陸上・駅伝

特集:第52回全日本大学駅伝

駒澤大・田澤廉 「駒澤のエース」の自覚を持って、チームを勝利に導く

9月の日本インカレ10000mで、ひとり留学生についていき強さを見せた田澤(撮影・藤井みさ)

昨年の全日本大学駅伝7区で区間賞。出雲駅伝3区2位、箱根駅伝3区3位とルーキーイヤーに鮮烈なデビューを飾った田澤廉(2年、青森山田)。今年もホクレンディスタンスチャレンジで5000mの自己ベストを更新、日本インカレ10000m日本人トップと好調を維持している。ここまでのシーズンの振り返りと、この先の目標について聞いた。

駒澤大・神戸駿介 主将としても競技者としても、チームに貢献するラストイヤーに

自粛期間中も工夫して練習に取り組む

4月の緊急事態宣言から大学に入れず、グラウンドが使えない状況の中でも「できる限り質の高い練習をしようと決めてやってきた」という田澤。設定タイムを通常より速くしたり、本数を増やしたりなど工夫しながらトレーニングを積んできた。6月にグラウンドが使えるようになり、ロングインターバルができるようになったことでスピードと持久力を補えるようになったと分析する。「いい感じで持っていけたかなと思います」

7月のホクレンディスタンスチャレンジ深川大会では自己ベストを更新した(フォート・キシモト/日本陸連提供 )

7月のホクレンディスタンスチャレンジ深川大会5000mで13分37秒28をマークし、自己ベストを更新。しかし「35秒切りを狙っていたので、2秒及ばなかった」という。「グラウンドとか感覚がつかめてない中でのレースだったので、『どんな感じかな』と思いながら走ったレースでした。そういう中ではいいレースだったのかな」と振り返る。

「留学生に勝ちたい」強い気持ちで走った全日本インカレ

夏は強化練習として、高地で2週間走り込みに取り組んだあと、全日本インカレのための調整練習に入った。その後迎えた全日本インカレの10000m。田澤は「留学生と戦う」をテーマにしてスタートラインに立った。ジェームズ・ブヌカ(駿河台大3年)、フィリップ・ムルワ(創価大2年)、レダマ・キサイサ(桜美林大4年)、イェゴン・ヴィンセント(東京国際大2年)の4人の留学生が先頭を形成すると、田澤もしっかりとそこについた。

「日本人の後ろにずっとついて、日本人一番を確実に狙う、という選択肢もなくはなかったです。でも自分は日本選手権で勝つことが目標としてあるので、ここで留学生にも勝てないと日本のトップランナーにも勝てない。勝負をするレースだと思って臨みました」

5000mをすぎて留学生とともに走ったのは田澤だけ。残り8周でブヌカ、ムルワ、キサイサの3人と、ヴィンセント、田澤の距離が若干開いた。残り7周のタイミングでヴィンセントが棄権すると、そこから田澤は一人旅になってしまった。結果は4位(日本人1位)で28分22秒48。「結果的には集団についていれば、3位にいけたのかもと思いました。少し休んでもう1回いこうと思っていたら、ヴィンセントがやめてしまって……最初からいけばよかったかな」と振り返る。

残り7周でヴィンセントがやめたのは想定外だった(撮影・藤井みさ)

7周を1人で走った田澤だが、前半5000mは14分01秒台、後半は14分20秒台だった。最初の入りはよかったが、一人になって落ちてしまったといい、「(全カレのために調整練習をしたこともあり)走り込み不足だなと。スピード、スタミナともにまだたりないので、これからあと1週分走り込みたいなと思います」という。

駅伝も日本選手権も勝ちにいく

昨年11月の八王子ロングディスタンスで、10000m28分13秒21位のU20日本歴代5位をマークし、日本選手権の標準記録(28分20秒)を突破した田澤。今年12月4日開催の日本選手権(長距離)10000mを本気で狙っている。昨年優勝した田村和希(住友電工)など、実業団のトップランナーに勝ちたいという気持ちがある。全日本大学駅伝、日本選手権、箱根駅伝と1カ月ごとにロード、トラックとなるが「1カ月あれば調整できると思います。じゅうぶんかなと」と気にする様子はない。

全日本大学駅伝では昨年区間賞でしたが、今年はどこを走りたいなどありますか? と聞いてみると「長い区間で勝負したい」という。「去年は区間賞でしたが、タイム的には全然だめでした(52分09秒)。7区でもいいし、8区を走ってもし負けてれば、トップまで持っていこうという気持ちです」。そして箱根駅伝では2区しか考えていない。「2区で勝てないと箱根でも勝てないと思うんで」

偉大な大先輩を追って、駒澤のエースとして走る

長い距離で勝負したい、というのは田澤が将来的にはマラソンで活躍できる選手になりたいという思いがあるからだ。目標とする選手は、駒澤大のOBであり今も大八木監督のもとで練習を積む中村匠吾(富士通)。今年2月には、アメリカ・アルバカーキで中村とともに合宿をし、さらに中村のすごさに触れた。「距離走がとにかく強いです! 後ろ姿からも余裕さが伝わってきて、力の差を感じました」

昨年の全日本では7区を走り、4人を抜いた。しかし「タイム的にはだめ」と満足していない(撮影・朝日新聞社)

また、生活面でも驚かされた。「匠吾さんは水しか飲まなくて、ジュースを飲んだりお菓子を食べているところを見たことがないです。自分はジュースも普通に飲んでいるし、(お菓子を)全然食べないときもありますけど、食べたいときは食べるんで……」。偉大な先輩が間近にいて、目標となる環境は田澤の刺激になっている。

2年生になって変わったことは、「駒澤のエースとしての自覚」を持つようになったことだという。「1年生のときは、がむしゃらに何の試合でも走りたいっていう気持ちでした。でも今年はエースとして、『自分が走らなければチームも走れない』という気持ちでいます。自分の結果がチームに直結すると考えて走りたいです」

確かな実力にエースとしての自覚。「常勝軍団」復活のために、田澤はチームの先頭に立つ。

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