る一年に」という意気込みを語ってくれていた神戸。大変な状況になってしまいましたね、と聞くと、明るい声で返事をしてくれた。「すごい大変な状況になって、今までやったことのない流れで動いてきています。でもいろんな方々が動いてくれたおかげで、自分たちは競技に集中できました。他の人達が思うよりも、いい練習ができていると思います」

精神的につらい、と思うことはなかっただろうか。「それは全員がそうだったと思います。同じ状況なので、一人だけがつらいというわけではないので。でもストレスが溜まるところはあったと思いますが、みんなで助け合いながら乗り越えられました」。寮で集団生活をしていると、日々いろいろな問題が起こる。それに対しても一つひとつ平等に、悪いことは悪いと注意して解決するようにしてきた。キャプテンだからといって自分だけが頑張るのではなく、みんなに相談して助けを求めながら、つらい時期も乗り切ってきた。

駒澤大学は4月からオンライン授業だが、後期もオンライン授業と決まった。なかなか学校の施設を使えない中、大八木弘明監督が大学にかけあってくれ、グラウンドを使って練習できるようになった。夏も「強化練習」という名目で野尻湖、志賀高原、菅平でのトレーニングを行うことができた。「監督をはじめ、本当にいろんな人が動いてくれました」と神戸は周囲への感謝を何度も口にする。

周囲の人々への感謝を何度も口にした神戸(1月撮影・藤井みさ)

猛暑の東京を離れ、全体として充実した練習ができた夏。全日本インカレに出場した加藤淳(4年、西脇工)、田澤廉(2年、青森山田)、鈴木芽吹(1年、佐久長聖)、花尾恭輔(1年、鎮西学園)について聞いてみると「花尾は故障明けでしたが、あとの3人はしっかり調整できて結果も出したので、さすがだと思います。特に3人はレベルの高い練習もこなしていました」という。

同学年の加藤については、いままでも練習は強い選手だったというが、いいところでけがをしてしまうことが多かったと教えてくれた。「今年は年間通して練習がしっかりできてると思います。能力はめちゃめちゃ高いので、けがさえしなければもっといけると思います」と同級生の活躍にも期待する。

単独走を克服、練習もパーフェクトに

出雲駅伝の中止については「正直、(優勝を)狙えた大会だったなと思います」と残念に思ったことに触れながらも「だったらしっかり全日本に合わせていこう」とチーム全体が切り替えられているという。

神戸は昨年の全日本大学駅伝で3大駅伝デビュー。9月の記録会で13分台を出すなど好調だったが、全日本大学駅伝では3区区間16位、箱根駅伝は9区区間13位でいずれもチーム順位を落としてしまった。「大舞台で全然走れなくて、特に単独走が課題だと思いました」と自らを分析し、今年はいままで2人で走っていたジョグを1人で走るようにした。最上級生ということで、練習を引っ張る機会も増えた。「引っ張るのが苦手だったんですが、去年よりは先頭で走るイメージがつかめてきました」と手応えを語る。大八木監督も神戸について「練習をパーフェクトにできている」と評価する。

今年は昨シーズンの苦手だった単独走を克服し、さらにチームに貢献できる戦力になりたい(撮影・安本夏望)

個人としては今年、どこを走りたいというイメージはありますか? と聞くと「どの区間でも走れるようにイメージして、準備はしっかりしておきたい」という。「スピードはそんなにある方ではないので、しっかりつなぐ、粘りの走りをする、そういうところで自分はチームに貢献したいです」

スピードがない、と言いながらも、神戸は7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会5000mで13分55秒99のタイムをマークし、自己ベストを更新している。2月の青梅マラソンでも学生2位で走るなど、長い距離とスピード、両方に対応できる力は着実についてきている。

今年の駒澤のスローガンは、「原点と新化~覚悟をもって頂点へ~」。「全日本はしっかりとりたい」と語る主将は、実力でも生活面からもチームに貢献し、ラストイヤーの集大成をめざす。

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